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婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫

迷宮都市(3)




 幸い、近くを歩いていた40歳ほどの年配女性に冒険者ギルドの場所を伺う事が出来たので、教えてもらった通り市街地を歩く。
 市街地の建物は、主に切り出された石で壁を作られており、屋根も石材が使われている。
 ラッセル王国は、屋根には木材や薄く軽い煉瓦が使われていた事もあり、4階建てなどの高層な建物が存在していたけれど、迷宮都市グラナドは使われている石材が重い事もあるのか、平屋の建物が多い。
 高くても2階建て。
 おかげで一つ一つの建物は、住民が暮らす上で広い敷地が必要なのか、隣の建物までの距離が遠い。

「それにしても、始めて異国に来て思いましたけど……」
「――ん? アリーシャは、旅は始めてなのか?」
「そうですね」

 貴族の家に生まれた私は、物心がつく頃には既に婚約が決まっていた。
 それは幼いながらも高すぎる魔力に目をつけた国王陛下の意向で。
もちろんお父様もハイデンブルグ公爵家から将来、国王陛下になられるカイル王子殿下へ私が嫁げば、斜陽中の公爵家が盛り返せると考えて、色よい返事を出したけれど……。

 それもカイル王太子殿下の婚約破棄の一件で全てご破算なってしまったと思う。
 おかげで私の5年という王妃教育も無駄になってしまったと思うけど、それは私の預かり知らぬ事だから、どうでもいいけど……。

「ほとんど出歩くことも無かったですね」

 そう――、私は未来の王妃として教育されていた事もあり、女性の騎士が常に護衛してくれていたし、その代わりに自由な時間もなかった。
 それどころか、ラッセル王国が運営している施設を視察するくらい。
 城下町を一度も歩いたことはなかった。
 移動はもっぱら馬車であったし。
 おかげで、一般の方の暮らしというのは王妃教育の一貫として習うくらい。
 だから――。

「市井(しせい)の方々が暮らされている場面を実感できることは大変うれしく思いますわ」
「アリーシャ?」
「――あ、えっと。こういう活気的な場所を歩くことは、異国に来たと実感しますよね」
「…………そうだな」

 思わず、口調が王妃として教育された時のまま出てしまっていた。
 やっぱり意識して、口調を変えておかないと無意識だと出てしまいます。

「あ、エリザさん。あれではありませんか?」
 
 私が指差した方向。
 大通りを進んだ先の突き当り。
 そこには3階建てのレンガ作りの建物があり、周囲の石造りの建物とは一線を画すほど大きい。
 年配の女性が話していた通り、白い大理石で作られた壁が光を反射しキラキラと輝いている。
 

「やっと着いたな! これで、魔物の素材を売ればお金になるかも知れないな!」
「はい。とりあえず宿に泊まれるくらいは素材を売りましょう」

 素材が売れなければ、仕方ないので王都で売ってきた軍資金に手をつけるとしましょう。
 あくまでも、私はお金がないという村娘設定なので。






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