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本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫

絶望の中での希望




「どうして……、ここに……」

 殴られ続けて歯でも折れたのだろう。
 まともに声が出せない。
 それが余計に今の自分の愚かさを象徴しているとも言える。
 あまりの自分の愚鈍さに笑いが込み上げてくる。

「意識はありますか?」

 そんな俺に必死に話しかけてくる獣人の美少女。
 掠れた視界だったが、薄暗い路地でも銀色に輝く艶やかな髪だけは目に焼き付けられる。

「意識は……ある……だけど……どうして……ここに……獣人が……」

 獣人は、異世界ガルドランドでは魔王の手先という事で奴隷として酷使されている存在。
 それなのに、一人で出歩くことなんて普通はありえない。

「それは……」
「居たぞ! あそこだ! 逃げた獣人は殺して見せしめにしろ!」

 声が――、殺気立った声が聞こえてくる。
 視界は、もう殆ど見えない。
 きっと、目の前の銀色の髪の獣人の美少女は、逃げていたのだろう。
 そして、倒れている俺に、逃げている最中で合っても声をかけてくれたのだろう。
 彼女は、自分が見つかり、殺される覚悟があったとしても心配になって声をかけてくれたのだろう。
 誰が魔王の手先だと言ったのか分からない。
 殆ど獣人と話した事もないから知らなかった。
 だが、それは嘘じゃないか……。
 もう、俺は長くない。
 だから……せめて……。

「逃げろ……」
「――で、でも……」

 どうして、そこで躊躇する。
 殺されかけているんだぞ?
 それは、もうすぐ死ぬ俺も変わらない……。
 
「――くそっ……」

 自分だって馬鹿だって分かっている。
 俺は、どうにかしようと頭の中でステータス画面を開く。
 だが、表示されているのは【アイテムボックス】と【称号】の欄のみ。
 他は空白になっていて何も書かれていない。
 他の勇者は書かれていると言っていたのに。

「殺せ! 逃げた獣人は見せしめだ!」

 声の大きさから言って追いついたのだろう。
 あと数秒もしないうちに、俺なんかのことを心配して自分の身も顧みることもなく話しかけてくれた少女は殺されてしまう。

「――そんな……ことは……させない……」

 俺は、どうなってもいい。
 だから……誰か……助けてやって……く……。
 もう声も出ない。
 剣を鞘から抜く音と共に、少女の悲鳴が聞こえた。
 それと同時に――。

 ――チュートリアルが完了しましたので、システムの最適化が完了しました。これより、ポータルシステム起動します。ゲームスタート地点への転移を行います。承諾の許可を頂けますか?

 脳裏に、再度響く機械的な音声メッセージ。
 だが、ポータルシステムという言葉に俺は聞き覚えがあった。

「……て、……転移の承諾を許可……する」

 必死に絞り出した声。
 それに反応したのか

 目を閉じていても分かるくらいの明るい光を感じたと思った瞬間に、俺の体は重力の楔から解き放たれた。
 そして痛みで体が麻痺はしていたが、どこかに落ちたようだった。
 それと同時に少女の小さな悲鳴と同時に「ここは……」という困惑した様子の声が聞こえてきた。
 どうやら転移は上手くいったようだった……。

 それと同時に俺は……、安心して薄れていく意識の中で理解した。
 ここは俺が20年間、ゲームをしていたアルドガルド・オンラインの世界だということに。





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