【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

静内 燕

第129話 極秘の作戦、そしてデート

「まあ、それまで私がいたらだけどね……」

青葉が誰にも聞こえない声でぼそっとつぶやく。誰にも聞こえないような小さな声。何を意味しているのだろうか──。



そう呟きながら四人は再び寝付く。そしてユダの作戦のために動き始めるのだった。












翌日、ユダとの作戦を決行するために早速幸一は動き始めた。

キィィィィィィィィィィィィィィ──。


「こんにちは、ちょっといいですか?」

「はい?」

以前ギルドでお世話になったレイとローザンヌだった。普段は郊外で仕事をしているがそういった仕事がない時は町工場などで生活用品を作ったりしていて小銭稼ぎをしていた。

「幸一さん、何か用ですか?」

「それでさ、ちょっと作ってほしいものがあるんだ」

レイの言葉に幸一は反応しその注文品の指示書を見せる。普段の家具とは違う特注品に二人が首をかしげる。

「これなら何とか作れそうです。ただ聞いたことないですねこんな作り。何かあったんですか?」

「まあね。ちょっと今は言えないけど事がすんだら説明するよ」

変な疑いは持たれたが何とか首を縦に振ってくれた。


「無茶なお願いを聞いてくれてありがとう。頼むよ──」

「……分かりました」

とりあえずユダの作戦を実行するための壁は成功。そして次の目的地へ足を進めはじめた。



歩いて1時間ほどで幸一はその場所に到着。
場所は市街地から少し離れた噴水のある公園。時々子供たちが遊んでいる声が漂う静寂した雰囲気。
そして一人の聞きなれた少女の声が幸一の耳に入る。




「幸君お待たせ~~。待った?」

「いいや、待ってないよ。今日はよろしくね」

ベンチに座っている幸一の背後。現れたのはサラだった。

「じゃあ出発しようか。場所はわかる?」

「うん、地図は持ってきたから大丈夫。ここから北にあるこの場所ね」

サッ──。

そう言ってサラはポケットから1枚の地図を取り出す。そしてそれを隣にいる幸一に渡す。

「ありがとう。ここが今回二人で行くところなんだね」

「うん。この市場。でもこれ、何かデートみたい……」


サラの言葉に幸一は一瞬ドキッとする。幸一は先日イレーナとデートしたばかり。
何故二人はデートのような事をすることになったのか、それは先日幸一の元にユダが来た時彼女が提案した作戦がきっかけであった。



ユダがそこで提案した作戦。それは──。





「とりあえず、今度市場で商人たちが集まる市場があるようじゃ。しかしそう言った場所では時として違法な薬物の取引などの温床にもなりかねない。今回はそれを二人で見回りして警備をみるのじゃ。それもただ行くのではなく夫婦という設定で」



「夫婦──、ってええっ???」



夫婦役という設定にサラは驚愕。周りもその言葉に唖然とする。しかしユダは冷静にその理由を説明する。

「ま、こうなったのには理由がある。アストラに行く時のための練習と考えればよい」

「あ──、そういうことね」

話を聞いて青葉がその意味を理解する。ユダは意味がわかった青葉の方向を向いてニヤッとしてさらに話を続ける。

「いきなり夫婦役うまくいくわけがない。必ずどこかでぼろが出る事だろう。何事も練習が大事じゃ。ちょっと女神仲間から闇市の情報を聞いてのう。そこに商人の夫婦役として侵入してほしいのじゃ」

「えええっ、サラちゃんと夫婦役……」


イレーナはの言葉に再び不機嫌な表情になる。どうしても感情的に抵抗が出てきてしまうようだ。明らかにテンションはガタ落ちになる。

「まあまてイレーナ殿。お主にも頼み事はある。青葉殿と二人を遠くから見張って欲しいのじゃ」


やはり納得がいかないイレーナ。そしてユダは今度は青葉に視線を向ける。

「次は青葉殿じゃが……」

「はーい。ユダちゃん、わかった。私が二人を陰から見守りつつイレーナちゃんをおもりして陰から見守る事について教えればいいのね」

「そうじゃ。勘が良くて助かるのう」

青葉は察しがついたのか手を上げて承諾。
あと返事が返ってこないのは一人、ユダはその少女イレーナにちらりと視線を見ける。

「あとはお主じゃイレーナ殿」



「……わかった。やる」



嫌々ながらもイレーナは首を縦に振る。イレーナは仮にも人々の上に立つ王女様だ。
人々のために戦いという使命感が勝つ。納得がいかない表情だが最後にはみんなの事を考え首を縦に振った。

幸一はそれを信じていたしサラと青葉もそれは理解していた。
それをまじまじと見ていたユダが作り笑いを浮かべる。

「ではそういう事で頼むぞい」

そんなことがあって二人は夫婦役として街を歩く。

「幸君は、どう。やっぱりイレーナちゃんの方が良かった?」

「まあ、確かにそうかな。でもサラにはサラの良さがある。だから悪かったなんて思ってないよ」

「幸君、気づかいありがとう」

二人はたわいもない会話を楽しみながら道を進む。日頃のトレーニングの事。食べ物のこと。元の世界の事。

そして会話を楽しみながら30分ほど。無事に目的地である3丁目の商店にたどり着く。

建物の中に入った二人。その初めて見る光景に思わず驚きの声が上がる。

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