【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び勇者になるようです
第30話 元勇者 禁断の術式を見てしまう
そんな会話をしていると、突然事件は起こった。
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
突然後ろから大声が聞こえだす。俺は慌ててその方向を振り向く。
ルシフェルも同じ反応をしたようで互いに顔を見つめあう。やることなどもちろん決まっている。
「行こう」
「行きましょ」
駆け足でその場所の方向へ。2~3分ほどするとその場所に到着。
赤いリボンで束ねた紫と紺の髪型、短パン、身長はルシフェルと同じくらいの少女がそこにいた。
前方には若い男性7~8歳くらいの男の子、おそらく親子なのだろう。父親のほうがぼろぼろの姿になって、息子をかばっている。
「助けてくれぇぇ。どうか息子だけは……」
「往生際が悪いぞ。勝負の結果だ。潔く受け入れよ!!」
父親の声を聞き入れず少女が一歩一歩近づく。そしてポケットから何かを取り出し始めた。
(あれはタロットカード、まさか──)
そしてその悪魔の絵が描かれているタロットカードを親子に向ける。
その行動に俺とルシフェルは絶句。
悪夢の再来だ。
俺が魔王と戦った時、たくさんの人を苦しめてきた術式。あの術式でどれだけの人が大切な人との時を奪われ、今もトラウマに苦しんでいる人がいることか──。
《闇属性 ソウルドレイン》
名前の通り、対象となった人物の魂を手に持っているタロットカードに封印する。
魔王軍の中でも人一倍、この世界に憎しみを持っていた軍閥だけが使用していた術式。
魔力がないもの、戦いに敗れ尽きた者の魂だけが対象にできる。魂を奪われると、生命エネルギーを吸収され所持者の養分となってしまう。
その中で吸収された人には苦しみが待っているという。
そんなことはお構いなしに少女のタロットが漆黒に光りだす。やがてその光は父親のほうへ向かい、彼の肉体を包み込む。
そして光は再び少女の持つカードへと帰っていく。
バタッ──。
父親はばたりと、意識がなくなったかのように倒れこむ。
「少年、次は貴様だ。勝負の結果、冒険者ならば潔く受け入れよ!!」
少女が子供をにらみつけ叫ぶと、子供は足をすくませながらおびえだす。
そしてポケットから同じも湯をしたタロットカードを取り出す。するとルシフェルが俺の服の裾を引っ張り叫ぶ。
「もう見ていられないわ。行くわよ!!」
「ああ、わかった」
俺とルシフェルはその場に駆け寄る。
間一髪少女がカードに魔力を込め始めた時、ルシフェルが大声で叫ぶ。
「あなた、何をやっているか分かっているの? 今見たわ、人の魂を封印しているのを」
「だからどうした。貴様には関係ないはずだ!!」
少女はルシフェルの言葉に動じず反論。
ルシフェルが叫ぶ。正直俺も彼女に話が通用する気がしない。
それでもルシフェルはあきらめるそぶりはない、彼女の心に訴えかけるように、懸命に叫ぶ。
「何の罪もない、何の力もない一般人よ。そんなひどい目にあわせてあなたはなんにも思わないの?」
「仮に魂を奪うのがあなたの親友だったとしても──、あなたは同じ事ができるの?」
「親友とはどのような術式だ、いつ発動する!!」
セリカは何の迷いもなくそう叫んだ。何かがおかしい、会話がどこか噛み合っていない……。何かがおかしいと感じた俺はいたずらに起こるのをやめいくつかの質問をする。
「なあ──、セリカ……だっけ。聞きたいことがあるんだが一般人と冒険者の違いってわかるか?」
「何? 一般人とは冒険者ではないのか??」
彼女が混乱しているのが分かる、どこか迷い
「さっきから何だ貴様、 誇り高き冒険者ならば彼らにだって強い誇りがあるはず。たとえ敗れて魂を奪われることになっても全力で戦った結果ならそれを潔く受け止めるべきなのが冒険者だ」
この一言で俺達は理解した。彼女がまともな教育を受けていない事を。
するとそばにいた子供が倒れこむ父親の腕を握りながら泣き叫ぶ。
「お父さん──」
涙をぽろぽろと流しながらかすれた声。その声を聴くと少女は困惑し始めた。
「私は、どうすればいいのだ?」
「あなた、名前はなんていうの?」
ルシフェルは優しい口調で処女に話しかける。
「セリカだ」
セリカは下を向きながら俺とルシフェルに話しかけてくる。視点はどこかキョロキョロとしていておぼつかない、迷いが現れていてどうすればいいかわからないという表情をしている。
「私は幼いころから戦士として育てられた。毎日死に物狂いで訓練を受けてきた。冒険者としての誇りを持つよう教育され、敵に対して全力で戦うことが正しいと教わり今まで生きてきた」
「少年兵というやつか──」
「ああ、そういうことね。少年兵として育った人がまともな教育を受けているはずないもの」
少年兵、子供のころから戦うための教育だけを受け育ってきた子供のことだ。
おそらくどっかの権力者から、戦うことだけを正義だと教育を受けてしまったのだろう。
無茶苦茶な教育を受け続けてしまった結果、倫理感が壊れてしまい、平気で人々を傷つけることが当たり前になってしまっている。これでは治安が良くなっても周囲に溶け込むことができず、孤立しまともな生活を送ることができなくなってしまう。そして犯罪や非行に走ってしまう。
セリカは何とか自分の今の感情を話そうとするが、言葉がおぼつかない、明らかに頭が混乱、動揺しているな。
「す、す、すまない……。私はどうすればいいのだ。私は間違っていたのか?」
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