夢逃人(ドリーマー)

夕暮G太郎

第31章 雨 と 夜明け

再び、眠りに落ちる瞬間と眠りから覚める瞬間を行き来している様な感覚だった。

身体がフワフワしていて自分の体温も感じない。


だけどとても悲しい気持ちだ。泣きたい。


次第に身体が冷たいと感じてくる。

苦しい。

目を開けたくない。



でも声がする。

誰かが自分の名前を呼んでいる。

自分の両腕を引っ張っている。


そうか、、ここは水の中だ。

息が出来ない。


目を覚さなければ。

生きなければ。




多摩川の水面からキョウジとタクトがマコトの腕を引っ張り出すと川岸まで上がって来た。

スミレ「マコトさん!!しっかり!!」

キョウジ「おい!!マコト!!目を開けろ!!」

タクト「マコトさん!!起きて!!!」


三人はマコトを岸に寝かせると必死に呼びかけた。

マコトの右太ももの出血が止まらない。


スミレ「マズいです!出血が酷い、、、。」


多摩川の河川敷には雨が降っていた。空はうっすらと明るくなっていた。

時刻は午前5時過ぎ。



マコト「、、、、くぅっ、、、ゴホっゴボっ、、、。」


キョウジ「マコト!大丈夫か?!」


マコトは目を覚ました。


マコト「あれ、、、ここは、、?現実リアルか、、?戻って来たのか、、?」

スミレ「そうです!!溺れかけていた私達を長谷部タクトが助けてくれました。」


マコト「、、、そうだったんだ、、、。」

タクト「、、、マコトさん、、、キョウジさん、、、本当にすみませんでした、、。」


タクトは頭を下げて謝罪した。




河川敷にサイレンを鳴らした救急車と黒い車が数台やって来た。

大原「鈴白!!皆さん!!無事ですか?!」


黒い車からは藤木と大原が降りて来た。


スミレ「大原さん!藤木先生!どうしてここが?」


大原「長谷部タクトから唐竹さんのスマホを使って連絡をもらっていたんだ。」

藤木「、、まさか、、ゲートも塞いだのですか?」


マコト「、、、あぁ、、、タクトから渡された、、石で、、じいちゃんが、、助けてくれたんだ、、じいちゃんは高橋の中に入った『災厄』を道連れに、、、ゲートを塞いでくれた、、。」

スミレ「、、おじいさんって、、、亡くなられたっていうマコトさんのおじいさんですか?」

マコト「、、、うん、、俺についてた記憶体ゴーストの変異種、、、じいちゃんだった、、。」

藤木「、、、なんと、、、記憶体ゴーストが人を助けた、、これはまた興味深い、、。」



救急隊がマコトを担架に乗せる。

救急隊員「出血の為、体温が大分低下していますが命に別状は無いと思います。誰か付き添いの方いませんか?」

スミレ「あ、、では私が!」

スミレも救急車に乗り込んだ。

スミレ「大原さん、、後の事はお願いします!!」

大原「わかった。」



救急車は病院へと向かって行った。


キョウジ「俺も、、、モエが心配なので、、、病院に向かいます。」

大原「そうですね。私の部下に送らせましょう!」

キョウジ「ありがとうございます。」



タクト「あの、、、キョウジさん、、、本当に、、、。」

キョウジ「、、もういい、、、もうわかったよ!!」


キョウジは謝罪を続けるタクトの肩に手を置くと大原の部下の車に乗り込んだ。


大原「長谷部タクト、、今回の一連の事件の重要参考人として連行します。」

タクト「、、、、はい。」


タクトも大原の部下の車に乗せられ、走り去って行った。



大原「、、、藤木先生、、今回は協力感謝致します。」

藤木「いえ、、、こちらも巫女としての役目を果たせました。礼を言うのはこちらですわ。それに、、、スミレさんの力も見れましたし、、まさか都庁からここまで身体ごと移動出来るなんて、、しかもキョウジさんの身体も一緒に移動してきたなんて、、、スミレさんの『夢枕』の力、、、素晴らしいですわ。」

大原「そうだったんですね。」

藤木「今回の一件はマコトさんとスミレさんに感謝しましょう。彼らが居なかったら大惨事になっていましたわ。」



空からは大粒の雨が降り続いた。





藤木が『雨乞い』の力によって降らせた雨は都内の夢逃人ドリーマーの鎮静化に繋がった。雨は一週間ほど続いた。

新宿での暴動は数日後には治まった。
540人ほどの負傷者は出たものの奇跡的に死者は出なかった。


新宿の暴動は世界的に報道され、改めてレムウィルスの脅威を世界に知らしめる事となった。
中町会長のチームは藤木の協力もあってレムウィルスのワクチン量産に成功し、世界中でワクチンの接種が始まっていた。


都内の記憶体ゴーストの大量発生も多摩川のゲートが閉じた事によって落ち着きを見せはじめた。





























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