【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

静内 燕

第160話 メーリングの覚悟



一方、幸一達がつかの間の休暇をとっている頃。


一人の少女が眺めているのは貧困層が多く住んでいるスラム街。

肩までかかった黒髪。露出度の高い服にひときわ目立つ大きい胸。頭には犬耳。
メーリングだ。


この街は奇妙な部分が多い。
王都という事もあり大変栄えていて富裕層が暮らしている豊かな街だけでなく貧困層が住んでいるスラム街が存在する。

それ自体は珍しい事でないのだが、この街はそれがまるで隣り合わせになっているということ、そして宮殿の高い場所から見えるということだった。

メーリングは人より一回りも二回りも大きな胸を腕を組んで抱えながらじっと見ている。


強き者と弱き者。搾取する者とされる者。

この世界の表したようなこの景色がメーリングの視線の先、窓の外からも見ることができる構造になっているのだ。

この国では彼女が少女だった時からそういった傾向が生まれてきていた。
魔王軍との戦いや軍事への傾倒による軍事費の増大により財政はひっ迫。その結果増税を何度も行い、社会的に歪が出てしまっていた。

そして、貧困層が増えてしまい、それに比例するように彼らが住んでいる街は無尽蔵に広がっていく。

海と山に面している地形のため街を広げるにも限度があり、街の中で貧困層が暮らすエリアが増えてしまっているのだった。

ベランダから外に出るとそよ風が髪に当たり少し彼女の長い髪がなびく。

メーリングは街を見ながら先日の出来事を思い出す。
闘技場の戦いでは幸一相手に弱点である魔力と体力の消耗を突かれまさかのガス欠。

敗北寸前まで追い詰められた。ぎりぎり幸一も魔力が尽きて身動きが取れなくなったため事なきを得たものの今後は気を付けるよう強くとがめられた


メーリングはそんな街から視線を外し部屋の奥へ行く。
衣類を脱ぎ朝、日課となっているシャワーを浴び始める。
シャワーから出るお湯が彼女の皮膚を滴る。お湯は自分好みの熱めのお湯。

石鹸から泡を出して自分の手につける。

そしてその泡を全身の皮膚に自分の手で優しく塗るようにして肌をこする。

(やっぱり、タオルだと肌が傷つく、手の方がいい)

メーリングは肌が繊細な体質のため体を洗うときはタオルを使うと肌にダメージを受けてしまうため手に石鹸をすりつけて洗っているのだ。

そして石鹸で体を洗いシャワーで流す。


艶めかしい肌、水滴が滴りとても官能的な姿になっている。
そしてメーリングの視線にあるのは自らのまるで小さめのスイカのような大きい胸。

(正直コンプレックス。望む者に分け与えてあげたい)

そう考えながら両腕で抱きかかえる。
Iカップという通常よりかなり大きな胸とても目立つし下着が無いと少し走っただけで胸が揺れて痛い。

下着も通常の下着ではサイズが合わなくなり特注品の物を使用。

悩みを打ち明けても他の女子からは「自慢してんの?」「いいじゃない」とからかわれる始末。

(まあ、人を殺した事無い奴に人を殺した時の気持ちを聞いても分からないのと一緒か?)

おまけに男子達からの目線、同僚はもちろん上司や長官、相対して視線を感じなかった事はない。慣れたとはいえ鬱陶しいことこの上ない。

(私の体はお前たちの欲望のはけ口にするために あるんじゃねぇっつの……)

この前仕事で街に偵察に行ったときは小汚い中年男性に突然胸を鷲掴みにされたりもまれることだってあった。
荒挽きハンバーグにしてやろうかという衝動にかられた。もめ事を起こさないようにと政府から強く咎められていたためギリギリのところで持ちこたえたが。

(まあ、身体的にコンプレックスやハンデを抱えている人はいた。誰しも望んだものが手に入るわけじゃない。私は私のやるべき事をやるだけ──)

そう自分の中で折り合いを付けシャワー室を出る。身体を拭きバスタオルを身に付けシャワー室を出る。

(サラ、どうして帰って来たの?)

タンスから特注品の下着を取り出し身につけながら思い出す、幼少からの友との再会。


(サラ……、もう二度とここに来ることが無いような形で国外追放にしたはずなのに──)


ブラを手に取り自分の背中の部分でカチッとホックを留めた。そして脇のあたりに流れていた肉を寄せ集めるようにしてカップの中に突っ込んでいく。
自身の大きな胸がすっぽりとブラに包まれた。

自らの大きな胸をブラにセットすると下着をはきハンガーにかけてあった服を着る。

(あの勇者の仕業かしら。どの道私がやることは決まっている)

握りこぶしをしながら少女は誓う。

そのためには、命をかけることだっていとわないと──。

そしてメーリングはいつものトレーニングルームへ向かう。この間幸一につかれた弱点、同格以上の相手との実践不足。それを補うため国内から強力な冒険者を集めたと聞いた。

今度こそ負けないため、覚悟を決め彼女はその場所へ向かっていった。





夕方。
幸一とサラが息抜きをしていつものホテルの帰ってくる。

ルーデルとルチア、シスカとイレーナであった。

「いい情報が入った」

「何があった、ルーデル」

幸一とサラがつかの間の休息をとっている間、イレーナ達三人は郊外の森を歩いていた。

「そしたらある時偶然野生の動物を捕まえるハンターの人達と出会ったんです」

「うん、シスカちゃんの言う通りハンターの人と出会って話をしていたの。そしたらね──」

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