【完結】TS! 俺、女の子になってるっ? 魔法少女になった俺は、最強になって百合展開を楽しむようです

静内 燕

第109話 パワーの違い

「さあ、行かせてもらうぞドラパ!」

「来いアグナム!」


まずはサナだ。サナは目を閉じて深呼吸をする。そして剣を天に向かって上げると──。

「お願い、みんなの願い。届いて!」

その瞬間サナの剣に向かって大量の魔力が来ているのがわかる。そしてその魔力は混んでは俺やユピテル、レテフへと向かってきた。

その魔力は温かく優しい力。今までに感じたことのない魔力だ。

「ユピテルちゃん、みんな。この力、受け取って!」

「わかった」

そして周囲に視線を配るとその正体を理解した。
魔力は、街中からサナの剣へと向かっている。
この街の人、みんなの力を俺たち供給しているのだ。

温かい力。なんとなくだけどわかる。この街の人々の、この街に対する思いが込められているのがわかる。

今の俺は一人で戦っているんじゃない。この街の人々の、この街を守りたいという意思を背負って戦っているんだ。

だから、この人たちのためにも絶対に負けるわけにはいかない。




次はレテフだ。

「受け取りなさい。私と、サナと、街の人たちみんなの力!」


レテフが弓矢を引く。今までの彼女からは感じたことがないくらいの強大な魔力。制御するだけでも、大変だろう。

現にレテフの手が震えている。それでも街を守りたいという願いの元精一杯制御しているのがわかる。

そしてレテフの攻撃が遠くにいるドラパへと向かっていく。


ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

今までのレテフでは考えられない強さの攻撃。この街一帯に響き渡ったであろう大きな爆発音がこの場を包む。そして、このチャンス、絶対に逃しはしない。


その瞬間、俺とユピテルが一気に距離を詰めていく。

無策に飛び込めば確実にドラパの攻撃の餌食になってしまうだろう。
それがサナとレテフのおかげで安全に攻撃できるようになった。

「さあ、俺たちの攻撃に沈め!」

俺とユピテルは連携して連続攻撃を見舞う。
ドラパとは直接戦ったことはないが、彼が身にまとっている魔力から相当強い一撃を見舞うことができるというのは理解できる。

ならば、まずはドラパに反撃させるスキを作らないことが第一だ。
俺もユピテルも最近は何度も協力して敵と戦っていた。

だからわかる。ユピテルがどこで突っ込むかとか、どう動くかが。


互いに邪魔をせず──。



そんな互いの絶好の合間にとどまっての乱戦。
俺達のコンビネーションで一気に畳みかける。

そんなシーンで攻撃をかわされれば、それがすぐに致命傷になってしまう。

ドラパは空振った拳をすぐに引き戻し、次の攻撃に移ろうとするがすでに遅い。
その瞬間ユピテルはその場に倒れこむように体を沈ませる。


地面スレスレにまで体制を低くし、攻撃をかわす。
そしてその低い姿勢のままくるりと体を回転させた。

そのまま剣で彼を打ち払う。
目指すは彼の無防備な下半身。そこならば、両手でガードをすることはできない。

障壁なら防げるかもしれないが、彼女の一撃では並の障壁ならすぐに粉砕できる。

そんな状態でユピテルは一気に攻撃をかける。隣にいた俺だからこそわかる。
この攻撃は牽制のための攻撃なんかじゃない。勝負を決めようとしている本気の一撃だ。




地面スレスレを責めるユピテルの攻撃。その攻撃が一瞬にして動きが止まる。

「な、貴様──」

「さすがはユピテル、簡単にはいかないな。だが甘い!」



彼女の剣がドラパによって踏みつけられたからだ。
ユピテルはすぐさま手を放して後方へと逃れようとするが、ドラパの追撃してくる攻撃の方がはるかに速い。

「させない!」

俺はユピテルへの反撃を妨害するためにドラパの背後から一撃を加えた。ドラパはすぐさま反転して俺の攻撃の受けに入る。

ドラパは俺に対して殴り掛かってきた。俺はその攻撃を受けようとするが──。

「弱い。弱すぎるぞアグナム!」

ドラパの言葉通りだった。
腕の感覚がなくなるくらいの重くて強い一撃。魔力をかなり防御に回していたため事なきを得たが、何度もくらえばそれだけで魔力が尽きてしまうだろう。

しかしユピテルはこのスキをついて自身の剣を再び手に戻す。
そして、ユピテルは自身の剣を握ると、一端距離を取ろうとした。しかし逃げようとしたユピテルを簡単に許すわけがなかった。

「逃がすか!」

ドラパが大きく一歩踏み出しユピテルに追撃。

彼の右の拳の一撃、あまりに強い攻撃、恐らく受けきることはできないだろう。

「貴様の攻撃など、お見通しだ!」

するとユピテルは両足に大きく力を込めて大きく後ろに一回転、間一髪でその拳はユピテルの靴の先端をかすり回避。

そして数メートル後方で着地。

「フフフ、流石はユピテルだ。今の攻撃をかわすとはな──」

「当然だ。貴様の攻撃など、俺に届かない!」

「フフフ、なかなかいい回避だった。相当俺の攻撃を警戒しているようだな。だが、いつまでもそんな腰が引けた戦いでは、いつまでたっても私の心臓に刃を貫くことなどかなわぬぞ──」

その言葉に俺もユピテルも体をピクリとさせる。

「我に勝ちたかったら、心臓を貫くくらいの勢いでかかってこい!」

見え見えの挑発。──が簡単にはいかない。ドラパの右腕。途方もない魔力が込められているのがわかる。

まともに食らえばそれだけで致命傷になり、勝負は決まってしまうだろう。
しかし逃げてばかりいても、勝ち目がないというのも事実だ。

「まだまだ、私は戦えるわ!」

遠方からのレテフの攻撃。
ドラパはたまらずバックステップを取り攻撃をかわす。

こいつを倒すにはどこかで勝負に行かなくてはならない。それならばドラパの体が後ろに飛んでいる今がいい。

早く決めないとサナだって魔力が供給できなくなる。
俺はユピテルとアイコンタクトをとる。

ユピテルは、強気な目つきでコクリとうなづく。

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