【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね
第101話 パーティーの陰で
「ああ、イレーナか」
今度はイレーナがこっちに来て兄に話しかける。
しかしイレーナが話しかけるとどこか不機嫌そうになり淡々とした口調になる。
そもそもイレーナと言う国王直系の娘がいるのになぜ養子の人物をこのノーム共和国の後継者としたのか。この国の歴史から見ても女性が家系を継ぎ女王となるケースも時折あり女性が後継者となること、この世界では男女差別がそこまで強く無いうえここの国王もそれほど差別的な思考があるわけでもない、それほど抵抗が思えない。
イレーナがこの地方でも、王都でも後継者となれない理由──。
謎は深まるばかり、だがあったばかりの相手に直接聞くのも早々だと考え
サラや青葉もいろいろな貴族の人達と会話を楽しんでいた。会話を楽しみつつもただ話すだけでなくいろいろこの街のことや教会、人々の暮らしなどを聞いて少しでも多くの情報を集められるよう努力を怠らなかった。
そしてお開き間際、幸一が青葉とサラに話しかける。
「イレーナってさ、父さんや兄さんと何かあったの?」
「ううん、そう言えばイレーナ、あんまり家族の話とかしないかな──。あまり触れてほしくないのか」
「私も、あんまり聞いたことがないです。一度聞いたことがありますけど形式的に答えるだけでどこか腫れ物みたいに扱っているという感じでしたね──」
青葉とサラの言葉、幸一は考える。何か深い事情がありそうだと。そんなことを考えているとイレーナがやってきて話しかける。
「巡礼祭、参加しないかだって今お父さんが言ってた。一緒に行くよね」
一年に一度、この街にある天使たちを崇拝している教会。そこの一番の行事であること、魔王軍の襲撃、そのことから当然参加することを決めた幸一。
首を縦に振る。
「当然参加するよ、青葉とサラもね」
「わかった、そう伝えとくね──」
イレーナは再び父親の方へ向かっていく。
こうして幸一達は貴族の人たちと会話をするなどして一夜を過ごしていった。
幸一達がパーティーで貴族達と交流を楽しんでいる傍ら、とある場所では闇がうごめき始めていた。
街の郊外にある豪邸。周囲からは街の商人の家であったがもう一つ裏の顔がある。
人気が少ないところだけあってそこは密談をするのであれば、権力者や邪な考えを持つには最適で安全な場所だった。
「とりあえず、作戦は成功しそうなのかい?」
ろうそくが数本、何処か薄暗い小さめの部屋。その場所で3人ほどの人物が気づかれる事を考慮して小さな声で会話していた。
「ああ、前準備はばっちりだ。政府にも特に気付かれている様子は無い」
「俺達を見捨てた奴らにひと泡吹かせてやらないといけないねぇ」
ローブに纏った彼の陰から発せられるのは、この街の空気のように冷たい口調。
この宗教の一部の過激派、十字兵と呼ばれる集団であった。
彼らは教会に意見する人物達に対して神様のためと主張し、命を顧みない自爆テロまがいの行為や暴力を行うなど過激な活動を行っている。
その結果教会からは異端者と認定され教会への出入り禁止、崇拝の禁止などの厳罰に処され事実上の教会からの破門を叩きつけられた。
天使たちを信じない愚か者と言う思想。敵は初めは教会に反抗する者や政府の関係者であったが、教会から厳罰を処されてからは教会や信者も攻撃の対象になっていった。
そしてここにはその集団の重要人物にして3幹部と呼ばれた人物。
その一人魔術師のような黒いローブを身にまとった妙齢の女性、団長であったペドロが腕を組みながら部下に話しかける。
「しかしあんたたち大丈夫かい、今回の巡礼祭いろんな奴が参加するって聞いたぞ。たしかこの国で一番の実力者が来るって聞いたが──」
「レイカってクソガキか?」
坊主頭で長身、筋肉質の男性、デュラグが反応する。もう一人、長髪で痩躯の若い青年の幹部アルメロが部下から事前に得た情報を思い出す。
「そいつもそうだが今回は本国からイレーナや他の勇者ってやつも来るそうだ」
「所詮いくら力があってもガキだ──、経験も老獪さも無い。ちょっと策を練れば」
この女団長は魔法使いとしての実力もさることながら、その強さは巧妙かつ老獪な戦術、手段を選ばず目的のためならどんな事も遂行する執念にある。その実力になった犠牲者は数知れない。
腕を組み穏やかな表情で不敵な笑みを見せながら彼女は話を進める。
世間知らずのお嬢様とどこから来たかもわからぬ勇者、そんな若造に負けるわけにはいかない。
俺達は生まれつき不遇な存在にあった。懸命にそれをひっくり返そうと努力を続けていた。
しかし英雄になるまでの実力は無く今の立場に収まってしまっていた。
戦いでは政府の軍部関係者から教徒と言うことで疎まれ危険な最前線への任務に優先的に送り込まれる。
その結果たくさんの部下達を見殺しになってしまった。
失った部下達の中、悲しみにくれながら3人は決意をする。
見捨てられた部下達のために、全てに復讐すると誓う。
「そいつらにひと泡吹かす、俺達の決意だ」
「ああ、政府の奴らに、教会の奴らに俺達の力を見せてやらないとな」
自分たちを見捨てた人物達、政府の奴らへの復讐そのために彼らは戦う。
「勇者、王女様、そしてレイカ──。どんな相手がこようが私たちがやることは変わらないね」
この先の巡礼祭、それを暗示する様な闇の空がこの街を包んでいた。
          
今度はイレーナがこっちに来て兄に話しかける。
しかしイレーナが話しかけるとどこか不機嫌そうになり淡々とした口調になる。
そもそもイレーナと言う国王直系の娘がいるのになぜ養子の人物をこのノーム共和国の後継者としたのか。この国の歴史から見ても女性が家系を継ぎ女王となるケースも時折あり女性が後継者となること、この世界では男女差別がそこまで強く無いうえここの国王もそれほど差別的な思考があるわけでもない、それほど抵抗が思えない。
イレーナがこの地方でも、王都でも後継者となれない理由──。
謎は深まるばかり、だがあったばかりの相手に直接聞くのも早々だと考え
サラや青葉もいろいろな貴族の人達と会話を楽しんでいた。会話を楽しみつつもただ話すだけでなくいろいろこの街のことや教会、人々の暮らしなどを聞いて少しでも多くの情報を集められるよう努力を怠らなかった。
そしてお開き間際、幸一が青葉とサラに話しかける。
「イレーナってさ、父さんや兄さんと何かあったの?」
「ううん、そう言えばイレーナ、あんまり家族の話とかしないかな──。あまり触れてほしくないのか」
「私も、あんまり聞いたことがないです。一度聞いたことがありますけど形式的に答えるだけでどこか腫れ物みたいに扱っているという感じでしたね──」
青葉とサラの言葉、幸一は考える。何か深い事情がありそうだと。そんなことを考えているとイレーナがやってきて話しかける。
「巡礼祭、参加しないかだって今お父さんが言ってた。一緒に行くよね」
一年に一度、この街にある天使たちを崇拝している教会。そこの一番の行事であること、魔王軍の襲撃、そのことから当然参加することを決めた幸一。
首を縦に振る。
「当然参加するよ、青葉とサラもね」
「わかった、そう伝えとくね──」
イレーナは再び父親の方へ向かっていく。
こうして幸一達は貴族の人たちと会話をするなどして一夜を過ごしていった。
幸一達がパーティーで貴族達と交流を楽しんでいる傍ら、とある場所では闇がうごめき始めていた。
街の郊外にある豪邸。周囲からは街の商人の家であったがもう一つ裏の顔がある。
人気が少ないところだけあってそこは密談をするのであれば、権力者や邪な考えを持つには最適で安全な場所だった。
「とりあえず、作戦は成功しそうなのかい?」
ろうそくが数本、何処か薄暗い小さめの部屋。その場所で3人ほどの人物が気づかれる事を考慮して小さな声で会話していた。
「ああ、前準備はばっちりだ。政府にも特に気付かれている様子は無い」
「俺達を見捨てた奴らにひと泡吹かせてやらないといけないねぇ」
ローブに纏った彼の陰から発せられるのは、この街の空気のように冷たい口調。
この宗教の一部の過激派、十字兵と呼ばれる集団であった。
彼らは教会に意見する人物達に対して神様のためと主張し、命を顧みない自爆テロまがいの行為や暴力を行うなど過激な活動を行っている。
その結果教会からは異端者と認定され教会への出入り禁止、崇拝の禁止などの厳罰に処され事実上の教会からの破門を叩きつけられた。
天使たちを信じない愚か者と言う思想。敵は初めは教会に反抗する者や政府の関係者であったが、教会から厳罰を処されてからは教会や信者も攻撃の対象になっていった。
そしてここにはその集団の重要人物にして3幹部と呼ばれた人物。
その一人魔術師のような黒いローブを身にまとった妙齢の女性、団長であったペドロが腕を組みながら部下に話しかける。
「しかしあんたたち大丈夫かい、今回の巡礼祭いろんな奴が参加するって聞いたぞ。たしかこの国で一番の実力者が来るって聞いたが──」
「レイカってクソガキか?」
坊主頭で長身、筋肉質の男性、デュラグが反応する。もう一人、長髪で痩躯の若い青年の幹部アルメロが部下から事前に得た情報を思い出す。
「そいつもそうだが今回は本国からイレーナや他の勇者ってやつも来るそうだ」
「所詮いくら力があってもガキだ──、経験も老獪さも無い。ちょっと策を練れば」
この女団長は魔法使いとしての実力もさることながら、その強さは巧妙かつ老獪な戦術、手段を選ばず目的のためならどんな事も遂行する執念にある。その実力になった犠牲者は数知れない。
腕を組み穏やかな表情で不敵な笑みを見せながら彼女は話を進める。
世間知らずのお嬢様とどこから来たかもわからぬ勇者、そんな若造に負けるわけにはいかない。
俺達は生まれつき不遇な存在にあった。懸命にそれをひっくり返そうと努力を続けていた。
しかし英雄になるまでの実力は無く今の立場に収まってしまっていた。
戦いでは政府の軍部関係者から教徒と言うことで疎まれ危険な最前線への任務に優先的に送り込まれる。
その結果たくさんの部下達を見殺しになってしまった。
失った部下達の中、悲しみにくれながら3人は決意をする。
見捨てられた部下達のために、全てに復讐すると誓う。
「そいつらにひと泡吹かす、俺達の決意だ」
「ああ、政府の奴らに、教会の奴らに俺達の力を見せてやらないとな」
自分たちを見捨てた人物達、政府の奴らへの復讐そのために彼らは戦う。
「勇者、王女様、そしてレイカ──。どんな相手がこようが私たちがやることは変わらないね」
この先の巡礼祭、それを暗示する様な闇の空がこの街を包んでいた。
          
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