【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

静内 燕

第116話 決戦

(この二人には、絶対に負けるわけにはいかない!!)

一方イレーナと幸一は再び見つめ合う。この力を手に入れてやることは一つしかないと確認する。

「ペドロ、覚悟しろ!! もう許さない!!」


「だがバカめ!! こっちだってまだ手段はある」

だがペドロも譲らない。老獪かつ経験深い彼女は常に最悪の状況を想定している。もちろん今回も、イレーナが初語龍の力を手に入れることも──。


「さあ、秘密兵器のお出ましだよ」

ピッ!!

スッ──。

ペドロが指をはじく。そして物陰から一人の少女が出てくる

「レイカ!!」

イレーナが懸命に叫ぶがレイカは返事をせず虚ろな目をしていて焦点が合っていない。
何かがおかしいのは明白だった。

「レイカ、そいつの元から離れて!!」


「イレーナ……、国王、私はお前を許さない!!」

「どういうこと?」

イレーナが困惑する。確かに彼女は国王に良い感情を持っていない、しかしペドロへの怒りはそれ以上のはず、それに彼女の肌に紫の模様が浮かんでいる。

(何かの力が働いているな……)


「とある一部の感情を操作させているのでしょう。恐らくはイレーナや国王への憎しみだろうと思われます。そして一部の人物への感情を封鎖されているのでしょう」

アーネルの助言を聞くイレーナ。感情の封印、そんな物は自身の中で聞いたこともないようでとても信じがたいという表情をしている。

しかしこれは正論でレイカ自身もどうすることもできなかった、どれだけ自分の感情を抑えようとしても瞬きをするようにイレーナと国王への殺意が湯水のようにわいてしまう。本当はペドロに敵意を向けなければならないのに頭でわかっていてもその感情を出そうとした瞬間蒸発するように無くなってしまっている。

「お前、さっきの龍の力だけじゃない。何か特殊な力を持っているな?」

「御名答。言ってなかったかい? 私はこの近くの村に住んでるってね。恐らく私の先祖は遺跡に関わる行いをしていたんだろう。私はその末裔ってことさ」

「つまり龍の力をかなり使えるってことか」

睨みつけながらの幸一の質問にもびくともしない。それほど自信に満ちているのであろう、自身の実力に──。

「魔王軍も街に現れているって聞く。俺達には戦うしか選択肢は無い」

「うん」

二人が小声で話し決断する。相手が強くても、戦うのは今しかないと──。
幸一とイレーナは同時に力をまっすぐにペドロへ向かっていく。

「行くよ、イレーナ!!」

「うん!!」

スッ!!

イレーナは即座に呼吸を整え槍を構える。
10回以上の連撃をペドロが襲う。しかしペドロが瞬時に発動させた障壁の前にすべて防がれてしまう。

「フッ、そんなお遊戯みたいな攻撃。あたいには通用せんよ」

得意げな口調で言い放つペドロ。

「そいつはどうかな」

「あぁ?」

余裕そうな笑みを見せる幸一。ペドロは一瞬とまどったような表情を見せる。そして何かが来ると直感で判断し防御の構えを見せる。

幸一も彼女の実力を想定していた。

願いをとどかせし力、逆縁を乗り越え、踏み越えし力現出せよ

バーニング・ブレイブ・ネレイデス

ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

青い炎が幸一のエクスカリバーから出現しこの場を包み込むような大爆発が起こる。
しかしその攻撃は正面から来るものではなかった。

四方八方に攻撃を分散させたのだ。ペドロの障壁は正面のみ、これなら攻撃は届く。
慌ててペドロは障壁を前方だけでなく四方八方全ての方向に出現させたのだった。
その障壁によって幸一の術式は防がれる。


そして四方に魔力が分散した分正面の障壁は薄くなる。イレーナがそれを理解。そして──。

時空を超える力、今友のため敵をせん滅し救いの力となり、定めを超える閃光貫け
ヘリオポーズ・イクシオンブラスター・スプレマシー・ノヴァ


自信の槍に魔力を込めての一撃、決まるかと思われたその時。





「私もいるわ──」

横からレイカがさっと現れる。レイカがイレーナの攻撃を受けきると自身の剣

魔力を伴った球状の攻撃がマシンガンのように何百発も放たれる。
彼女の攻撃が二人を襲う。




「なんていう威力だ──。くらってたら終わってたな──」

「今終わらせてやるよ!!」

ペドロもそこに突っ込んでくる。決して連携が取れているわけではなかったが、圧倒的な力を生かして荒削りに攻勢を仕掛ける。
何とかかわしていた二人だったがそれも長くは続かず──。

ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

「ぐわぁぁぁぁぁぁっ」

それも長くは続かず倒れこみ追い詰められる二人。二人も初語龍によって強力な力生えていた。しかしペドロとレイカの力はそれよりもはるかに桁違いだった。






そしてイレーナが壁に書いてあった文字を解読し始める。

全てを守りし「しょごりゅう」勇者のもとに降臨せん。

全てを救いし闇の力。正しき人のもとに現る。





「お願い初語竜!! レナちゃんの心を取り戻して!!」

そしてその想いを受け取ったかのように化石と化していた龍の銅像が光り出す。

「うわあああああああああああああああ」

イレーナが自身の体に魔力を込める、するとそれに反応したかのように壁画に強力な魔力がともり始める。


グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

          

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品