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婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫

入国審査




 城壁に沿って、門兵が立っている場所へと向かう。
 ちなみに城壁の高さは10メートル近いため、普通には超えることはできない。
 門兵の方に近づいていくと、向こうも此方に気がついたのか、私達二人の方へと顔を向けてくる。

「そこの旅の人! 入国審査をしているから、向こうへ並んでくれ!」

 エリザさんの言う通り、年若い男性の声。
 年齢としては、10代後半どころか前半と言った感じ。

「向こうみたいだな」

 エリザさんが、砂地を物ともしない様子で歩いていく。
 私も、そのあとを付いていくけど、サンダルの中に砂が入ってきて、歩きにくい。
 魔の森や、草原地帯なら、サンダルで良かったのだけれど町に着いたら履物を変えた方がいいかも。

 門兵の前を通り、大きな門の隣には小さな入口があり、そこには30人近くが並んでいて列が出来ていた。
 ちなみに大きな門の方は開け放たれてはいるけど、通り抜けるのは荷馬車や幌馬車と言ったモノばかり。
 恐らくだけど、人用と馬車・馬用で入口を分けて使っているのかも知れない。

「ここに並べばいいんだな」

 エリザさんは門兵へと話しかけていた。

「ああ、見かけない顔だが、迷宮都市グラナドに来たのは初めてか?」
「ここのダンジョンに修行にきた」
「なるほど……。そちらの女性もか?」
「はい。村から出稼ぎに来ました」
「そうか。――なら、まずは身分証を作ってくれ。順番に身分証の確認と、身分証を持ってない人は、迷宮都市で身分証の発行をしているから」
「それにしても、二人とも魔法使いなのか?」

 不思議そうな表情で私達を見てくる兵士の人。
 かなり年若く、年齢は私達と同じくらい。

「私は騎士だ!」
「――ん? どこかの国の?」
「いや、そうじゃないが……」
「エリザさん、誤解を招くような言い方は止めてください」
「エリザさんは、剣士見習い。私は赤魔導士です」
「なるほど。二人とも駆け出しなんだな」

 私の説明に納得いったようで何度か頷く兵士の方。

「次の人―」
「呼ばれているぞ」
「行きましょう。エリザさん。それでは門兵の方、失礼しますね」

 私は頭を下げて小さな門を潜る。
 すると、2人の兵士が私を見てくる。

「そちらの詰め所に入ってくれ。手続きをするから」

 その中の兵士の一人が、私達に建物の中へ入るようにと薦めてくる。
 室内には20代の女性と40代の女性がおり、私達の方へと視線を向けてきた。
 そして女性が口を開く。

「迷宮都市グラナドへの入国目的と身分証明書の提示をお願いできますか?」

 そう聞いてくる。
 真っ先にエリザさんが頷き「迷宮都市の迷宮で修行をする為に来た」と迷いなく話しかけている。

「畏まりました。それでは身分証明書の提示をお願いします」
「これでいいのか?」

 私が止める間もなくエリザさんが身分証明書と思わしきプレートを懐から取り出すと女性に渡す。
 すると女性は一瞬驚いた表情を浮かべると、室内の机の上に置かれていた羊皮紙に文字を書きこんでいく。

「畏まりました。それではエリザベートさん。無理はなさらないでください。それと入国料として銀貨5枚を頂きます」
「分かった」

 銀貨5枚を支払うエリザさん。
 次に私へと視線を向けてくる女性。
 それでエリザさんの入国手続きは終わったと理解してしまう。

「私も迷宮都市で稼ごうと思って村から来ました。赤魔導士です。身分証明書はありません」
「分かりました。カイエンさん、宜しくお願いします」
「おう。お嬢ちゃん、名前は?」
「アリーシャと言います」
「なるほど。犯罪歴とかはあるか?」
「いえ、ありませんが……」
「それじゃ、そこの水晶に手を翳してくれ」
「はい」

 私は、室内の端に置かれていたテーブルの上に無造作に置かれている30センチほどの無色の水晶に手を翳す。

「ふむ。言っていることに嘘偽りはないな。身分証明書は迷宮都市で発行するものだが、諸外国でも使うことは可能だ。迷宮都市グラナドの住民として登録するから、ここの住人として誇りある行動をしてくれ。それと金貨1枚だ」

 その言葉に、私はエリザさんの方を見る。

「仕方ないな。アリーシャ」

 そう言いながら金貨1枚をエリザさんに借りる。
 モノを売らないとお金がないことを忘れていました。
 私はエリザさんから借りた金貨をカイエンさんに渡す。

「よし、二人とも迷宮都市グラナドへ、ようこそ」

 カイエンさんの言葉に頷く私達二人。
 手続きが終わったので詰め所を出ようとしたところで、女性が「あ、エリザベートさん」と、引き止めてきた。

「まだ何かあるのか?」
「いえ。エリザベートさんは滞在という形になりますので毎月銀貨1枚を支払ってください」

 ハッキリと告げてくる詰め所の女性。

「それってアリーシャもか?」

 エリザさんが、私も払わないといけないのか聞くけれど……。詰め所の女性には「いえ、アリーシャさんはグラナドに住民登録されましたので必要ないです」と、言われていた。
 それを聞いたエリザさんは何か思いついたのかハッ! と、した表情で口を開く。

「それじゃ私も、住民登録した方がいいのでは!?」

 エリザさんの言い分も、もっともな言い分。
 毎月、お金払うのもったいないですし。

「いえ。別の国で住民登録されている方は、あくまでも出稼ぎか観光という扱いになりますので」
「そうなの……か……」
「はい」

 詰め所の女性の言葉に、エリザさんは深く溜息をついていたけど、私としては、他国からの干渉を極力排したいというのは何となく理解出来てしまった。



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