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婚約破棄され国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

初めての宿




「とりあえず、一括で清算した方がいいからな。それで、パーティってことで受付に言っておいたんだ」
「そうなのですか」

 たしかに、私達よりも前にクエスト完了報告をした方は、まだ待っている。
 
「ちなみに、パーティって言っても正式に登録はしてないから、私達3人はそれぞれソロの扱いは変わらない」
 
 そう、アネットさんは説明してくる。
 私は頷きつつ、「そうなのね」と心の中で呟きつつ、受け取った金貨3枚と冒険者ギルドカードをアイテムボックスの中へと入れる。

「そういえば、アネットさん」
「どうした?」
「金貨3枚って、結構な額だと思いますけれど、やっぱり――」
「いいや。商人は約束をした事は守るからな。金額が多い理由は、商人たちが先に冒険者ギルドへ報告をしてくれていたんだろう? 冒険者が優秀だったから色をつけてくれ! とか、そんな感じで」
「そうなのですか? 良くあることなのですか?」
「ある。そして、その逆もある」
「つまりクエスト報酬が減る事もあるという事ですか」
「そうだな」

 それは、それで冒険者の方も仕事を頑張るようになりますね。
 そう、思いつつ言葉には出さない。

「それじゃ、私は宿を取りますので、アネットさん、ユーリエさん、お世話になりました」
「エミはん」

 立ち去ろうとしたところで、ユーリエさんが話しかけてくる。

「はい?」
「そないに急がなくてもよくない? もしよかったらええ宿を教えるけど?」
「自分で探せますから」
「せやけど、エミさん。ここの町には初めてきてんなぁ? 伝手とかもないよね? 村暮らしだってんなぁ? 女性一人で、何も知らん町で宿を借りたら色々と危険やと思うで?」
「……」

 たしかに……、私は王宮から出る時は、近衛騎士の女性騎士が常に警護についてくれていたし、一人で王宮外を出歩いたことはない。
 それどころか、王宮の中であっても侍女が最低2人は付いていた。
 つまり日本から転生してから、この世界の事について知っている知識と言えば公爵家の屋敷で暮らした事と、妃教育の間に体験したことだけで、あとは成り行きで何とかなっているに過ぎない。
 一応、貨幣の価値は知っているけど相場は日本の流通相場を参考にしているので、それも違う可能性がありそうだし……。

「お世話になります」
「それなら決まりやね。クエスト完了の打ち上げが終わったあとに、ウチのお薦めの宿を紹介するから」

 アネットさん、ユーリエさんと冒険者ギルドを出たあとは、クエスト完了の打ち上げと言うことで、酒場で飲む事となった。
 酒場で出される料理は、ドイツ料理に近いモノがあって、サッパリとした味つけと、濃い目の味付けの料理が両極端な物が多い。
 二人は、エール(蒸留酒)を飲んでいたけど、私は、葡萄を絞って作られたジュースを口にした。
 料理が食べ終わったあとは、町の中心街から外へと通じる門の方へ向かう大通りを歩く。
 徒歩で3分くらい距離。
 3階建ての建物の前でユーリエさんは足を止める。

「此処がウチのおすすめの宿やで」

 ユーリエさんが自信満々に勧めてくる宿は、白のペンキで外壁が塗られていて屋根が赤く、入口には花の花壇があるメルヘンチックな宿であった。

「森の宿?」
「そうやで、よぉ読めたね」
「一応、村では常識でしたので」

 宿に書かれている文字はエルフ言語で、エルフが治めている大森林の王国で公用語として使われている文字。
 妃教育の一貫として、教えられてはいたけど、使う機会は今まで無かったので、初めて使った。

「ほな、宿にはいろ。紹介するから」

 私の背中を押してくるユーリエさん。





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