【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね
第209話 すべてを槍に込めた一撃
「さらばだ嬢ちゃん。今まで、良く戦った。その勇気に免じて、全力で、切り刻んでやるよ!」
そして魔剣にただならぬ魔力を込める。
魔剣が真っ黒い光に染まる、圧倒的な力。
人間一人を殺すにはあまりにも過剰すぎる力。
当然、その一撃にイレーナの体が触れた瞬間、彼女の魔力は消し飛び、斬撃をそのまま受けた肉体は一刀両断。──とはならなかった。
攻撃を見事に受けきったのだ。その光景に驚きを見せる魔王ノーデンス。
(ほほう──。まだ力を残してたとはな)
しかし、今回はそれだけではない。
スッ──。
すると、イレーナは心の底から大きな声で叫びながら、自身の槍を振り上げる。
身体を回転させる、その勢い。
そのパワーで、ノーデンスに槍をたたきつけた。
大地を引き裂くような圧倒的なパワー。広陵とした大地を震撼させる大きな一撃。
斬撃自体は、何とか魔剣で受けきれたので、ダメージはない。
……がその表情に、混乱と戸惑いがにじみ出ていた。
(こいつ、今までどれだけ攻撃を浴び続けてきたと思っているんだ)
ボロボロになったにもかかわらず、反撃をしてきたこの敵に。
消えそうながら、瞳の奥で輝き続ける光に。
満身創痍のイレーナを支えているこの輝き。
それはさながら、圧倒的な力によって生じた暗黒の世界に、ただ一つ輝き続ける攻勢のようだ。
それは皇族としての意地、その責任感。
ではない。そんな思いは、とっくに燃え尽きた。
幸一との鍛錬で積み重ねられた自身も、祖国で最強であったという自尊心も、何もかもが違う力によって打ち砕かれた。
しかし、それでも、それでも、たった一つ。彼女の心に残っているものがある。
「みんなが、私を愛してくれたから。だからみんなを守るために、私は戦いたい!」
心の底から、自分を愛してくれていたのだ。
家族が、祖国の人たちが、何でもなかったころからの自分を愛してくれていたのだ。
だから、決意した。
イレーナは、自分が強くあることを。みんなに守られる自分ではなく、みんなを守る自分でありたい。
だから、強くなりたい。
そして、エーテル体となった力。ユダから詳しく聞いたわけでもない、初めて与えられた力。
「今も、十分強い。けれど、もっと強くなれる」
感じる。もし、目の前の敵を倒したいという想いに身を任せてしまえば、もっと力が欲しいと願えば、この力はそれに反応し、兄弟な力を与えてくれるだろう。
そして、その欲望に、濁流のように流され、ただ、目の前の敵と殴り倒す打だけの存在となっていくだろう。
それでは、ダメなのだ。
それでは、魔王ではなく、彼女が世界を滅ぼす存在になってしまう。
そうならないためには、持ち続けるしかない。ただ目の前の敵を倒したいという心ではなく。業火のような、轟音を発し火花を散らし続けるようなちからではない。
純粋な、国民たちを守る王女様でありたい、世界を平和にするために戦いたいという強い想い。
静かではあるが、どんなものをも焼き切るガスバーナーのような真っ白く何よりも熱い炎。
「私は、戦う。どんな時も、みんなを守り切れる王女でありたいから!」
髪は乱れきっていて、ボロボロ。
ダメージを何度も受けていて、次致命傷を食らえばもう魔力は持たないだろう。
それでも、立ち上がる。目の前の魔王という敵に、戦うという選択をとる。
「その眼。ただならぬ力、感じるぜ──」
その立ち上がりを見て、魔王は気迫を感じる。身の危険を感じ、思わず一歩後ろへ下がった。
「さっき、言ったよね。魔王ノーデンス。自分、世界そのものだって。わたしとは、埋められない差があるって」
「ああ、たしかにいった。あの時はな──」
「だったら、私はその差ごと、あなたをたたききって見せる」
そしてイレーナは目をつぶり、神経を集中させる。
ガスバーナーの青い炎のような、静かで大きくないが、普通の魔力よりはるかに強い魔力。
それを自身の槍に込める。
彼女には、サラのようなサポート役も、遠距離攻撃もできない。パワーで負けたら、気持ちで目の前の勝負に負けたらもう何もない。
だから、ここで勝つしか道を開けない。
その勝負に極限まで追い込まれ、編み出した戦い方がこれだ。
イレーナが自身の槍を魔王に向ける。
「これで私は、あなたを倒す!」
それを見た魔王。イレーナの状態を見て目を丸くする。
「無謀だ。こいつ、すべての魔力を兵器に込めやがった」
そう。今のイレーナは、自身の魔力を兵器の槍と、それを支える腕以外に魔力が存在しないのだ。
通常の戦いでは、こんなことはあり得ない。
特に今のような闘志を全開にしているときなどは、魔力を全身からこれでもかというくらい放出し、闘志をむき出しにする。
それは、言い換えれば無駄なエネルギーの浪費になる。
だからイレーナはそれをすべてパワーに変えたのだ。
轟音も、必要以上の光も、そして、自らを包む魔力でさえも。
そして決死の勢いでイレーナは魔王へ向かっていく。
もう駆け引きも、技術もいらない。
ただ、互いの想いを、力をすべてこの一撃に賭ける。力押しの一撃、魔力のすべてを槍に込めた一撃。
徐々にであるが。イレーナが押し始める。
そして魔剣にただならぬ魔力を込める。
魔剣が真っ黒い光に染まる、圧倒的な力。
人間一人を殺すにはあまりにも過剰すぎる力。
当然、その一撃にイレーナの体が触れた瞬間、彼女の魔力は消し飛び、斬撃をそのまま受けた肉体は一刀両断。──とはならなかった。
攻撃を見事に受けきったのだ。その光景に驚きを見せる魔王ノーデンス。
(ほほう──。まだ力を残してたとはな)
しかし、今回はそれだけではない。
スッ──。
すると、イレーナは心の底から大きな声で叫びながら、自身の槍を振り上げる。
身体を回転させる、その勢い。
そのパワーで、ノーデンスに槍をたたきつけた。
大地を引き裂くような圧倒的なパワー。広陵とした大地を震撼させる大きな一撃。
斬撃自体は、何とか魔剣で受けきれたので、ダメージはない。
……がその表情に、混乱と戸惑いがにじみ出ていた。
(こいつ、今までどれだけ攻撃を浴び続けてきたと思っているんだ)
ボロボロになったにもかかわらず、反撃をしてきたこの敵に。
消えそうながら、瞳の奥で輝き続ける光に。
満身創痍のイレーナを支えているこの輝き。
それはさながら、圧倒的な力によって生じた暗黒の世界に、ただ一つ輝き続ける攻勢のようだ。
それは皇族としての意地、その責任感。
ではない。そんな思いは、とっくに燃え尽きた。
幸一との鍛錬で積み重ねられた自身も、祖国で最強であったという自尊心も、何もかもが違う力によって打ち砕かれた。
しかし、それでも、それでも、たった一つ。彼女の心に残っているものがある。
「みんなが、私を愛してくれたから。だからみんなを守るために、私は戦いたい!」
心の底から、自分を愛してくれていたのだ。
家族が、祖国の人たちが、何でもなかったころからの自分を愛してくれていたのだ。
だから、決意した。
イレーナは、自分が強くあることを。みんなに守られる自分ではなく、みんなを守る自分でありたい。
だから、強くなりたい。
そして、エーテル体となった力。ユダから詳しく聞いたわけでもない、初めて与えられた力。
「今も、十分強い。けれど、もっと強くなれる」
感じる。もし、目の前の敵を倒したいという想いに身を任せてしまえば、もっと力が欲しいと願えば、この力はそれに反応し、兄弟な力を与えてくれるだろう。
そして、その欲望に、濁流のように流され、ただ、目の前の敵と殴り倒す打だけの存在となっていくだろう。
それでは、ダメなのだ。
それでは、魔王ではなく、彼女が世界を滅ぼす存在になってしまう。
そうならないためには、持ち続けるしかない。ただ目の前の敵を倒したいという心ではなく。業火のような、轟音を発し火花を散らし続けるようなちからではない。
純粋な、国民たちを守る王女様でありたい、世界を平和にするために戦いたいという強い想い。
静かではあるが、どんなものをも焼き切るガスバーナーのような真っ白く何よりも熱い炎。
「私は、戦う。どんな時も、みんなを守り切れる王女でありたいから!」
髪は乱れきっていて、ボロボロ。
ダメージを何度も受けていて、次致命傷を食らえばもう魔力は持たないだろう。
それでも、立ち上がる。目の前の魔王という敵に、戦うという選択をとる。
「その眼。ただならぬ力、感じるぜ──」
その立ち上がりを見て、魔王は気迫を感じる。身の危険を感じ、思わず一歩後ろへ下がった。
「さっき、言ったよね。魔王ノーデンス。自分、世界そのものだって。わたしとは、埋められない差があるって」
「ああ、たしかにいった。あの時はな──」
「だったら、私はその差ごと、あなたをたたききって見せる」
そしてイレーナは目をつぶり、神経を集中させる。
ガスバーナーの青い炎のような、静かで大きくないが、普通の魔力よりはるかに強い魔力。
それを自身の槍に込める。
彼女には、サラのようなサポート役も、遠距離攻撃もできない。パワーで負けたら、気持ちで目の前の勝負に負けたらもう何もない。
だから、ここで勝つしか道を開けない。
その勝負に極限まで追い込まれ、編み出した戦い方がこれだ。
イレーナが自身の槍を魔王に向ける。
「これで私は、あなたを倒す!」
それを見た魔王。イレーナの状態を見て目を丸くする。
「無謀だ。こいつ、すべての魔力を兵器に込めやがった」
そう。今のイレーナは、自身の魔力を兵器の槍と、それを支える腕以外に魔力が存在しないのだ。
通常の戦いでは、こんなことはあり得ない。
特に今のような闘志を全開にしているときなどは、魔力を全身からこれでもかというくらい放出し、闘志をむき出しにする。
それは、言い換えれば無駄なエネルギーの浪費になる。
だからイレーナはそれをすべてパワーに変えたのだ。
轟音も、必要以上の光も、そして、自らを包む魔力でさえも。
そして決死の勢いでイレーナは魔王へ向かっていく。
もう駆け引きも、技術もいらない。
ただ、互いの想いを、力をすべてこの一撃に賭ける。力押しの一撃、魔力のすべてを槍に込めた一撃。
徐々にであるが。イレーナが押し始める。
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