【完結】TS! 俺、女の子になってるっ? 魔法少女になった俺は、最強になって百合展開を楽しむようです

静内 燕

第56話 奇妙な噂

オレンジの髪の少女。ユピテルだった。

その声に俺の心に希望がともる。彼女がいる、とても心強くなり、ほっとする。

「ど、どうしてここにいるの?」

「ふっ、あの夕陽を見ていたら、貴様が来るような気がしてな」

よくわからないけど。とりあえず心がほっとする。けど──。

「ユピテル、逃げよう。そいつは魔法を封じてくるんだ」

「逃げる? 勇者である俺がそんな選択、とるわけがなかろう」

そう叫びながら男たちを指さす。
いつもの自信満々な態度。自分が負けることなど何一つ想定していない。けど、魔法が使えない中で男二人、勝てるわけがないよ。

男もそれを理解しているようで、ひひと笑いながら俺たちに接近。

「ここでは貴様は魔法を使えない。だから今のお前はただの女、俺たちに勝てる分けねぇんだよ」

そして男たちはいっせいにユピテルに殴りかかってくる。しかしユピテルは引かない。

「確かに平凡な魔法少女ならそうだろう。だが甘い!」

殴りかかってきた男たちをかわして殴り返す。殴られた男は動かなくなる。
そして──。

「残りはお前だけだ、殴られるのか、逃げるのか。どうする?」

あとは目つきが悪く、坊主頭の男一人、男は怯えながら2,3歩後ずさりする。その後、くるりと背中を向け、全速力でこの場から逃げていった。

「ユピテル、ありがとう」

俺はあまりの恐怖に腰を抜かしたままお礼をすると、ユピテルはすっと手を差し出す。

「とりあえずここから逃げよう。立てるか?」

「……うん」

俺はユピテルの手を借り、何とか立ち上がる。何とか大切な初めては守った。心の底からほっとする。

そしてスラム街を歩きながら俺と会話をする。

「あ、ありががとな──。ユピテル」

あまりの恐怖に、動揺がまだ抜けきっていない。言葉を噛んでしまう。

「礼には及ばない。騒がしい音がしたから、あの場所に行ってみたら、お前がいただけだ」

「そうか。でも、なんでこの場所にいたんだ。住んでいるのって、もっと富裕層が住んでいるエリアだろ」

そう、ただに偶然では片づけにくい。彼女の住処でも、故郷でもないここにいた理由。それは──。

「近頃、他の魔法少女から奇妙な話を聞いているんだ」

「噂、何があったんだ?」

するとユピテルは深刻な表情になる。よほど問題になっているのか?

「1つ目、最近、街のゴロツキたちが魔法を使って暴れまわっている噂を聞いているんだ。中にはそいつらがホロウを召喚したとも聞いている」

それって、さっきのやつらじゃないか

「さっき、ホロウを召喚している奴らがそうだ」

「そうだったのか。おそらくは魔王軍が、貧しいゴロツキに小銭をつかませてやっているんだと思う。問題はそのルートだ」

なるほど、そのルートを撲滅しているということか。

「2つめ、これは魔法少女の中でなんだが、今まで、適性がそこまで高くない魔法少女が、突然強力な力を持ったりしていることが多いんだ」

「ど、どういうこと?」

以前手に入れた例のタロットの事か。それとも別の話か──。

「エンペラーカップで、大番狂わせが時々起きている。しかも、そこまで強くなかったやつが、駆け引きや戦術を上げるのではなく、強大な魔力を見せつけて勝っていく場合ばかりなんだ」

「魔力? 確か先日サナから聞いたな。人間の魔力は、生まれた時から決まっていて、そうそう変わることはないって」

「ああ、直観で、個人的にどこかおかしいと考えて調べているんだ」

確か、聞いた事があるな、俺の歓迎会。去年の上位入賞者が無名の相手に負けたって。
あと、ニャロロだっけ。彼女も、素質はそこそこなのに、洗脳系なんて高等な技を仕えていた

とりあえず、話した方がいいか……。

「俺たちも、それについては調べていたんだ」

そして俺は例のタロットについて話す。ユピテルははっと驚き、食いついてくる。

「なるほど。そのタロットを使うと、魔法が使えたり、能力が強化されるということか」

興味津々だというのがわかる。

「わかった。ありがとう。俺もこのことについて調べさせてもらう。そっちも引き続き、調べてくれ」

「わかった」

そしてユピテルはこの場所から去っていく。ありがとうユピテル。彼女はいなかったら俺はどうなっていたことか、想像するだけで恐ろしい。

いまだに足が震えているのがわかる。とりあえずリヒレの所に帰ろう。
後はサナとレテフだ。大丈夫かな……。

ううん。やっぱりサナの所に行こう。

そして俺は速足でサナの所に向かっていく。



一方、サナとレテフも、激戦を迎えていた。

3人のギャングたちを追っていたサナとレテフ。1人は何とか倒した。あとはこの2人といった所だが──。

「レテフちゃん。なんでこの2人、魔法が使えるの? 魔法少女じゃないのに──」

「わからないわ。けれど、それは後でゆっくり考えましょう」

サナの疑問。それは当然レテフも感じていた。目の前にいる人物は刺青を掘った人相の悪いギャングの男が2人。1人は黒髪の長髪バリシュ。もう1人は坊主頭で背が小さいライグだ。

そして2人はなんと、魔力を纏っているのだ。当然魔法少女ではないのに。

ちなみにさっき倒した1人目は女であったが、変身したようなそぶりは全くなかった。

レテフが1歩踏み込み、2人に問いただす。

「どうしてあなたたちが魔法を使えるの? 例のタロットが関係しているの?」

2人の男はニヒヒと笑みを浮かべながら答えない。

「サナ、どうやら話し合いには応じないみたい。戦うしかないようね」

「……うん」

2人は武器を取り、構える。男2人もバリシュは剣を構え、ライグは甲冑を被った騎士の格好になる。ちなみに槍を持っている。


そして戦いが始まる。

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