【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び勇者になるようです
第54話 元勇者 見知らぬ子どもに苦戦する
するとクレアはニヤリと笑みを浮かべた後。
(よし、これを待っていたよ)
自身の斧を振り下ろす。まるで俺がこの手で来るのを待っていたかのようだ。そしてその斧から魔力が放出され──。
(えっ? 何だこれ!!)
驚く俺。何とその瞬間地面から突風のような風が吹き上げられたのだ。
思わぬ奇襲にバランスを崩し足を取られ、転倒しそうになる。思わず止まりたくなるが──。
(止まるな、進め!!)
バランスを崩した体、しかし無理矢理地面をけり飛ばし前に進む。
恐らく転倒したら、そのスキに大きな術式をくらい大ダメージを受けてしまうだろう。自転車と同じ要領で、止まるより前に進んでいる方が安定する。
そして一気に直進しクレアに接近。すると──。
クレアは俺の眼前に障壁を展開。構わない!!
剣を振り下ろし、障壁に斬撃を加える。流石に1撃では壊れない。
しかしそんなこと構わず何度も剣を振り下ろす。2撃、3撃、そして──。
ビリッ──、ビリッ──。
障壁にヒビが入り……。
ガシャァァァァァァァァァァァァァン!!
障壁が崩壊、それを見て俺がクレアに接近しようとすると──。
「すごい、壊れちゃった。でも行かせないよ!!」
クレアは斧を薙ぎ払う。
すると俺の目の前から下から突風が巻き上がる。仕方なしに後退。
10メートル程距離がある状態で2人はにらみ合う形になる。
「やるなクレア。遠距離戦とはいえここまでやるなんて──」
感心する俺。周囲にもそんな空気が漏れ始める。
「あの少年、強いな。「元勇者」相手にいい勝負してるじゃん」
「すごいニャ。新星誕生だニャ」
そんなクレアを称賛する空気と裏腹に、腕を組み険しい表情をしているルシフェル。
「甘いわ!! 勝負はついたも同然ね」
その言葉に周囲にいた人達が視線をルシフェルに向ける。
「確かに彼は遠距離戦もそれなりに強い。でも彼の最大の長所は攻撃140からの圧倒的な物理攻撃。そこで勝てない以上クレアは今の遠距離戦、絶対負けてはいけないの」
「本気で勝ちたかったら遠距離戦は絶対に勝たなきゃいけない戦いなの。けど今の勝負を見る限り互角。互角ではだめなのよ!!」
ルシフェルの言葉とは裏腹に、クレアはわくわくしたような表情で陽平を見つめる。まるで無邪気に遊んでいるかのように。
「ありがとう。でもまだまだ本気、出させてもらうよ!!」
今度はクレアがその大鎌を振り上げ、一気に間合いを詰めてくる。
(ん? あの速さ、意外と戦い慣れていそうだ)
俺はクレアの突っ込みを見てそう感じた。初心者にありがちな戸惑いや、魔力を扱いきれていない様子が全く見られない。
(とりあえず警戒を怠らずに戦おう)
クレアが再び突っ込んでくる。
俺はそれに合わせて距離を詰める。至近距離は俺の得意分野、罠かもしれないが行くしかない!!
クレアが目の前まで迫ると、俺はそれに対応するため剣を振り上げる。
そして射程距離まで接近した瞬間、俺は一気に剣を振り下ろす。
しかし──。
スッ──!!
その攻撃が彼に命中することはなかった。
体が吹き飛んだ先の木に直撃。鉄の塊が直撃したような激痛が全身を襲う。魔王との戦い以来の大ダメージだ。
「みんなー、今の見た? 僕の攻撃、すごいでしょ!! でしょ?」
追撃もせず、模擬戦を見ている一般人に自慢するように叫ぶ。その姿は年相応の無邪気な子供といった感じだ。
「おい、あの子供すごくないか?」
「ああ、あの「元勇者」をあそこまで追い込むなんて──」
「けど見たことないぞ。何者なんだ?」
その姿に周囲の一般人はざわざわとした動揺が広がる。この世界を救った「元勇者」を無名の子供が追い詰めているんだから無理もないだろう。でもな……。
「おい、クレア。まだ勝負は終わっていないぜ!!」
俺はゆっくりと立ち上がり、ローブについた土をパンパンと拭う。
「やっぱりそうだよね。それでこそ僕の勇者さんだよ」
当り前だっつの!! このくらいで終わるわけがないだろ!!
こんなピンチ、今までだっていくらでもあった。
追い詰められる事だって、奇襲をくらってあわやということだってあった。けれど最後にはその仕掛けを見つけて勝って来た。
今回だって同じだ。絶対見つけ出してやる。貴様の弱点。
そう心の中で叫びながら、俺はクレアを睨みつける。
「うん、勇者さん。本気でくるんだ~、僕も全力を出して頑張らないと!!」
そう言ってクレアは自身の斧を俺に向かって突き立てる。そして──。
化身宿りし風の神よ。見る物を惑わし、勝利をつかみ取れ!!
マジカルライト・ウィンド・ミラージュ
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──!
彼の体が緑色に光り出す。
「なんだ、これ──」
なんとクレアの姿が10人ほどにまで増殖したのだ。
「ふふ~~ん。これが僕のとっておきの術式さ──。かっこいいでしょ~~」
自慢げな、自信満々の笑みで10人のクレアが俺に向かって叫ぶ。
俺は何も言葉を返さず、じっとクレアを見つめる。
「大丈夫なの? あんた──」
ルシフェルも心配そうな顔つきで俺に話しかけてきた。大丈夫だ、絶対突破方法はあるはず。
「じゃあ、勝負を決めに、いっちゃうよ~~!!」
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