【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

静内 燕

第59話 作る料理、それは

そう、その料理長とはなんと幸一だった。
その叫び声の瞬間近くにいた青葉が幸一の腕をギュッとつかみみんなに向かって叫ぶ。

「ここで発表しま~~す。今日のシェフはですね、#なんと幸一さんですよーー__・__#」

その言葉に周囲の市民達がわっとざわめきだす。考えてみればそうだ、幸一は今まで数々の手柄を立てておりそれなりに市民達の中にも名前は知れ渡っている。

そんな彼が今夜徹夜でみんなのために料理をふるまおうということなのだ。無茶苦茶な趣旨はともかく珍しい企画に周囲がざわつき始める。

「勇者さんが手料理を作ってごちそうするって?」

「なんか面白そう──」

そんな声が街中からあふれていた。
そんな雰囲気を察したマグブライトが嫌がる幸一を青葉が強引に肩を押して馬車に連れ込む。

「冷静に考えてよ幸君、幸君が作った料理を食べるのをここにいる市民達がみんな待ち望んでいるんだよ!!」

幸一に訴えるような眼差しで話しかける青葉。幸一はそれに対しジト目で反論する。

「言っとくけどその論戦全く負ける気しないぞ? それはお前たちが俺が料理をするって勝手に言ったからだろ?」


「昼食は無いので自分で用意するって言えば彼らはちゃんと昼食を用意するわけだから」

冷静な突っ込みを入れる幸一に青葉はお構いなしに腕を引っ張って調理場へと進んでいく。

「ほら、もう決まってるんだからあきらめなさい。行くわよ!!」

そして調理アシスタントとしてイレーナ、サラ、青葉、が共に馬車に乗り始める。

「っていうかもう日が暮れるぞ? 今から六十人分なんて作れないぞ?」

「徹夜すればいいじゃない?」

何のためないもなく青葉は真顔で幸一に進言する。幸一は何かを訴えるような眼差しで青葉を見つめる。


「徹夜ってな!! そんなように簡単に言うなよ!!」

「一応サラとイレーナ、には同意も得てるし次の日は丸一日休息ってことだから問題ないわ」

「つまり俺を騙そうと──」

呆れた表情をする幸一に青葉はにっこりとした表情で言葉を進める。隣にいるサラとイレーナ、は気まずい表情をする。

「幸君、ごめんね……」

「幸一さん秘密にしてって言われて、こめんなさい──」

イレーナが申し訳なさそうな表情をしながら謝る。

「まあそういう事!! これも市民達のため、私も協力するから幸君もお願いね?」

「わかったよ、協力すればいいんだろ!!」

渋々といった表情で承諾する幸一、そんな会話を続けるうちに馬車は宮殿に到着。
そこにはすでに案内人がいて広いキッチンに案内された幸一達。

貴族らしい豪華な装飾に飾られた食器、調理に必要な一通りの設備が備え付けられているのが確認できる。

料理は野菜、魚、肉など一通りの材料がそろっていて。その材料の中で幸一はまず何を作るのかを考える。

シンプルにおいしくするか、それとも工夫を凝らして市民達にインパクトを与えるか。

(そういえばここの人たちってどういう味が好みなんだ?)

また、たくさんの人、それも各地からいろいろな亜人や人種がいる。
つまり万人受けする様な料理でなくてはならないということだ。

そんな事を考えながら材料を見ていると一つの材料に幸一に視線が止まる。

「カレーパウダー?」

カレーなら誰でも食べられる、それに幸一の世界では多くの人が好んで食べる。これにしようかと思考を張り巡らせると青葉とサラが口をはさんでくる。

「ええっと、確かこれは南方の国で食べられているカレーという料理です」

「この時代でもあるのよ、カレー粉。貴族の料理って感じでまだ一般人は食べられないけど──」

また、遠い国の料理であるにもかかわらずここにあるということはそれなりにこの国でも食されているのだろうと感じ幸一はとある決断を下した。

「カレーにしよう、これならみんな食べられるからね──」

「カレー? 私も以前食べたことがあるけどとってもおいしかったよ、それがいいんじゃない?」

「そうですね、そうしましょう!!」

サラとイレーナも喜んでそれに賛成する。そして料理が始める。

「味は、マイルドにした方がいいな……、子供だって食べるんだし」

まずは材料を選ぶことになった。とりあえず豚肉にニンジン、玉ねぎ、ジャガイモ、それから個人的に合うと思ったカボチャとラムを選んだ。

イレーナがカボチャを取り恐る恐る包丁を持って切ろうとするが──。


(そういえばカボチャってどうやって切るんだっけ……)

イレーナはお嬢様育ちのため家事の経験がなく包丁を持ちながらカボチャを見て考えていた。そして──


「おいイレーナ、それじゃあいつまでたっても終わらないぞ!!」

なんとリンゴをむく時のような切り方をし始めた。幸一が慌てて突っ込む、そして──。

「え──?」

イレーナが顔をリンゴのように赤くして驚く。なんと幸一が背後からぎゅっと抱くような体制になりイレーナの包丁を持っている左手を自分の左手で握る。

「こうやって切るんだ──」

直接包丁の使い方を指導し始める、イレーナも顔真っ赤にする。

「こ、こ、こ、幸く~~ん」

(お熱いお二人さんね~~)

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