【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

静内 燕

第74話 サヴィンビへ

大型馬車で幸一は次の魔王軍の襲撃先である南方のサヴィンビへと馬車で向かっていった。
先日大聖堂の真実の焔。そこでは今度の襲撃は王都のネウストリアではなく地方都市のサヴィンビであると記された。
そこは地方の貴族達が実権を握っていて中央政府の力が及んでいない。そのため襲撃の前に他地方の冒険者の受け入れや作戦などを行う必要があるため幸一、イレーナ、サラ、青葉がこうして先行して向かっているのであった。


王都のネウストリアを出発した幸一達。馬車で南下する事丸三日。

景色は草原地帯や穀倉地帯から徐々にうっそうとしたジャングル地帯に進んでいく。
道も今までの様な整備された道から徐々に狭くて分かりずらいものになっていく。


「ここからがジャングルね」

青葉の言葉通りここから先は樹海のようにうっそうとしたジャングルが広がっている地帯に入る。
道もよくないらしく遭難することもあると評判になっている。

なので道に詳しい政府直轄の案内人を紹介してもらいその人物に道案内をさせてもらう事となった。
三人のオークの案内人であった。

馬車の先頭の席には三人ほどのオークの案内役がいる。両端に座っている二人の若くて背が高いオーク。

そして中年でひげを蓄えた小太りのゴブリンの男性ニウレレがさっきから地図を見たり隣にいるオークに指示を出したりしている、そのそぶりを見るに彼が案内役のリーダーなのであろう。

途中動物にも出くわす、シカ、トラ、ヒョウなど。時々威嚇されることはあったが幸一が剣を出して追い払う。



その中問題はすでに起きていた。それも結構深刻なことが──。

「この辺りをキャンプ地にしましょう」

日も暮れすっかり真っ暗になったジャングル。これ以上進むのは危険と考え彼らはここで一夜を過ごす事となった。

そこはジャングルの中にある小さな湖のほとり。何も無い原っぱ。
案内人の若い人が後ろからテントを取り出してセットしようとする。それを見た幸一、青葉、イレーナ、サラが手伝う。

「おまえさぁ、さっきからテントを立てるわけでもなく一人湖のほとりで座って休んだだけだよな」

ニウレレ、ここまで移動をしている時もおかしをむさぼり食っていてやっている事と言えば部下の二人に適当に指示をするだけ。キャンプを立てる時も俺はともかく青葉やサラまで手伝っていたのにこいつはあくびをしながら湖のほとりにいて何をするでもなく休んでいただけだった。


「おまけにあの部下二人に聞いたら今移動の予定が50キロ遅れているそうじゃないか」

幸一が不機嫌な顔で問い詰める。今の一番の問題点がそれだった。ジャングルの道が予想以上に悪路で馬車の進みが遅く結果的に予定どうりに進まない状態になってしまったのであった。

サラも心配らしく深刻そうな表情で話しかける。



「そうですよ、大丈夫ですか? 食糧とか──」

「大丈夫ですよ、僕はちゃんとした綿密なスケジュールを組んでいますから」

「その綿密なスケジュールが今日どれだけずれたと思っているんだよ!!20kmずれているんだぞ初日で!!」

幸一がにらみながらニウレレに詰め寄る。
そう、本来の目的はこの先の山道に入るふもとのキャンプ地であったが悪路のため思うように進まず結局予定通りに進まずこの場所で一夜を過ごすことになってしまったのであった。

「#だから明日そこに50kmつけ足せばいいじゃない__・__#」



「それが出来ないから私達はこんなに工程が遅れているんでしょ。本当に大丈夫なの?」

青葉も呆れた表情で腰に手を与えながら詰め寄って話しかける。

「大丈夫ですよ。道は間違いなく進んでいるのですから。あと明日行く予定だった道、変えます。これで少しは縮むはずです」

そしてニウレレはその理由を自慢げに話し始める。

「これから行こうとしていた世界国道425号線何ですけどね、これは山道なんだけどね、いまサラさんや後輩の案内人の人が言うには、危ない道らしいのよ」

その重要さから一つの国だけでなく国際的に整備が進められている国道。
その名も世界国道──。

そしてこれから幸一達が行こうとしている世界国道425号線、そこにはとある秘密があった。

「この世界国道425号線はね、国道の中でもとっても危険がいっぱいな道なんですよ」

と言って彼は説明を始める。

この道は山の中をうねうねしていて道が大型馬車がやっと一台通れるくらいの広さしかなく中には断崖絶壁になっている個所も多い。



ひどいと道に落石があって進めない時もあるらしく地元に人たちからは危ない道だと恐れられていると言う。なので時間を取られる。回り道をした方が安全なうえに時間も早く着くと部下から説明を受けたようだ。


さらにニウレレは自慢げに語り始める

「やっぱり僕くらいに器の大きい人間になるとね、部下に対しての度量の大きさがちがうのよ」

「僕は戦術にはこだわらないからね、それにこだわってしまうと後輩たちを道を誤った方向に進みかねないのよ。
だから良い案があれば下々の者であっても採用するよ。
それによってね、後輩たちが自分たちで考えるようになるのよ。そして後輩たちが育っていく。これが大事なのよ」

自信満々な表情でのしゃべり、それにあきれた表情で淡々と幸一は言葉を返し始める。

「つまりお前が選んだ道を行っていたら道は危ないわ距離は遠いわで大失敗していたってことだろう。そう言うことでしょ、君が行こうとしていた世界国道425号線っていうのは」
それを調べたよね、調べたらすぐ判断を変えたね」

「調べたのは私何だけど~~」

青葉がジト目で反論する。その言葉にニウレレが動揺し始める。

「調べたのは青葉だろ、青葉とお前の部下が街を回って現地人に聞いて調べたんだろ。お前はボンクラだから何も考えずにそのまま行こうとしてたろ」

「だから僕は判断を変えたんですよ」

「それは普通の案内人だ、それで無理矢理その道を行ったらお前はただのバカだ!!」

「そうだね、だから僕は馬鹿じゃないでしょ」

「ああ、確かのその通りだ。でも普通の案内人は事前に道を調べてくるんはずだろう、そしてすでにここに来るころには安全な道を選んでいてあんな悪路は選ばない。だからお前は普通以下の案内人だ」

幸一の鋭い突っ込みにニウレレはかなり動揺しているようで視線を泳がせ額に汗をかいている。

話は昼ご飯を食べている時にさかのぼる。ニウレレがふいにこの先のルートを打ち明けている時だった。

ニウレレが自信気に地図を開いて今日はこのルートを通ると言い出した所から話は始める。

「それでサラが何かを思い出したように訴えてきたんだ。この道は危ないって」

「それでちょっと自分が責められるんじゃないかって焦っていたのは覚えているわ」

青葉と幸一の言葉は正論だ。その後、青葉とニウレレの部下二人が現地人に聞いて今自分達が行こうとしている道が危ない道だとわかり急きょ道を変更したのであった。

青葉がその道について簡単に一言。

「つまりね、幸君の世界の言葉で言うと国道の字が違うの、酷って字なのよ。酷道」


それで偉そうに部下に向かって地図を持ってこいと指示をする。この時代のそこまで正確ではない地図を見て、それもまた指を使ってもう一つの安全な道の距離を測り、そして理解する。

「二十一……四十二……あっ、こっちのがいいって指を使って図ってさぁ……、断言するけど絶対計算狂うわ──、あの道も結構悪路だって言うし。っていうかすでにスケジュール遅れてるのよ。このままじゃ絶対半日、下手したら丸一日遅れることになるわね」

ため息交じりで青葉がつぶやく。そしてこのままだと遅れてしまうことも伝える。
しかしニウレレはどうにもその言葉が納得がいかないようで──。

「う~~ん、いけそうな気がするけどなぁ」

「確かに予定、大幅に遅れて到着になりますね……」

サラのつぶやき。それにニウレレはあきらめが悪く囁く。

「なんかこう全員がパニック状態になって何が何やらわからないうちに目的地に、着いている……みたいな」

その言葉に全員が驚愕する、そして以前にもあったことがある青葉は頭を抱えながらつぶやく。

「おかしいって思うでしょ? この人いつもこうなの」

「それって、火事場の馬鹿力ってことですか?」

「そう、それ!!」

サラのその言葉に急に元気を取り戻すニウレレ。

ガクッとうなだれる全員。この後青葉と幸一の突っ込み祭りになったことは言うまでもなかった。しかし騒いだところで結果が変わるわけでもない。

結局幸一達は予定が遅れることを認識し予定を立て直す。
そんなやりとりをしながら一夜を過ごす事となった。

          

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