【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

静内 燕

第85話 圧倒的な力

しかし幸一の答えは決まっていた、迷いなどない。へイムをじっとにらみながら言葉を返す。


「だが、それでも戦わなきゃいけない。願い下げだ──。そんな言葉」

「そうか、では戦おう。蛮勇なるものよ!!」

へイムはそれが予想しきっていた答えだったかのように何の驚きもなく言葉を返す。
そして魔力を体に纏うため。右手を天に向かってあげ魔力を込める。

その時──。
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

すさまじいオーラ、ここにいる全員が圧倒されそうになる。
幸一もそんなオーラのプレッシャーを感じながら自身の体に魔力を供給し始める。

久遠なる世界の彼方から、混沌ある世界に閃光を貫き──、降臨せよ!!
グローリアス・ソウル・エクスカリバー

そしてその兵器が召喚された時──。

「幸君、何であんなに魔力を発しているの?」

イレーナが疑問を持つ。いつも幸一に寄り添っているからわかる。彼から放たれている魔力が通常よりはるかに多い。

青葉が答える。

「魔力の供給をいつもより相当あげてるわ。普段の3倍ってことかしら」

「そんなことをしたらすぐに魔力が尽きちゃうじゃない」

供給する魔力が3倍ということは魔力が尽きる速さも3倍になると言う事だ。何故そんなことをするのか、青葉とルトは理解していた。

「私にはわかるわ。幸君が何でそんなギャンブルのようなまねに走ったか」

「そうでもしなきゃ、まともな戦いにならない──」

ルトと青葉の言葉は正しかった。圧倒的な実力差を理解した

「幸君──」

イレーナとサラはただ願う。勇者の勝利を。

幸一は感じていた。

ただ怖い──。

その視線から来るプレッシャー。それを感じるだけで額に冷や汗が浮かび上がり身体が震えあがる。

今までの魔法使いや大型魔獣など違う、初めてここまで怖いと思う戦い。
しかし恐怖心を超えプレッシャーに正面から向かい合う。

そして戦いが始める。
光のような圧倒的な素早さでへイムが間合いを詰めていく。

そして──。

ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ。




初めて見る肉眼で捕らえられないほどの速さの斬撃。
瞬時に後ろに身をひるがえす。

(さすが世界最強、規格外過ぎる。一瞬でも気を抜いたらすぐに負ける)

魔力の供給を3倍に上げると言う作戦は成功だった。通常の魔力ではこの閃光のごとき攻撃についていけずに5秒で勝負は決まっていただろう。

しかし戦いは止まらない。

へイムはさらに攻撃を続ける、この剣を薙ぎ払い、突き、そして意表をついた足蹴り。
どれもが規格外の速さと強さを持っていた。
時には後方に身体を投げて決死の防御に徹する。

一撃で有効打をくらえばそれが決定打となり勝負はついてしまう。そんな戦いであった。



「す、すごい。これが世界最強──」

「これ、唯一王さん負けちゃうんじゃ」

周りの冒険者たちはへイムの圧倒的な強さに驚愕する。幸一も何とか守備に専念し攻撃をかわしていく。


「唯一王、守ってばかりじゃねえか」

周りからもヤジが飛ぶ。するとへイムは立ったまま全く追撃をしなくなる。

「ふむ、魔力もそうだが剣術も駆け引きも相当なものがある。よくある才能と生まれ持った魔力にかまけた四流とは違うようだ」

自分が負けるはずがないという自信に満ちた尊大な態度。余裕ぶった言動、幸一はそんな言葉を聞いても全く喜ばない。実際に手合わせをしただけで実力の差がはっきりと理解した。

(守ってばかりじゃ押し込まれるだけだ。これじゃあすぐに崩される。多少リスクを負っても攻めないと)

彼は再び攻めに転じる。幸一は守っているだけでは押し切られると感じ守るのではなく攻めに転じる。
へイムが幸一に向かって切りかかってくる。

そして右足に魔力を込めて一気に踏み込もうとし──。



(まずい──!!)



身体をすぐに引き戻した。

(振りの速さも威力も違いすぎる、そのまま行ってたら攻撃を受けて勝負がついていた)

一瞬でも気を抜いたらそこで勝負終了だということを理解。防御に専念する以外のすべての行動を断念。

彼の桁違いの威力、桁違いの速度を誇る攻撃を誇る攻撃を何とか防ぐ。並の冒険者であったら5秒で勝負がついていたであろう攻撃を何とか切り抜けていく。


(太刀筋、技術、そして防御に徹すると言う作戦。悪くは無い──)

しかしへイムにとってはそれは日常、特に問題ではない。そして攻略法も用意していた。

ガードしていることなどお構いなしに数発のジャブのような攻撃を入れる。
幸一が剣でガードをしているとへイムが突然術式に力を込め始める。その力、数倍の威力。
予想外の強さに対応できず、のけぞる体制になる幸一。

(しまった──)

へイムにとっては守りを固めた相手を崩すのはほとんど習慣のようなものでありただの流れ作業であった。
無防備になった幸一に蹴りを入れる。意表を突く攻撃に幸一はかわしきれず後方に吹き飛ぶ。宙に浮いてしまう。

「守りに入るか。凡人の発想だな──。そんな貧相な発想ではこの私を倒すはおろか一撃を入れることもできぬぞ!!」

「終わったわ」

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