【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び勇者になるようです
第65話 元勇者、ローザを抱っこしたまま戦う
セフィラが言葉を発した瞬間──。
パッ!!
この場に電気がついたように、突然明るくなる。
突然の出来事、俺たちは周囲を見回す。
奥には大量の本棚や書類。絶対に何かある。そして、それに立ちはだかるように1人の男が腕を組んで立っている。
「おやおや、客人を呼んだ覚えはないんですがねぇ」
聞いた事がある声と外見だ。
眼鏡をかけていて、ネズミの耳をしている亜人。確かカイテルの取り巻きの1人コーザだっけ。
「コーザ、そこをどきなさい。奥にある書類全部見せてもらうわ」
ルシフェルがギッとにらむがコーザはひるまない。ニヤリと笑みを浮かべながら言葉を返してくる。
「勘がいいことです。ですがそれはできませんねぇ」
「まあ、そうだろうな。おとなしく開けてくれるなんてこっちも思ってはいないさ」
まあ、こいつを倒してゆっくり見るとしよう。
そう考え俺は剣を召喚。続いてルシフェルたちも武器を召喚し始める。戦う準備はできた。
「ルシフェル、こいつの種族値教えてくれ」
「わかったわ」
そして数秒ほどすると──。
HP 45
AT  60
DEF 75
魔法攻撃 65
魔法防御 55
速度 105
種族値405
「そこそこね」
まあ、並程度だな。速度は速いけどそれだけ。油断はしないけれど、今まで戦った敵より1ランク下という所か。
「ふん、そこまでこいつは強くない。そんなことを考えているのが私にはわかります」
ニヤリとした表情で彼が話す。まあ、この種族値じゃあしょうがないか。
「つまり、それをひっくり返す対策があるってことね」
ルシフェルの言葉にコーザは笑ったまま右手を上げる。まあ、戦いは数字だけじゃ決まらない。能力の使い方や、剣裁きなどの技術。練度なども大きくかかわる。油断するつもりは毛頭ない。
そして彼の右手から強い魔力が放たれると──。
「こ、これはどうことですか?」
「お前たちには、こいつら全員と、対決してもらう」
そういうことだったのか。
なんとこの場いっぱいに数えきれないくらいの騎士の形をした人形たちが出現し始めたのだ。
騎士たちはそれぞれ弓や槍、剣など様々な武器を持っている。
「では、行け!」
コーザの掛け声とともに騎士たちは俺たちに突撃する。それも1人相手に何十人もだ。
俺たちは武器を片手に反撃。
ズバァァァァァァァァ!
俺は向かってきた騎士を何体も返り討ちにしながら周りを見る。
「さすがに、数が多いな」
「全くよ、もう!」
1人相手に何十人もかかってくるこの状況。セフィラもルシフェルも手を焼いているのがわかる。そして──
「ローザ様!」
ローザが相手との接近戦を制しきれず、攻撃を浴びてしまう。吹き飛ばされ、彼女の体は壁にたたきつけられる。
セフィラが思わず叫び、ローザを助けようとする。しかしそれをふさぐように別の騎士が立ちふさがり行くことができない。
ローザは近距離戦闘には向いていない、厳しいものがあるだろう。そしてそれをコーザは気づいたようで。
「まずはあのピンクの小娘を狙え!」
手が空いている騎士たちはその声に合わせ、一気にローザに向かっていく。
セフィラとルシフェルは離れて孤立している。とても近づけそうにない。すぐに俺がローザの前に立つ。
「陽君、ごめんなさい──」
それでも背後に回ってローザを狙い撃ちに行く騎士は後を絶たない。
仕方がない、これが1番最善の手段だ。
クイッ!
俺はローザを片手で抱きかかえる。ローザはその行動にほんのりと顔を赤くして驚く。
「よ、陽君……、なんで? 」
そしてそのまま騎士たちを相手に戦っていく。それを見たコーザはその姿を見逃さなかった。
「ふん、やはりその小娘が足かせになっているようですねぇ。ではハンデをかかえる貴様から始末しましょう」
そして、今まで戦っていなかった兵が俺の方向に向かってきた。それを見たルシフェル、セフィラが叫ぶ。
「陽君、大丈夫?」
「待ってください。今すぐ行きます」
「いい、この敵は俺一人でやる」
俺たちはそこまで集団戦をやっていたわけじゃない。大きな魔獣あらともかく、素早い敵に狭いこの場所では相打ちになる可能性だってある。
大丈夫、こいつらはそこまで強くはない。十分一人で倒せる。
そして騎士たちが一斉に俺に襲い掛かってくる。
「な、何?」
コーザは思わず声を漏らし、あぜんとする。
同時に、俺に襲い掛かった人形たちがバラバラに散っていった。
「って元勇者がいない。どこだ?」
すぐに我に返り、きょろきょろと周囲に視線を送る。
「やはり並程度だな貴様。俺の敵じゃない!」
俺はコーザの背後に立つ。ローザを抱きかかえたままの立ち回り。
コーザは顔が真っ青になり、慌てて俺に振り向いた後、後ずさりをする。
ローザはその動きの速さに呆然としていたが、すぐに顔を赤くして話しかけてくる。
「陽君。もういいよ、離して。私、足手まといになっちゃう」
まあ、言いたいことはわかる。いくら身軽なローザといっても人を抱きかかえていては動きに支障が出てしまう。
それでもお前を1人にするわけにはいかない。
「ルシフェルやセフィラと違って接近戦ができないローザを一人にしたら、コーザは間違いなくローザを狙ってくる。だからリスクがあってもお前は俺が持ってる必要がある」
「よ、陽君……」
再びローザの顔がほんのりと赤くなる。大丈夫、お前に危害は加えさせない。
そう決意し、俺は再び視線をコーザに向ける。
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