夢逃人(ドリーマー)

夕暮G太郎

第2章 レムウィルス と ウサギ大臣  

高橋「大丈夫ですか?マコトさん?」

高橋はマコトに手を差し伸べる

マコト「すんません、、こんなとこ見せちゃって、、。」

高橋「いえ、、芸人の皆さんは大変ですものね。こういう場面は良く見てきました。きっとキョウジさんも明日になれば少しは落ち着きますよ。こんなご時世ですし、皆イライラしてますよ。」

マコト「わかりますけど、、ウィルスで大変なのは皆一緒でしょ?イライラをぶつけられてもね、、。」

高橋はマスクを付けた。







人類史上類を見ない流行病パンデミック が起きて2年。

睡眠時遊行ウィルス。通称『レムウィルス』

世界は今やこの謎の感染症で大混乱と化していた。

ウィルス感染すると睡眠時に夢遊病のような症状で動き回る。

夢遊病者は 外出したり、買い物をしたりという日常的な行動を起こすものから、危険な類の、暴力、破壊行動、放火 等の事例も世界で報告されていた。

怪我人や死者も多数。感染者は1、7億人にも及んでいた。

夢遊病者は強い衝撃を与えて再び眠らせるか、「水」を浴びると正気に戻るという。

ウィルスの発生原因は未だ謎が多かった。
正気に戻った後も風邪のような症状が残り、
倦怠感、高熱、下痢、吐き気、も続く。
今のところ自然治癒に任せるしかなく、感染者は隔離され治療を受けていた。

感染経路は空気感染と接触感染。
感染者の血液中からは 共通の未知のウィルスが確認されていて
世界保健機関WHO はその原因究明とワクチン開発を急いでいた。

世界は変わってしまった。
また元の世界に戻る事は出来るのだろうか。








マコトが立ち上がるとポケットから手紙が落ちる。

高橋「あれ?何か落としましたよ?」

マコト「あ〜これ。いつもの少年がくれた手紙です、、。」

高橋「ファンレターですか!良いですね!何て書いてあるんですか?」

マコト「あ〜、、一回も読んだ事ないんですよね、、男からの手紙なんてね、、。」

高橋「ダメですよ〜ちゃんとファンの声に耳を傾けないと!」

マコト「はぁ、、、そうですね、、。」


高橋は飲みかけのペットボトルやらゴミを適当に掃除して帰る準備を始めた。

高橋「じゃあマコトさんが最後なんで、帰る時はお店の人に声かけてくださいね。僕はお先に失礼します。キョウジさんにも僕からメールしておくので、また明日話しましょう。お昼12時に事務所に来てくださいね!」


そう言って高橋は楽屋を後にした。


マコト「、、、ったくキョウジのヤツ、、、何なんだよ!今まで頑張ってきたのに、、。そりゃ子供も産まれるし、将来のこと考えたら不安だろうけど、、いきなり解散だなんて、、。」

何回も挫けそうになったし、辞めようとも思ったこともあったが、マコトはどうしても『さいれんず』を続けたかった。

手に持っていた手紙を読もうと広げた瞬間だった、、、。

「クスクス、、、クスクス、、、、」

マコト「ん??」

「クスクス、、、クス、、クス、、、、クスクス、、、クスクス、、、、」

マコト「誰か居るのか?」

どこからともなく笑い声が聞こえた。
辺りを見回したが部屋にはマコト一人だった。

マコト「なんだ?いたずらか?ドッキリとかか??怖かねぇぞ!」

と、大声を出した次の瞬間

ガンっ!!!!!!!!!

と、いきなりドアが開いた。

ドアの前には誰も居ない。


マコト「うわっ!ビビった!!おい!!やめろよ!!なんだよ?」

マコトは恐る恐るドアに近づく。

すると ピチャピチャ と足音が聞こえる。

その足音は階段の方へ向かっている様だった。

マコト「何だよ?マジで!」

マコトはその足音の音を辿っていく。

足音は階段の上へ向かっている。

関係者以外立ち入り禁止 の柵を越えて薄暗い階段を上がっていく。


このライブハウスは雑居ビルの4階に位置していた。ビルは7階建て。

蛍光灯が付いているが足元も確認出来ないくらいの階段を登っていくと屋上への入り口になった。

マコトはドアノブに手を当てるとガチャっと音を立てて開いた。鍵はかかっていなかった。

そこは暗い屋上で、新宿の街のネオンで少しだけ屋上は照らされていた。


6月の雨雲が過ぎ去ったばかりの夜空には三日月が見えていた。
湿気混じりの生温い風が肌にまとわりつく。



マコト「なんだよ、、ただの屋上か、、」

屋上を見渡すマコト。すると奥の方に人影が見えてゾっとした。

マコト「うわ、、誰か居る?何してんだ、、、?」

忍足でその人影に向かう。するとネオンに照らされてやっとソレを確認した。

マコト「うわっ、、!」

思わず声を上げる。

ウサギの着ぐるみ がこちらを見て立っていた。

マコト「な、な、、、、何してんすか??誰か中に入ってます?」

ウサギの着ぐるみは何も言わず、ずっと立ったままだった。

マコト「あの、、、ってかそのウサギどっかで見た事あるんだよな、、、、。あ!!あれだ!思い出した!!パンリオピューロランドのウサギ大臣だ!!」


パンリオピューロランドとはマコトの実家の小田原にあるレジャーランドである。
そこのマスコットキャラクターがこのウサギ大臣だった。
そのレジャーランドはもう何年も前に閉園していた。

マコト「懐かし〜!!何年ぶりだ、、?」

マコトはウサギ大臣に近づくと、その着ぐるみがいきなり喋りはじめた。

ウサギ大臣「ねえ、、、あれ見せて、、。」

いきなりの言葉に驚くマコト。

マコト「うわ!喋った!?」


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