【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね
第72話 激戦の末、二人が見た物
口に中に赤い光が集約し、膨張。
次の瞬間甲高い発射音と共に口から、巨大な光弾が全てを引き裂くかのような速度で発射される。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
イレーナと幸一はとっさに横に身体を投げ飛ばし直撃を免れる。
攻撃が地面に直撃し大爆発を起こす、再びすさまじい大爆発が起こる。
建物は倒壊、地面はえぐれ爆発の中心地は更地のようになる。
しかし二人は全くひるまずに再びシーホースに急接近。
一気にスピードを上げて向っていく。
グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!
シーホースはその左腕を振り上げ、その拳を向かってくるイレーナ相手に振り下ろす。
イレーナは何とかかわしたものの、たったそれだけの攻撃で地面が抉れ始め、陥没する。
しかしイレーナはひるむことなく一回地面に着地すると再び飛び上がりシーホースに向かって突っ込んでいく。
(このくらいでひるむ私じゃない!! 私は負けない!!)
「──えっ?」
イレーナがそう考えた瞬間、目の前に突然シーホースの拳が現れた。
「イレーナ!!」
空中にいるイレーナにとってその振り下ろした攻撃はかわせるものではなかった、しかし飛び込んできた幸一がイレーナをお姫様だっこをするようにして助ける。
二人はいったん距離をとって体勢を立て直すと、そろって大きく息を吐く。
「ごめん、幸君」
「大丈夫? 心配はいらないよ」
二人はほんのりと顔を赤くして言葉を交わしイレーナが再び槍を構える。
しかしシーホースはその瞬間を見のがさず反撃を再開。
グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!
今度はシーホースが二人の間合いへ飛び込んでいく。
シーホースが間合いに踏み込んだ瞬間、イレーナも負けずに飛び込んでいく。
イレーナの振り下ろした一撃をシーホースは腕で受け止めるがイレーナはそれをものともせず
怒涛の連続攻撃、しかし──。
グワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
シーホースの叫び声と同時に身体が紫色に光り始める。
イレーナは無視して攻撃を続ける、シーホースは再びこぶしを振り上げる。イレーナはそれを防ぐが、その拳がそのままイレーナの体を弾き飛ばす。
シーホースはイレーナの攻撃を何とパワーでイレーナをはねのけたのだった。
さらにシーホースはイレーナに追撃を始める。すると今度は幸一の反撃が始まる。
タッ──。
両足に思いっきり魔力を込めて加速をつけて一気に踏み込む。そして鋭い速さで右からシーホースに切り込んでいく。
カァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
シーホースの意識は幸一に移り左手で対応、防がれてしまう。
すると幸一は一気に距離を取る。そして兵器の魔力を込める。
願いをとどかせし光、逆縁を乗り越え、踏み越える力現出せよ
バーニング・ブレイブ・ネレイデス
再び青い炎が幸一のエクスカリバーから出現しこの場を包み込むような大爆発が起こる
三度目、幸一は力を振り絞って術式を繰り出していく。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン
グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!
断末魔の様な悲鳴を上げるシーホース、傷だらけの体になり誰から見てもかなりダメージを受けているのが理解できた。
そして──。
「次で決める!!」
イレーナが決意を胸にそう叫ぶと一気に間合いを詰めていく。そして槍を振り上げて自分のすべての力を込めて術式を発動させる。
時空をつかさどる力、闇に立ち向かう勇気となりて、希望となる力を!!
ユリシーズ・リミテット・スラッシャー
ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
イレーナの渾身の一撃、シーホースは防ぎきれずに身体が損傷する。
まるで断末魔の様な叫びを上げるシーホース。
シーホースの敵意はイレーナに移りイレーナを執拗に追い始める。
(かかったな! まあそれが狙いだったんだが──)
必然的にノーマークになる幸一、これが作戦だった。互いに攻撃を仕掛けシーホースの意識が外れた方がスキはあるが威力の大きい術式を出す。
イレーナがシーホースに傷を負わせたら、最後は威力の強い遠距離術式を打てる幸一が決める。
「作戦通りだ、イレーナ」
そして幸一は手に持っている兵器を振り上げ魔力を思いっきり込める。
「さあ、チェックメイトだ!!」
涅槃なる力、今世界を轟かせる光となり降臨せよ!!スピリッド・シェイブ・ハルバード
解き放ったのは幸一最大の威力を誇る術式。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン
天地がひっくり返るくらいの強い轟音。
術式はシーホースに直撃し大爆発をする。
「シーホースはどうなった?」
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
幸一がシーホースへ視線を移す。
すると身体がまるで蒸発していくかのようにゆっくりと消滅していった。
「シーホースを倒した?」
「やっぱ勇者さんってすごいね?」
それを遠くから見ていた冒険者達が反応する。
周りは歓喜の声に包まれる。
フラッ──。
魔力のほとんどを使い切ってしまった幸一、膝に力が入らなくなり思わずその場にへたり込む。
(やばい、もう力が入らん──)
フラッ──。
そう考えながらその場で横になり空を見る。すると誰かがやってきて幸一に手を差し伸べる。
幸一はイレーナの手をぎゅっと握り、何とか立ち上がる。
「幸君、すごい……」
イレーナが照れながら幸一に向かって囁く。
「褒めてくれて、ありがとう。でも勝ったのは俺一人のおかげじゃないよ。こちらこそありがとうね……」
そう言いながら見つめ合う二人、幸一もドキッとしたため顔を赤くする。すると力が入らない幸一にイレーナが肩を貸そうとして幸一の左肩を持ち上げる。
「あ、ありがとう──、結構力」
「幸君、イレーナ、大丈夫?」
青葉とルトもやってくる。すでに救助と避難を完了していてあとはイレーナと幸一だけであった。
「やっぱり勇者だね、強いや。でも手当した方がいいよね、医者の所へ行こう?」
ルトが話しかけると次は青葉が茶化したような態度で話す。
「や~~ん、邪魔しちゃった? 二人っきりの方が良かった?」
「それとも二人でベットでも行くつもり?」
青葉のからかうような質問に二人はあわあわと手を振り反論する。
「そ、そ、そ、そんななわけないでしょしょ!! 変なこと言わないでよ!!」
「そ、そうだよ」
「それとも私とベット?」
「とりあえずベットから離れて! それと他の人たちは大丈夫なの?」
幸一は冷静に突っ込み他の冒険者の事を聞きだす。これだけ派手に街を壊しながら戦ったのだから建物だけでなく人への被害も相当なものだと予想していたからである。
「そうね、他の人たちは避難が終わったわ。何とか無事よ。残りはあんた達の手当だけよ」
強がって一人で幸一を持ち上げようとしたものの
腕を組み冷静になって青葉は右肩を持ち上げる。
幸一が二人の肩を借りながらさっきまで戦場になっていた住宅街を見る。
あたりは日が暮れ始め夕日が見え始めている。
今回は今までの戦いとは違うところがあった。
国全体で戦わなければいけないはずが政争の道具にされ、その中での戦いになってしまった。しかし冒険者たちはそれにもめげず魔王軍と勇敢に戦っていた。
それを見た幸一は理解した。彼らなら魔王軍になんて負けたりはしない。たとえ足を引っ張られても守りたい物のため最後まで戦い抜き今回も勝利した。
自分も彼らと一緒にもっと戦っていたい。それだけじゃない、今回は自分たちが冒険者達の足を引っ張るような事態になってしまった。
もうこんなことは起こされない、そして冒険者達が報われるような仕組みを作る。
そんな決心を胸に秘めながらこの場を去っていった──。
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