【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね
第172話 サラ、あなたの事、見捨ててなんかない
「サラ、あやまるッス。だから黙っていたッス」
すると話を聞いていた幸一手を挙げてが一つ質問する。
「でもサラが何で狙われたんだ。サラはそんな奴じゃないだろ」
「そうよ。でもいくらそれが事実だとしても、彼らがどうとらえるかは別よ」
「政府の奴らなんて、倫理観がなく、自分たちの利益のためなら平気で不正行為や犯罪に手を染める連中が大半よ。病気と一緒よ。相手の行動を考えるつもりが、自分の思考回路をなぞるだけ。日々自分に都合が悪い奴を追い落としてきた奴らだもの、そんなこといくら説明したって信じないわ」
「それは俺もわかる。祖国でもそういうやつは少なからずいたからな」
同調するルーデル。彼もまたそういった人間たち、そして破滅を目の当たりにしてきたのであった。
「限界を感じていたわ。みんなを守るには、私が誰にも逆らえない存在になるしかないと──」
その言葉に、結末を知っているルチアは彼女から目をそらしてしまう。
「私は、サラを守るために、この街にいることをあきらめる選択をとったの。もちろん相手のなすがままになることはしなかったわ」
「教えてくれる? できる範囲でいいから」
イレーナの腫れ物に触れるような言い方にメーリングがさらに言葉を進める。
「一つはこの街の住民に危害を加えさせないこと、何かあったら私に介入させる権利を与える事。そしてサラの処遇、彼女が最も被害を受けず、力に振り回されないような生き方ができる選択をとったの」
「それが、サラをここから追い出すという選択──」
「そうよ、幸一さん。カンがいいわね」
サラはもはや放心状態のように、メーリングの言葉に反応せず黙っているだけ。
「そう、それがサラを守るために私が下した決断。サラはここには置いていけない。そしてアイヒ達にあなたの危険性をかなり盛って警告したの。いずれあなた達の足かせになると。殺そうとすれば何をされるかわからないから、助かりたかったらここから追い出すのが一番と」
「彼はその言葉を信じ切ったわ。すぐに血相を変えて国外追放処分にしたの」
自己保身だけは天の高さまで存在する彼らならではの判断だった。
「それでサラは私のもとに来たんだ──」
そして隣国にたどり着いたサラはイレーナと出会い、今に至ったのである。
「私にはわかっていたわ。サラには強力な力が秘められていると──」
その言葉にサラが驚愕する。
「けど私一人で、サラを守りきれる自信が無かった。でも放っておけば奴らはサラの存在に気付き実験道具にされてしまう」
「実験道具に──」
サラから視線をそらしキョロキョロしてしまう。メーリングには嫌われたと思っていた。
彼女からすれば突然メーリングが自分のそばから去り、直後に自分が危険な能力があるって政府の人間がやってきた後、国外追放になった。
その意図にメーリングが絡んでいると考えるのはおかしいことではない。
しかしそれは思い込みだった。
「でも、やっぱり信じられないよ。私の術式がそれくらい有用だなんて──」
「今はそうでもないかもしれないけれど、使える魔術が増えてくれば分かるようになるわ」
「増えて、くれば?」
サラが首をかしげると、メーリングが強めな物言いで言葉を進める。
「そう、あなた、知識をつかさどる能力でしょ。たとえばその人の黒い秘密を知ることができる力とか、暗号や道の言語を解読する力とか──。そんな力があるって政府の人に知られたらどうなると思う」
「そ、それは──」
その言葉にサラはうつむき、黙ってしまう。そしてそれを代弁するようにルーデルが言葉を返す。
「まあ、ろくな目に合わないのは想像できる。拷問にかけられたり、最悪暗殺されることだってあるだろうな」
「そうよ、ここの自己保身に長けて、目的のためなら手段を選ばない人達なら何があってもおかしくない。ずっと彼らを見てきた私が保証するわ」
そしてその言葉を聞いてサラが肩を震わせ、ゆっくりと口を開く。
「私、知らなかった。メーリング、私の事見捨てたのかと思って──」
サラの瞳にうっすらと涙が現れる。
「あなたに非は無いわ。あえて教えなかったんだもの」
それでもサラはメーリングに突っかかる。
「でも、まだ、腑に落ちない。どうして彼らから手を切ったりしないの?」
「無理よ。人質に取られているもの。私が裏切ったら街のみんなに何をしでかすかわからないわ。いまはまだ、私がにらみをきかしているから大丈夫だけれど──。それに……、見せてあげるわ」
そう、見せたのは彼女が、天使「バルトロ」に精神を支配されている姿。はじめ、説明をしたときは、みんな半信半疑だったり、どうにかならないかという声もあったが
「どう、わかった?」
幸一以外は初めて見るその姿に、全員が絶句してしまう。
レイプ目のように輝きを失った目。メーリングから放たれる、人間ではありえない強いオーラ。
「メーリングさん……、怖い……です」
特に怖がっていたのはシスカ、もともと臆病な性格で縮こまり、体をびくびくとふるわせている。
「これでわかった? 私とあなたたちは分かりあえないの。戦うしか道は無いの」
「なんでよ、せっかく分かり合えたのに──」
イレーナが悔しそうな表情を見せる。目をそらし納得がいかないというそぶり。
そしてたった一人、ルチアはあきれるようにフッと笑う。
「あんたらしいって言えばらしいッス。器用でなくても、友を必死で守ろうとするところとか──」
そしてサラもどこか安心した様子を見せる。
「でも、ほっとした。メーリングに嫌われて、見捨てられたんだとずっと思ってた。私、弱いから──」
「サラ、あなたの事、決して忘れてはいないし見捨ててもいない。大切な親友だと、かけがえのない存在だと今もこの胸に刻んでいるわ。ただ一緒にいることが出来ないだけ、それだけよ」
微笑を浮かべながらメーリングが語る。
「わかった? サラ、決して私はあなたを見捨てているわけじゃないわ。」
「メーリング、ありがとう──」
「その気持ちは大切に受け取っておくわ。だから理解して、私と一緒にいることは出来ないってことを──」
メーリングが胸に右手を当て、微笑を浮かべながら答える。サラはうつむきながら首を縦に振る。
「……わかった」
明らかに納得がいっていないのが分かる。しかし今のサラに反論できる余地はない。例え感情的に言い返しても、それでは子供が駄々をこねているのと一緒。
今のサラに、出来ることはなかった──。
すると話を聞いていた幸一手を挙げてが一つ質問する。
「でもサラが何で狙われたんだ。サラはそんな奴じゃないだろ」
「そうよ。でもいくらそれが事実だとしても、彼らがどうとらえるかは別よ」
「政府の奴らなんて、倫理観がなく、自分たちの利益のためなら平気で不正行為や犯罪に手を染める連中が大半よ。病気と一緒よ。相手の行動を考えるつもりが、自分の思考回路をなぞるだけ。日々自分に都合が悪い奴を追い落としてきた奴らだもの、そんなこといくら説明したって信じないわ」
「それは俺もわかる。祖国でもそういうやつは少なからずいたからな」
同調するルーデル。彼もまたそういった人間たち、そして破滅を目の当たりにしてきたのであった。
「限界を感じていたわ。みんなを守るには、私が誰にも逆らえない存在になるしかないと──」
その言葉に、結末を知っているルチアは彼女から目をそらしてしまう。
「私は、サラを守るために、この街にいることをあきらめる選択をとったの。もちろん相手のなすがままになることはしなかったわ」
「教えてくれる? できる範囲でいいから」
イレーナの腫れ物に触れるような言い方にメーリングがさらに言葉を進める。
「一つはこの街の住民に危害を加えさせないこと、何かあったら私に介入させる権利を与える事。そしてサラの処遇、彼女が最も被害を受けず、力に振り回されないような生き方ができる選択をとったの」
「それが、サラをここから追い出すという選択──」
「そうよ、幸一さん。カンがいいわね」
サラはもはや放心状態のように、メーリングの言葉に反応せず黙っているだけ。
「そう、それがサラを守るために私が下した決断。サラはここには置いていけない。そしてアイヒ達にあなたの危険性をかなり盛って警告したの。いずれあなた達の足かせになると。殺そうとすれば何をされるかわからないから、助かりたかったらここから追い出すのが一番と」
「彼はその言葉を信じ切ったわ。すぐに血相を変えて国外追放処分にしたの」
自己保身だけは天の高さまで存在する彼らならではの判断だった。
「それでサラは私のもとに来たんだ──」
そして隣国にたどり着いたサラはイレーナと出会い、今に至ったのである。
「私にはわかっていたわ。サラには強力な力が秘められていると──」
その言葉にサラが驚愕する。
「けど私一人で、サラを守りきれる自信が無かった。でも放っておけば奴らはサラの存在に気付き実験道具にされてしまう」
「実験道具に──」
サラから視線をそらしキョロキョロしてしまう。メーリングには嫌われたと思っていた。
彼女からすれば突然メーリングが自分のそばから去り、直後に自分が危険な能力があるって政府の人間がやってきた後、国外追放になった。
その意図にメーリングが絡んでいると考えるのはおかしいことではない。
しかしそれは思い込みだった。
「でも、やっぱり信じられないよ。私の術式がそれくらい有用だなんて──」
「今はそうでもないかもしれないけれど、使える魔術が増えてくれば分かるようになるわ」
「増えて、くれば?」
サラが首をかしげると、メーリングが強めな物言いで言葉を進める。
「そう、あなた、知識をつかさどる能力でしょ。たとえばその人の黒い秘密を知ることができる力とか、暗号や道の言語を解読する力とか──。そんな力があるって政府の人に知られたらどうなると思う」
「そ、それは──」
その言葉にサラはうつむき、黙ってしまう。そしてそれを代弁するようにルーデルが言葉を返す。
「まあ、ろくな目に合わないのは想像できる。拷問にかけられたり、最悪暗殺されることだってあるだろうな」
「そうよ、ここの自己保身に長けて、目的のためなら手段を選ばない人達なら何があってもおかしくない。ずっと彼らを見てきた私が保証するわ」
そしてその言葉を聞いてサラが肩を震わせ、ゆっくりと口を開く。
「私、知らなかった。メーリング、私の事見捨てたのかと思って──」
サラの瞳にうっすらと涙が現れる。
「あなたに非は無いわ。あえて教えなかったんだもの」
それでもサラはメーリングに突っかかる。
「でも、まだ、腑に落ちない。どうして彼らから手を切ったりしないの?」
「無理よ。人質に取られているもの。私が裏切ったら街のみんなに何をしでかすかわからないわ。いまはまだ、私がにらみをきかしているから大丈夫だけれど──。それに……、見せてあげるわ」
そう、見せたのは彼女が、天使「バルトロ」に精神を支配されている姿。はじめ、説明をしたときは、みんな半信半疑だったり、どうにかならないかという声もあったが
「どう、わかった?」
幸一以外は初めて見るその姿に、全員が絶句してしまう。
レイプ目のように輝きを失った目。メーリングから放たれる、人間ではありえない強いオーラ。
「メーリングさん……、怖い……です」
特に怖がっていたのはシスカ、もともと臆病な性格で縮こまり、体をびくびくとふるわせている。
「これでわかった? 私とあなたたちは分かりあえないの。戦うしか道は無いの」
「なんでよ、せっかく分かり合えたのに──」
イレーナが悔しそうな表情を見せる。目をそらし納得がいかないというそぶり。
そしてたった一人、ルチアはあきれるようにフッと笑う。
「あんたらしいって言えばらしいッス。器用でなくても、友を必死で守ろうとするところとか──」
そしてサラもどこか安心した様子を見せる。
「でも、ほっとした。メーリングに嫌われて、見捨てられたんだとずっと思ってた。私、弱いから──」
「サラ、あなたの事、決して忘れてはいないし見捨ててもいない。大切な親友だと、かけがえのない存在だと今もこの胸に刻んでいるわ。ただ一緒にいることが出来ないだけ、それだけよ」
微笑を浮かべながらメーリングが語る。
「わかった? サラ、決して私はあなたを見捨てているわけじゃないわ。」
「メーリング、ありがとう──」
「その気持ちは大切に受け取っておくわ。だから理解して、私と一緒にいることは出来ないってことを──」
メーリングが胸に右手を当て、微笑を浮かべながら答える。サラはうつむきながら首を縦に振る。
「……わかった」
明らかに納得がいっていないのが分かる。しかし今のサラに反論できる余地はない。例え感情的に言い返しても、それでは子供が駄々をこねているのと一緒。
今のサラに、出来ることはなかった──。
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