夢逃人(ドリーマー)

夕暮G太郎

第15章 人柱 と 血界

タクトは学校にも行かずに、3ヶ月間毎日『高学歴中学生、般若チャンネル』をネットにアップしていた。
話す内容は過激だった。

この世界のあらゆる暗部に触れていた。
自殺、殺人、ドラッグ、社会問題、虐待、貧困、病気、戦争

タクトは般若の面を付けると、まるでヒーローにでもなったような気分になっていた。

タクト「こんな世界は僕らで失くしましょう!立ち上がるなら今です!」

カメラに向かって訴え続けた。

アカウントを凍結されても、動画を消されても、すぐに新しいアカウントを入手しては動画をSNSに上げていた。タクトはネットワーク作業に長けていた。

その動画は拡散された。消されても他の誰かが直ぐにアップする。
イタチごっこだ。


そのうちに『高学歴中学生、般若チャンネル』を崇拝する者まで出て来た。

中でも『下墓さん』なる人物は、般若チャンネルを拡散したり、コメントを頻繁に寄せていたり、タクトの動画拡散に貢献していた。


数日後、『下墓さん』からDMダイレクトメールが送られて来た。


下墓さん「はじめましてこんにちは。いつも拝見させて頂いております。般若様の考えに私もとても共感致します。今回はビジネスのお話をさせて頂きたくDM致しました。一度お会いしませんか?」


タクト「ビジネス?なんだこの人?、、なんかめんどくさいな、、、。適当に返しておくか、、。」

タクト「下墓さん、、いつも応援有り難うございます。折角のお誘いなのですが、僕はまだ中学生なのでビジネスの関係は考えておりませんし、お会いするのはちょっと抵抗があるので、今後も変わらずこのまま応援して頂けたらと思います。」


タクトはDMに返信をした。


タクト「動画が人気出るとこういう事もあるんだな、、。」


すると後ろに立っていた般若がいきなり口を開く。


般若「、、、その人も、、中々良い感じ、、だね。」

タクト「良い感じ?」

般若「うん、、、感情の渦に飲まれてる、、、。」

タクト「ふ〜ん、、、僕と同じで根暗って事か?」

般若「、、、わかんないけど、、この人も世界を壊したいって思ってるよきっと、、。」

タクト「へ〜〜類友か〜。」

般若「それよりさ、、、そろそろはじめようよ、、、。」

タクト「始めるって?何を?お前に言われた通り動画は毎日アップしていたけどまだ何か必要なの?」

般若「、、もちろん、、、感情の渦は結構出来たから、、そろそろ壊しに行かなくちゃ、、今度は大きい建物、、、。」

タクト「この前壊した『祠』みたいなやつか?確か、、、血界だっけ?」

般若「そうそう、、その建物のお陰で僕らは近づけない場所があるの、、、皆が今いろんな所で血界を壊してくれてるけど、、、すごく大きいから僕が直接壊さないといけない、、、。」

タクト「お前にそんな事出来るのか?」

般若「うん、、、僕は『半分あの世にいる人間』と重なると血界の元になってる『祠』を壊せるんだ。その威力が凄くてさ、、、それでその大きな建物壊そうと思ってる、、、。」

タクト「『半分あの世にいる人間』?」

般若「そう、、、妊婦さんとかかな、、。お腹の中の子供はまだ半分はあの世にいるから、、、。誰か知らない?」


タクト「、、、妊婦さんなら、、、知ってるけど、、、。」

タクトのスマホには『さいれんず』の動画が流れていた。

タクト「この人の奥さん、、今度子供産まれるって言ってた。」

般若「、、、ふーーーん、、、、じゃあ決定ーーー。」

タクト「いや、、、流石に止めよう!僕ファンなんだよ、、この人達の、、。」

般若「え〜〜いいよ、やろうよ!きっと楽しいよ〜!」

タクト「ダメだって、、、僕はそこまで出来ないよ、、。」

般若「なんで?、、、君はさ、、君の動画を観て幸せになった人がいると思う?あの動画を見て不安になったり死にたい〜ってなる人の方が多いと思わない?」

タクト「、、、なんだよ急に、、、それは、、。」

般若「この世界を 生きる 事が正義となるなら、、君の行為は悪なんじゃないの?ただ自分が不幸で、不安で、、それをどっかの誰かと共有したいだけなんでしょ?」

タクト「、、だってお前が面白いからやれって言ったんじゃないか、、、。」

般若「感情の渦を作りたかったから、、その点は良くやってくれたよ〜だからあと一息だよ〜!もうさ、君の手は真っ黒なの、悪なの、、だから妊婦さんを『人柱』にするの協力してよ〜」

タクト「そんな事出来ないよ!人を生贄にするんでしょ?殺すって事でしょ?絶対に無理だって!!」

タクトは叫んだ。
すると般若は するっ とタクトに近寄り、顔を近づける。
タクトの眼には般若の顔が映る。


般若「、、ウダウダ言ってんじゃねぇよ、、お前が偉いと思うなよ、、、もう戻れない所まで来てんだよ。言う事聞けよ。ヤレよ。このクソ人間ごときが。」

般若は強い口調でタクトに告げた。














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