【完結済】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

静内 燕

第47話 王都ネウストリアの裏の顔

翌日
そして再び行動を開始。

歩いて少しするとそのエリアに到着したのだが──。

「本当にここなのか?」

意外な光景に思わず幸一がそうつぶやく。
古びた家屋、薄汚れた露店、そこは貧困層が住んでいるようなエリアでとてもじゃないがマフィアのボスがいそうなところではなかった。

「こんなところで会談を行うつもりだったのか?」

幸一の質問に青葉が首を縦に振る。

「全体的にこの街のマフィアは目立つことを嫌うのよ。裏通りの古い食堂にいるしょぼくれたおじさんが実は豪華なヨットや別荘を保持しているマフィアのボスだったなんてよくある話なの」

さらにルトも話しに加わる。

「おまけにそいつらが裏で政治家とつながっていて薬物を横流ししていたり、奴隷商人と絡んでいたりするんだ」

ルトと青葉の説明に幸一は少し驚く、相当マフィアについて調べていると──。

(当然よ、私は今まで裏社会と戦ってきたんだから──)

青葉は当り前という顔をする、彼女は当然この作戦を知っていたのでマフィアについての研究も行っていた。なので彼らの特徴や何に気をつければいいかなどもよく理解している。


「確かに治安は良くないけれど不用意に裏通りに行ったりしなければ大丈夫よ。結構普通の人みたいにの人懐っこかったりしてるし」

代々この街では警察組織が届かない無法地帯であった。
治安を維持する組織がないので警察の代わりにマフィアのような勝手にルールを決める組織が発達していった。

それがこの王都ネウストリアの裏の顔でもあった。



幸一と青葉、ルトは作戦のためとある場所に向かってからとある酒場へ向かってく。

その場所によってから二時間ほど後。三人は広い道を曲がって裏通りの狭くてごちゃごちゃした道へと入っていく。



その通りに少し埃かぶり古びた酒屋が一軒ある。

そこでは長身な筋肉質の男が食事をしていた。彼こそがルチアーノである。

エスプレッソコーヒーにサンドイッチの簡素な食事。

周りにはサングラスで黒い服の取り巻きたち。そんな中で彼は腕を組んでつぶやく。

(来ないな……、あいつ)

ルチアーノは疑問を感じる。今日はゲルナーとの奴隷の事について話しがある日だった。
この時間に約束したのだがまだゲルナーは来ない。

(まさかあいつ──)

彼の中に一つの懸念が出来る、そしてその瞬間──。

「よう──」


ドアを蹴破って誰かが入ってくる。

「よう……」


幸一を先頭に青葉と女装したルトの三人がそこにいた。サングラスの取り巻きが三人に叫ぶ。


「何だ貴様ら、俺に何の用だ」

「あんたを捕まえに来たのよ!!」

青葉が答える。ルチアーノはその言葉を無視して先頭の男をまじまじと見る。そして彼のうわさを思い出す。

「てめぇは……、確か炎の唯一王だったな──」

ルチアーノは幸一を見て思い出す。彼がうわさに聞いていたこの世界に現れた勇者だと。

「なるほどな、そういうことか──」

時間になってもあらわれないゲルナー、このタイミングで自分の場所を突き止め現れる勇者。

そして彼がその事実から判断する。

「そういうことか──」

ゲルナーはすでに捕らえられている事をルチアーノは理解した。


「ああ、ここに俺がお前の名を叫んでやってくる、もう理由は決まっているだろ」




彼はニヤリと笑いそう告げる。そしてそのそぶりから断定する。


やはりこいつは自分を殺しに来たのだと──。

「待ってろ、ちょっと部下を呼んでくる」

勇者ということは相当な実力があるのだろう、そう考えルチアーノはまずは部下を五十人ほど集めて闘わせる。
そこで彼の能力の様子見をして手の内を知ろうとしたのである。


しかしその目論見は外れる事となる。

「その必要はない、すでに貴様の手下どもは片付けてある」

「どういうことだ?」


ルチアーノが言葉を返すと幸一は彼の前で小さなカバンを逆さに向ける。
バラバラと音をたてて落ちるのはマフィアの団員のバッジを大量であった、そして最後の一個が床に落ちると言い放つ。

「お前の手下たちはすでに俺の仲間が片付けた、あとはそこの五人だけだ」

三人がさっき最初に向かっていったのはマフィアのアジトであった。そこでゲルナーの書類を基に事情を聞こうとしたところルチアーノの部下達が襲いかかり戦闘状態になってしまう。

だが一般人相手に苦戦する様な三人ではなく五十人もいた部下達をすべて倒して拘束。

そしてその証に彼らの手帳を幸一が店に入る前に渡して二人は入口で待機しているのであった。

「この野郎、ふざけたことしやがって!!」

「海の藻屑にしてやる!!」

自分たちの仲間が拘束されたことを知り激高する部下達。しかしそんな部下達をルチアーノはただ一言。

「いい、下がれ。俺がやる」

「ボス?」

「いいっすよ、全員でボコボコにしちまいますよ」

「いい。邪魔だ!! どいてろ!!」

部下達は顔を青ざめさせ沈黙する。
ルチアーノの目つきが本気になりそれに威圧されたのだった。

「こいつ、相当な実力者だ。俺の勘がそう告げている……」

だったら方法は一つしかない──。

「だったら話は早い、勝負はお前と俺の一対一、どちらかがくたばるまでな」

「ありがとう、さすがマフィアのボス。話が早いね」

幸一がにやりとした表情で言葉を返す。そして二人とルチアーノの取り巻きは戦いのため表に出る。



久遠なる世界の彼方から、混沌ある世界に閃光を貫き──、降臨せよ!!
グローリアス・ソウル・エクスカリバー

幸一が兵器を取り出すとルチアーノも兵器を召喚する。

両者にらみ合いながら構えの体制に入る。そして──。

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