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婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫

迷宮都市(1)




 落ち込むエリザさんを連れて詰め所から離れて、まっすぐに道を進む。
 足元は、整然とした石畳が敷かれていて、所々にヒビや欠けなどは見受けられるけど歩く分には支障はないし、何なら幌馬車まで通っているので、かなり丈夫な石が使われているのが一目で分かる。
 砂漠とは違い、石畳だったおかげで歩くことに苦労はない。

「何だか、すごく損した気分だ」
「実際、損はしていると思いますよ?」
「そこは慰めて欲しかった」
「……そういえば、エリザさんが身分証明書を出した時に、私は驚きました」
「どうしてだ?」
「だって家に内緒で修行の旅に出ているのに、身分証明書を提示したら居場所がバレてしまうのではないのですか?」

 私の言葉に無言になるエリザさん。

「そうだったー!」

 絶叫するエリザさん。
 じつは、何も考えずに身分証明書を出していたのね? と、私は、心の中で静かに突っ込みを入れつつ、市街へ通じる道を気にしないフリをして歩く。

「まって! アリーシャ」
「はい。後悔は済みましたか?」
「やってしまった事は仕方ないという事だけは理解できた。あとは、もう、どうにでもなれって感じだな」
「そうですか」

 こういうポジティブな所がエリザさんのすごいところですね。
 私なら、すぐにでも町から逃げ出しているところです。

「そういえば、いまは市街地に向かっているんだろう?」
「そうですね」

 エリザさんが両脇に存在する巨大な壁を見ながら呟く。

「なんで、町の中なのに壁があるんだ?」
「ああ、それはですね。右手側には砂の国、つまり迷宮都市グラナドの領主様の館があるからですね。――で、左手には司法機関が纏められた区域があると、教わったことがあります」

 以前に王妃教育の一貫として、砂の国の統治機構と迷宮都市の概要を習った事があるけれど、それが今役に立つとは思いませんでした。

「なるほど……。アリーシャは迷宮都市に来るのは初めてなんだよな?」
「そうですけど?」
「やけに詳しくないか?」
「普通です。普通。一般常識とも言えます」
「……」

 無言になって落ち込むエリザさん。
 ときおり「馬鹿な……一応、貴族院でも、それなりに勉強が出来たはずなのに……」と呟いていらっしゃいますが、そこはスルーしておきましょう。

「それよりエリザさん。今日は、泊まる宿が決まっていませんから急ぎませんと」

 もうすぐ日が暮れる時間なので、早く宿泊施設を決めないと大変。
 それにモンスターの素材や宿舎から拝借してきた物も売らないとお金がない。
 まずは買取をしてくれるお店を探さないと行けないので悠長にしている時間はないのです。





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