【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

静内 燕

第159話 仕事を忘れて

闘技場での出来事から一週間ほど。
闘技場からルチアとサラによって何とか帰還した幸一。体力的に消耗が激しく数日間まともに身動きできない状態だった。

そしてやっと体が動くようになり──。


「まあ、休養にはちょうどいいんだろうけどさ」

苦笑いをしながら幸一は囁く。
青い海、白い砂浜、この地は世界でも有数の美しいリゾートピーチ。
天気も快晴で青空が広がっている。

家族連れやカップルなどが楽しそうにキャッキャと海で遊んだり海岸で身体を焼いているのがみえる。
そんな中で海をじっと見ながら海岸でパラソルを日陰にしている幸一がいた。


今日は久しぶりの休養日、最近は仕事ばかりで息がつまるだろうということでルチアとシスカが提案した案だった。

彼はそんな暇はないと言って最初は否定していたがたまには休んだ方がいいとサラやイレーナが彼の休養の賛成に回り幸一の意思とは関係なく強引に彼の休養が決まっていしまったのだ。


ため息をつきながら海を見つめる短パン姿の幸一。メーリングを取り逃がしてしまったことが頭の片隅に残って気になってしまう。


「幸君、トロピカルジュース買って来たよ。一緒に飲もう?」

そこにサラが戻ってくる。緑色の水着姿、彼は以前不覚にも彼女の全裸を見てしまった時もそうだがあどけなく幼い顔つきだが胸は大きめで、つい視線を向けてしまう。
おまけに彼女の純白できれいな肌と緑色の水着がとてもあっていてサラの魅力をとても引き出していた。

かわいさときれいさをかねそなえている姿に思わず見とれてしまう。

そして話を聞くとどうやら出店でカラフルでおいしそうなジュースを見つけたらしく一緒に飲もうと買ってきたというのだ。

「あ、ありがとう」

すぐにサラの顔に視線を戻す、そして作り笑顔をしながらジュースを受け取る。
サラは幸一の隣に座りこむ、一瞬二人の腕が触れて二人がドキッとして顔を赤くする。

「あっ。幸君、その……ごめん」

「いやっ、こちらこそごめん」

そして二人は視線を海に戻しながら話し始める。

「やっぱり気にしているの、この前のメーリングの事」

「うん、もう少しだったんだけどな……」

先日の闇市の闘技場での事、二人の潜入がばれていてメーリングと戦うことになった幸一。想定外の強さに苦戦はしたものの何とか勝利をもぎ取った。しかし寸前で秘密警察の二人がやってきて取り逃がしてしまった。

おまけに彼女はサラの友達だったようで一層悔しさが残る結果になってしまったのだった。
右手を頭に触れながら今も取り逃がした時の光景が頭をよぎる。

「まあね──」

「気にしないで、誰だって失敗する時はあるよ」

「けど、サラの幼馴染でもあるんでしょう。あの人」

「うん。でも、気を取り直そう。次は成功すれば問題ないよ」

サラは幸一の方を向いてにっこりと微笑を浮かべる。彼女のあどけない顔つきの微笑に、思わず胸がドキッとしてしまう。

「あ、あの──」

「な、何?」

幸一もサラの方を向いて答える。

「励ましてくれてありがとう。何か元気が出たよ。次は絶対勝つ、だから協力してくれ」



「うん、私出来ることがあったら協力するね」

そういいながらサラは幸一に接近、互いの腕が密着する形になる。幸一はサラの腕が当たると顔をほんのりと赤く染める。
ぷにっとした柔らかな肌。

「だから、二人でこの仕事、絶対終わらせようね?」

サラの心の底からの本音。彼女だっていくら戦えないとはいえ幸一に守られてばかりなのは嫌だった。どこかで力になりたい、そんな想いが溢れた言葉でもあった。

そして互いに見つめ合い顔をほんのりと赤くしたその時──。

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!


「な、何?」

右側の方向から突然誰かの叫び声が聞こえ始める。二人は思わずその叫び声の方向に視線を向ける。

「な、何あれ???」

サラがその姿を見て愕然とする。中年くらいでひげを蓄えた男性が刃物を持って暴れまわっているのだ。

「ちょっと行ってくる」


幸一がすぐに立ちあがりその男の方向に向かっていく。そして自身の兵器を召喚。

「ていっ!!」

「ぐおああああああああああああ!!」

彼の身体に弱い遠距離攻撃を当てる。
ものの数秒で男は倒れ込みその痛みでのた打ち回る。

「あの男だ」

「捕まえろ!!」

すぐに警備の兵士がやってきてこの騒動は事なきことを得た。
二人は捕らえられた男の姿を見て動揺し互いに顔を合わせる。

そして幸一は警備の人に話しかける。

「すいません、なにがあったんですか? わかる範囲でいいので教えていただけるとありがたいのですが……」


すると腰に手を当てながら警備の兵士は答える。

「はい、最近多いんです。突然刃物を持って暴れたりする人が、それで何とかとらえて尋問をしてもよくわからない、突発的に感情を抑えられなかったとしか話さないんです」


困惑する二人、二人ともここに来たのは初めてで手掛かりなど無い。

「何か、あったのかな?」

「そうかもしれないね、サラ。頭に入れた方がいいかもしれない」

(闘技場の事件や秘密警察と何かかかわりがあるのだろうか)

何か事件の香りがする。そう感じながら二人の息抜きの時間は過ぎていった。

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