【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

静内 燕

第141話 激闘「トリシュ―ラ」、結束の力の結末

「分かりました、私がまず仕掛けます。そしたら二人は──」


その言葉にイレーナとルーデルは首を縦に振る。


そしてその話が終わり配置につくとシスカの怒涛の攻撃が始まる。



シスカの怒涛の攻撃、その瞬間イレーナとルーデルが急接近。たたみかけるように連続

「私の強さ、受け取ってください。聖なる加護の力、救済の矢となり怒号の力を上げよ!! テンペスト・アロー」


ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!


シスカの覚悟がつまったような連続攻撃。魔力を強く憑依させた矢をゲリラ豪雨のごとく大量にトリシュ―ラに向かって放つ。


グォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

トリシュ―ラはシールドを展開。強固なシールドによってシスカの攻撃は阻まれてしまう。しかし……。

「それでもいきます。壁があるならそれを壊すまで。いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

それでもシスカは攻撃をやめない。シスカにとって壁は打ちこわし乗り越えるもの、さらに魔力を強化、威力を増幅してトリシュ―ラに向けて放つ。

そして──。

身体を覆っていたシールドに亀裂が入る。そしてイレーナはやっとできた一瞬のスキを見逃がさなかった。


あの時、奇襲をくらって気を失ってしまい幸一がピンチになっているのに、青葉が自分の意思に反した事をされているのに自分は何もできなかった。

その悔しさ、自分の甘さを心の底に刻みながら、そしてもう自分が足を引っ張ったりしない。そんな思いを強く、脚に魔力を入れ思いっきり飛び上がる。

「うわあああああああああああああああああああああ」


ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ──!!


イレーナの全力の一撃、それがトリシュ―ラを引き裂く。断末魔の声を上げながら魔獣の肉体が切り裂かれていく。


ドォォォォォォォォォォォォォン!!

グォォォォォォォォォォォォォォォォ!!



あまりに巨大な咆哮に周囲に衝撃波が飛ぶ。
その衝撃に身体が軋む、しかし耐えられる範囲で動けなくなるほどではない。


シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。

「うそ? 再生し始めた??」

しかしそれも予想している。その瞬間、後方から巨大な魔力を感じ始めたイレーナは直撃を避けるため急降下──。


ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

シスカの力を込めた攻撃が「トリシュ―ラ」に直撃。防御もできず彼女の攻撃をまともにくらってしまう。



グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ──、ウガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ──!!

「す、すごい威力……」

茫然とつぶやくイレーナ。断末魔の声を上げながら悶え苦しむ「トリシュ―ラ」。そして……。


「トリシュ―ラが消えてる、勝ったんだ」


シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。

悪あがきをするように苦しみ悶えのた打ち回りながらイレーナの言葉通り「トリシュ―ラ」の肉体が蒸発するように消滅していく。
その姿を見てこの街の誰もが安堵の表情をしだす。

そしてイレーナは疲れ果てていたのか座り込む。そして隣にいるルーデルに話しかける。


「ルーデルさん、ごめんね。私誤解していたみたいあなたの事ひどい人だって」

「気にするな。どんな事を言われようが俺の決意は変わらない。どんな事を想われようが気にも留めていない」

その言葉にイレーナは彼の決意の強さを感じる。
そして一瞬目をつぶった後冷静な口調で自らの事を語り始める。

「俺は、魔王軍への怒りに取り付かれ過ぎて周囲を見ていなかった。その結果盲目になりいたずらに敵を増やしてしまっているということに気付かなかった」

ルーデルは特に不機嫌になったり表情を変えるような様子はない。ただいつものように無表情で淡々と言葉を発していく。


「それは、私も思いました。だから勇気を出して言ったんです。怒りを周囲に撒き散らすことが故郷を救う事じゃないって」


シスカは自信ありげに語り始める。自分と二人で行動していくうちに彼は変わっていったと──。

「最初は確かに近寄りがたい部分もありました。それで周囲と摩擦を起こしてうまくいかなくなってしまったこともありました」

「そうなんだ──」

「ああ、だがシスカは俺に訴え続けてくれた。本当の目的を思い出してほしいと」


イレーナは彼の性格を理解している。復讐に燃えるあまり周囲に強く当たってしまい敵を必要以上に作りがちだった。しかしシスカはそれでは自分も、みんなも誰も得しない。いがみ合ってしまうだけだと粘り強く必死に訴え続けたのだった。

そしてシスカは微笑を浮かべながらルーデルに視線を移し語り始める、彼が変わっていった様を。

「はい、彼は私の気持ちに答えてくれました。最初は何度も衝突していましたが次第に相手のことを理解してくれるようになりました。なので味方になってくれる人も増え魔獣との戦いもそれだけうまくいくようになりました。ルーデルさんが変わってくれたおかげです」


「おだてるな。俺に感情で動かぬよう、祖国への想いを思い出してほしいと俺が感情的になった時に何度も訴えてくれたのは貴様だ。感謝している」

イレーナがほっとする。




「聞いたところ俺達と目的は一致している。俺達だけで立ち向かっても限界がある事、それを薄々と感じてきたところだ。組まないか? 俺達と一緒に行動して共闘しよう」


イレーナに断る理由はなかった。二人は最初はいがみ合っていた、考え方も違うそれでも同じ世界を夢見ている。違いを理解し同じ目的のために戦うと決めた。
二人が強く手を握る。敵でなない、同じ目的のために戦う「戦友」だという事を伝えるために。

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