【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね
第135話 天使トマスの奇襲
そして運命の日。
魔王軍の襲撃の日となった。朝日が昇り始めること。街には緊張が張り詰め道は戦いに巻き込まれないため避難しようとする人でいっぱいだった。
手押し車で荷物を運ぶ商人。なく赤ちゃんをあやし、子どもと手をつないで街から離れていく家族連れ。
みな兵士や冒険者の勝利を願いながらこの街を去っていく。
そして宮殿の前。
兵士や冒険者達が整列し一つの人物に視線を集中させている。
確かにこれから私たちが迎える困難は今までよりはるかに険しく、過酷な物である。
そして彼らの前で勇ましい言葉を演説している人物が一名。
この国を束ねる省庁として君臨している国王様であった。この光景はこの国ではとても珍しい。というのも国王は普段は安全のため国民の前に見せることはなく。建国祭など余程特別な時のパレードくらいしか国民の前に現れないからだ。
いつもは顔を見せないからこそ今回は特別だということを示すためにあえて兵士達の前に顔を見せるという演出をしている。
普段の襲撃より規模が大きく強い敵が襲ってくるだろう。今回は国王から一般人一丸となって闘うということを直接示すために──。
無論それは狙いの半分でしかない、本当の目的は別の所にあるわけだが。
そして兵士と冒険者が起立の姿勢で話しを聞く中歩いて彼らやその周囲を歩いて観察する人達がいた。
表向きは国王様にテロを行う者がいないか見張っているという目的だ。しかしその言葉だと本当の目的の半分だろう。
そう、彼らの目的は見張るだけではないのだから──。
そして怪しいそぶりを見つけた物が一名。
(うん──、あの人。やっぱり怪しい)
その行為を見つけたのはサラだった。人々が熱狂に酔うなかそそくさと足音をたてずにその人物にちかづく。
その人物に自らの存在を悟られぬように背後から一歩一歩ゆっくりと接近。そして背後に忍び寄るとそっとその人物の肩に手を置く。
「幸一さんの世界から来た魔王軍のスパイ、あなたですね?」
サラの物柔らかながらも強気な言い方。その人物は特別驚いたり変な反応するようなそぶりはない。
冷静で落ち着いた態度。ゆっくりとそのフードをとる。そして胸に手を当てていた右手を掴み上に上げる。
金髪で長身の女性の姿。
特に青葉が──。
「あんた」
「素晴らしいじゃない。どうしてわかったの?」
一回前に回り込んだとき、片腕を露出せず服の中に隠している。服の中央に不審な穴があった。
その姿から怪しさを感じた青葉だった。
ここまでは幸一達の作戦通り。
幸一と国王が機密をこの場で大々的に話す。
敵はその情報を記録に残そうと躍起になるはず。いくら敵が強くて厄介だからと言って逃げてばかりいてはいくらこちらが安全でも相手を捕らえることは出来ない。リスクを追ってでもあえて敵を呼び寄せて捕まえるという作戦に出たのであった。
以前青葉が発見した青い板切れの噂。
それが彼女たちの世界に存在するスマートフォンならばどこかで記録するための操作をするはず。
「ポケットに手を入れ指を不自然に上下する人物がいたらすぐに身柄を確保、そのポケットから証拠品を現行犯で押収しよう」
この作戦の前に幸一が言っていた言葉、その作戦のため、周囲を青葉とサラが見回す。
「幸一さん、これが証拠品ですか?」
胸ポケットから素早く証拠品を抜き取る。
グロリアがサラを突き飛ばす。スマートフォンはサラの手から地面に落下。
幸一が素早く接近。
グロリアは証拠隠滅するためスマートフォンを踏みつけようとする。
接近していた青葉がとっさに飛びかかり突き飛ばす、そして落ちていたスマートフォンを押収。それをグロリアに見せるようにして言い放つ。
「チェックメイト、終わりよ」
確かに青葉の言う通り。スマートフォンに録画している動画を確認すれば彼女が魔王軍に内通していることが分かる。言い逃れのない証拠を手に入れてどこか勝ち誇った気分になる。
「さすが勇者さん、素晴らしいわ」
「でも50点って所かしら……、ちょっと爪が甘かったわね」
しかし彼女は微動だにしない。微笑を浮かべたままじっとしている。まるで買ったのは自分だと言わんばかりに……。
沈黙がこの場を支配する。その真意に始めに気付いたのはサラだった。
「この事態、想定してましたよね。みなさん何か来ます。気を付けてください」
(流石は青葉の親友って感じね。でも遅いわ)
グロリアがちらりと幸一に視線を移す。
すると突然背後に何者かの気配が現れる。
幸一がその気配に気づき振り向こうとした時にはすでに遅かった。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォ!!
白い衣に包まれた天使トマスであった。
そのまま幸一の後頭部に強烈な蹴りを入れる、突然の奇襲に幸一は対応できず攻撃が直撃、身体が吹き飛び壁に叩きつけられる
「幸君!!」
「甘ェェェンだよォォォ」
再びトマスは姿を消す。イレーナはトマスの姿が消え驚愕する。そして周囲をキョロキョロして彼女の姿を探す。
ドゴォォォォォォォォォォォ。
今度はイレーナの背後に突然現れる、イレーナの頭部に攻撃。
突然の事態にイレーナはそのまま気を失う。
幸一は倒れ込んだが何とかしようと立ちあがろうとする。
クラっ──。
しかし倒れ込んだまま体が石になったように動かない。その姿を見たグロリアがほくそ笑んで言い放つ。
「ダメよ三半規管がおかしくなっているもの、しばらくは身体を動かせないわ。じゃ、死んでもらおうかしら」
「死んでもらうぜぇぇ、クソ勇者ァァァ!!」
そして天使トマスは剣を持っている右腕を振り上げる。それを視界に入れている幸一。何とかしようと身体を起き上がらせようと必死にもがく。まるでチェーンが切れた自転車をいくら漕いでも進まないのと一緒。
指一つ身体を動かす事が出来ない。
そして彼の心がどうしようもない絶望で満たされそうになったその時──。
巨大な光の柱が現れる。
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。
そして光の柱には一人の人影。
ユダだった。ユダはトマスの剣を握っている右腕をつかむ。
「ふぉっふぉっふぉっ、お主も十分に甘いのう──」
魔王軍の襲撃の日となった。朝日が昇り始めること。街には緊張が張り詰め道は戦いに巻き込まれないため避難しようとする人でいっぱいだった。
手押し車で荷物を運ぶ商人。なく赤ちゃんをあやし、子どもと手をつないで街から離れていく家族連れ。
みな兵士や冒険者の勝利を願いながらこの街を去っていく。
そして宮殿の前。
兵士や冒険者達が整列し一つの人物に視線を集中させている。
確かにこれから私たちが迎える困難は今までよりはるかに険しく、過酷な物である。
そして彼らの前で勇ましい言葉を演説している人物が一名。
この国を束ねる省庁として君臨している国王様であった。この光景はこの国ではとても珍しい。というのも国王は普段は安全のため国民の前に見せることはなく。建国祭など余程特別な時のパレードくらいしか国民の前に現れないからだ。
いつもは顔を見せないからこそ今回は特別だということを示すためにあえて兵士達の前に顔を見せるという演出をしている。
普段の襲撃より規模が大きく強い敵が襲ってくるだろう。今回は国王から一般人一丸となって闘うということを直接示すために──。
無論それは狙いの半分でしかない、本当の目的は別の所にあるわけだが。
そして兵士と冒険者が起立の姿勢で話しを聞く中歩いて彼らやその周囲を歩いて観察する人達がいた。
表向きは国王様にテロを行う者がいないか見張っているという目的だ。しかしその言葉だと本当の目的の半分だろう。
そう、彼らの目的は見張るだけではないのだから──。
そして怪しいそぶりを見つけた物が一名。
(うん──、あの人。やっぱり怪しい)
その行為を見つけたのはサラだった。人々が熱狂に酔うなかそそくさと足音をたてずにその人物にちかづく。
その人物に自らの存在を悟られぬように背後から一歩一歩ゆっくりと接近。そして背後に忍び寄るとそっとその人物の肩に手を置く。
「幸一さんの世界から来た魔王軍のスパイ、あなたですね?」
サラの物柔らかながらも強気な言い方。その人物は特別驚いたり変な反応するようなそぶりはない。
冷静で落ち着いた態度。ゆっくりとそのフードをとる。そして胸に手を当てていた右手を掴み上に上げる。
金髪で長身の女性の姿。
特に青葉が──。
「あんた」
「素晴らしいじゃない。どうしてわかったの?」
一回前に回り込んだとき、片腕を露出せず服の中に隠している。服の中央に不審な穴があった。
その姿から怪しさを感じた青葉だった。
ここまでは幸一達の作戦通り。
幸一と国王が機密をこの場で大々的に話す。
敵はその情報を記録に残そうと躍起になるはず。いくら敵が強くて厄介だからと言って逃げてばかりいてはいくらこちらが安全でも相手を捕らえることは出来ない。リスクを追ってでもあえて敵を呼び寄せて捕まえるという作戦に出たのであった。
以前青葉が発見した青い板切れの噂。
それが彼女たちの世界に存在するスマートフォンならばどこかで記録するための操作をするはず。
「ポケットに手を入れ指を不自然に上下する人物がいたらすぐに身柄を確保、そのポケットから証拠品を現行犯で押収しよう」
この作戦の前に幸一が言っていた言葉、その作戦のため、周囲を青葉とサラが見回す。
「幸一さん、これが証拠品ですか?」
胸ポケットから素早く証拠品を抜き取る。
グロリアがサラを突き飛ばす。スマートフォンはサラの手から地面に落下。
幸一が素早く接近。
グロリアは証拠隠滅するためスマートフォンを踏みつけようとする。
接近していた青葉がとっさに飛びかかり突き飛ばす、そして落ちていたスマートフォンを押収。それをグロリアに見せるようにして言い放つ。
「チェックメイト、終わりよ」
確かに青葉の言う通り。スマートフォンに録画している動画を確認すれば彼女が魔王軍に内通していることが分かる。言い逃れのない証拠を手に入れてどこか勝ち誇った気分になる。
「さすが勇者さん、素晴らしいわ」
「でも50点って所かしら……、ちょっと爪が甘かったわね」
しかし彼女は微動だにしない。微笑を浮かべたままじっとしている。まるで買ったのは自分だと言わんばかりに……。
沈黙がこの場を支配する。その真意に始めに気付いたのはサラだった。
「この事態、想定してましたよね。みなさん何か来ます。気を付けてください」
(流石は青葉の親友って感じね。でも遅いわ)
グロリアがちらりと幸一に視線を移す。
すると突然背後に何者かの気配が現れる。
幸一がその気配に気づき振り向こうとした時にはすでに遅かった。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォ!!
白い衣に包まれた天使トマスであった。
そのまま幸一の後頭部に強烈な蹴りを入れる、突然の奇襲に幸一は対応できず攻撃が直撃、身体が吹き飛び壁に叩きつけられる
「幸君!!」
「甘ェェェンだよォォォ」
再びトマスは姿を消す。イレーナはトマスの姿が消え驚愕する。そして周囲をキョロキョロして彼女の姿を探す。
ドゴォォォォォォォォォォォ。
今度はイレーナの背後に突然現れる、イレーナの頭部に攻撃。
突然の事態にイレーナはそのまま気を失う。
幸一は倒れ込んだが何とかしようと立ちあがろうとする。
クラっ──。
しかし倒れ込んだまま体が石になったように動かない。その姿を見たグロリアがほくそ笑んで言い放つ。
「ダメよ三半規管がおかしくなっているもの、しばらくは身体を動かせないわ。じゃ、死んでもらおうかしら」
「死んでもらうぜぇぇ、クソ勇者ァァァ!!」
そして天使トマスは剣を持っている右腕を振り上げる。それを視界に入れている幸一。何とかしようと身体を起き上がらせようと必死にもがく。まるでチェーンが切れた自転車をいくら漕いでも進まないのと一緒。
指一つ身体を動かす事が出来ない。
そして彼の心がどうしようもない絶望で満たされそうになったその時──。
巨大な光の柱が現れる。
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。
そして光の柱には一人の人影。
ユダだった。ユダはトマスの剣を握っている右腕をつかむ。
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