【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね
第208話 死んでも、恨むなよ
そしてイレーナ。
彼女は、魔王ノーデンスに対して絶望的な戦いを強いられていた。
(さすがは、魔王。今までの敵と、全然違う──)
イレーナ自身も感じていた。エーテル体と化し、圧倒的な力によって強化された肉体。
その威力は、いままでより何十倍も強力。この力を持って、今まで戦ってきた敵と戦うことになっても、数十秒で勝利をもぎ取れるだろう。
それほどに、今までとは比べ物にならない強力なパワー。
しかし、それでも、それでも絶対的な差を感じてしまうのだ。
仁王立ちしている魔王。イレーナは何度も立ち向かい、全力でパワーを込めて斬撃を見舞う。
正直、立ち向かうことすら恐ろしい。戦おうとするだけで、足が恐怖で震えだし、逃げろ逃げろと叫びだす
しかし──。
(私は、逃げたくない!)
イレーナは勇気を振り絞り、心の中で叫ぶ。
そして逃げしたいと叫ぶ両足に聞かせる。
(絶対に、逃げるわけにはいかない!)
──と。
受け流すわけでもなく、かわす動作すらせずにただ手をかざす。
真正面から、攻撃を受け止める。
受け止めて、なおも揺るがない。
それでもイレーナはあきらめず、一歩引いた後、自身の槍に、最大限の魔力を込める。
世界を創造する六根清浄の力、今
真如なる輝き照らし、暗き道にさまよい歩く世界を照らし出せ!!
クリスタルスターライト・ワンドカッシーニ
確かに今のイレーナならば、本気の一撃をたたけば、大地を揺らし、周囲を破壊する。
しかし、海全てを爆発させるような、山全てを破壊するような一撃にはならない。
あくまで局地的な話だ。
イレーナと魔王の間にはそれくらいの、絶対的な勢いや流れではうめられない差があるのだ。
立ち向かうたびに、イレーナは何度も手痛い逆襲を受け、身体が投げ出され、大ダメージを受ける。
魔王ノーデンスは全身を一歩も動かさず、立ち向かってくるイレーナだけが吹き飛ばされ、ダメージを受けていく。
そんな一方的な展開に、イレーナの心に絶望感が広がっていく。
築けばイレーナの姿はボロボロ。
イレーナ自身も内心理解している。目の前に戦っている敵、魔王は自分とは実力が圧倒的に違うと。
今回も仁王立ちした魔王に攻撃を受け止められた。
「確かに貴様の実力は素晴らしい。敵ながらその強さ、何度も立ち向かってくるその不屈の精神はほめたたえよう」
魔王の余裕の言葉。そしてそれを証明するように、イレーナの心を打ち砕く一撃を受ける。
彼女はそのまま自然を数十メートル程転がった後、また立ち上がる。
自身の槍で、身体を抑えながら、ゆっくりと。
すでにボロボロの、その姿。
全身から痛みを襲い、足取りがおぼつかない。
それでも、イレーナは立ち向かう。
「だが、いくら強くても、私の存在はこの世界そのもの。貴様の強さは世界の一部を揺らしても、世界そのものを破壊することはできない。これが、魔王と人間の差なのだ。貴様はまだ若い。殺すには惜しい存在だ。命が惜しくば、ここでその槍を下ろせ」
その言葉に、イレーナは答えない。
たどたどしく、おぼつかない足取りで、魔王の元へ向かっていく。
すでに槍を持ち上げる力さえないのか、槍を引きずりながら。
それでも立ち向かっていくイレーナ。
魔王の問いに彼女は答えない。というより──。
「フフフ。その眼、決して折れないという目をしているな」
戦う当初は、強気でまっすぐ魔王を見つめていた眼の光。それが消えかかっているのだ。
(──が、最後の光が、消えない)
それでも、その眼に、闘志は完全に消えてはいない。魔王を倒す、という意思を持っているのが理解できる。
その言葉通り、ゾンビのように、何度吹き飛ばしても、挑みかかってくるのだ。
今回も──。
ズサッ──。
(この女。まだ我と戦うつもりか……)
またしてもイレーナは立ち上がってくる。
よろよろした歩き方。まっすぐに歩けないほど消耗している。そんなボロボロの格好で、イレーナは魔王に立ち向かってくる。
そんな有様で、まともに勝負になるはずがない。
勢いだけで、技術も駆け引きもない。ふらふらと、槍の重さを支えきれず、雑になったモーション。
そんな幼稚な攻撃、打ち破ることなど、安易だ。魔王はその攻撃を軽くステップを踏んでかわす。
そして、空振りしたイレーナの背後を取り、彼女の体に、魔剣を振りかざす。まだ魔力は切れていないので、出血こそしていないが大ダメージを受ける。それこそ、あと2,3発もくらえば、魔力を尽きてしまうだろう。
そこからは、先ほどまでの焼き増しのようだった。よろよろになりながら、再び立ち上がる。
一方的な勝負。
しかし、イレーナはそれでも、勝負を捨てていなかった。
そんな姿勢を見た、魔王ノーデンス。苦渋ながら一つの決断をする。
「仕方あるまい。これほどの力と精神の持ち主を失うのは忍びないが。もともと命がけの勝負。死んでも、恨むなよ」
魔王は、剣を交わえながら、相手の性質が理解できるのだ。強さだけではなく正義感、倫理観などすべてが。
イレーナは、人間としては破格の強さに、正義感のある心、そしてゆるぎない信念を持っている正しき人間だと理解していた。
(こいつが俺の配下だったら、最高幹部にしてもいいくらい素晴らしい人材なんだけどねぇ)
そして、今ここで殺すのに惜しい人間だとも。
そう、イレーナを「殺す」という選択だ。
そして、再び向かってきたイレーナに対し、思いっきり手に持っていた魔剣を振りかざす。
今までのような手加減した一撃ではない、全力で彼女を一刀両断するために。
「さらばだ嬢ちゃん。今まで、良く戦った。その勇気に免じて、全力で、切り刻んでやるよ!」
そして魔剣にただならぬ魔力を込める。
彼女は、魔王ノーデンスに対して絶望的な戦いを強いられていた。
(さすがは、魔王。今までの敵と、全然違う──)
イレーナ自身も感じていた。エーテル体と化し、圧倒的な力によって強化された肉体。
その威力は、いままでより何十倍も強力。この力を持って、今まで戦ってきた敵と戦うことになっても、数十秒で勝利をもぎ取れるだろう。
それほどに、今までとは比べ物にならない強力なパワー。
しかし、それでも、それでも絶対的な差を感じてしまうのだ。
仁王立ちしている魔王。イレーナは何度も立ち向かい、全力でパワーを込めて斬撃を見舞う。
正直、立ち向かうことすら恐ろしい。戦おうとするだけで、足が恐怖で震えだし、逃げろ逃げろと叫びだす
しかし──。
(私は、逃げたくない!)
イレーナは勇気を振り絞り、心の中で叫ぶ。
そして逃げしたいと叫ぶ両足に聞かせる。
(絶対に、逃げるわけにはいかない!)
──と。
受け流すわけでもなく、かわす動作すらせずにただ手をかざす。
真正面から、攻撃を受け止める。
受け止めて、なおも揺るがない。
それでもイレーナはあきらめず、一歩引いた後、自身の槍に、最大限の魔力を込める。
世界を創造する六根清浄の力、今
真如なる輝き照らし、暗き道にさまよい歩く世界を照らし出せ!!
クリスタルスターライト・ワンドカッシーニ
確かに今のイレーナならば、本気の一撃をたたけば、大地を揺らし、周囲を破壊する。
しかし、海全てを爆発させるような、山全てを破壊するような一撃にはならない。
あくまで局地的な話だ。
イレーナと魔王の間にはそれくらいの、絶対的な勢いや流れではうめられない差があるのだ。
立ち向かうたびに、イレーナは何度も手痛い逆襲を受け、身体が投げ出され、大ダメージを受ける。
魔王ノーデンスは全身を一歩も動かさず、立ち向かってくるイレーナだけが吹き飛ばされ、ダメージを受けていく。
そんな一方的な展開に、イレーナの心に絶望感が広がっていく。
築けばイレーナの姿はボロボロ。
イレーナ自身も内心理解している。目の前に戦っている敵、魔王は自分とは実力が圧倒的に違うと。
今回も仁王立ちした魔王に攻撃を受け止められた。
「確かに貴様の実力は素晴らしい。敵ながらその強さ、何度も立ち向かってくるその不屈の精神はほめたたえよう」
魔王の余裕の言葉。そしてそれを証明するように、イレーナの心を打ち砕く一撃を受ける。
彼女はそのまま自然を数十メートル程転がった後、また立ち上がる。
自身の槍で、身体を抑えながら、ゆっくりと。
すでにボロボロの、その姿。
全身から痛みを襲い、足取りがおぼつかない。
それでも、イレーナは立ち向かう。
「だが、いくら強くても、私の存在はこの世界そのもの。貴様の強さは世界の一部を揺らしても、世界そのものを破壊することはできない。これが、魔王と人間の差なのだ。貴様はまだ若い。殺すには惜しい存在だ。命が惜しくば、ここでその槍を下ろせ」
その言葉に、イレーナは答えない。
たどたどしく、おぼつかない足取りで、魔王の元へ向かっていく。
すでに槍を持ち上げる力さえないのか、槍を引きずりながら。
それでも立ち向かっていくイレーナ。
魔王の問いに彼女は答えない。というより──。
「フフフ。その眼、決して折れないという目をしているな」
戦う当初は、強気でまっすぐ魔王を見つめていた眼の光。それが消えかかっているのだ。
(──が、最後の光が、消えない)
それでも、その眼に、闘志は完全に消えてはいない。魔王を倒す、という意思を持っているのが理解できる。
その言葉通り、ゾンビのように、何度吹き飛ばしても、挑みかかってくるのだ。
今回も──。
ズサッ──。
(この女。まだ我と戦うつもりか……)
またしてもイレーナは立ち上がってくる。
よろよろした歩き方。まっすぐに歩けないほど消耗している。そんなボロボロの格好で、イレーナは魔王に立ち向かってくる。
そんな有様で、まともに勝負になるはずがない。
勢いだけで、技術も駆け引きもない。ふらふらと、槍の重さを支えきれず、雑になったモーション。
そんな幼稚な攻撃、打ち破ることなど、安易だ。魔王はその攻撃を軽くステップを踏んでかわす。
そして、空振りしたイレーナの背後を取り、彼女の体に、魔剣を振りかざす。まだ魔力は切れていないので、出血こそしていないが大ダメージを受ける。それこそ、あと2,3発もくらえば、魔力を尽きてしまうだろう。
そこからは、先ほどまでの焼き増しのようだった。よろよろになりながら、再び立ち上がる。
一方的な勝負。
しかし、イレーナはそれでも、勝負を捨てていなかった。
そんな姿勢を見た、魔王ノーデンス。苦渋ながら一つの決断をする。
「仕方あるまい。これほどの力と精神の持ち主を失うのは忍びないが。もともと命がけの勝負。死んでも、恨むなよ」
魔王は、剣を交わえながら、相手の性質が理解できるのだ。強さだけではなく正義感、倫理観などすべてが。
イレーナは、人間としては破格の強さに、正義感のある心、そしてゆるぎない信念を持っている正しき人間だと理解していた。
(こいつが俺の配下だったら、最高幹部にしてもいいくらい素晴らしい人材なんだけどねぇ)
そして、今ここで殺すのに惜しい人間だとも。
そう、イレーナを「殺す」という選択だ。
そして、再び向かってきたイレーナに対し、思いっきり手に持っていた魔剣を振りかざす。
今までのような手加減した一撃ではない、全力で彼女を一刀両断するために。
「さらばだ嬢ちゃん。今まで、良く戦った。その勇気に免じて、全力で、切り刻んでやるよ!」
そして魔剣にただならぬ魔力を込める。
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