~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間そのスキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がる。なお俺を追放したパーティーは没落した模様

静内 燕

第108話 巡礼祭

そしてフリーゼの言う通り俺たちは大聖堂を目指そうしたその時──。

「その服装。あなたたちが、フライさん達でよろしいですか?」

メイルという人物に手紙を送るとき、俺達は目印に服装を用いた。これならあったことがない相手でも、待ち合わせができるからだ。

そして誰かが話しかけてくる。俺たちはその方向を向いた。

「私がフライさん達を呼びました、この街で冒険者をしておりますメイルと申します。よろしくお願いいたします」

「ああ、あなたがメイルさんですか」

長身で、スレンダーな体つき。タキシード姿をしていて、凛としている人物。
ストレートで、紺色の青い髪をしたお姉さんという印象。背中に槍を背負っている人だ。

彼女がメイル。とってもかっこいい外見をしている。

「はい、私がメイルです。よろしくお願いいたします」

「私がフライです。こちらこそ、よろしくお願いいたします」

「よろしくフィッシュ~~」


互いに行儀よくぺこりとあいさつを終える。目的の大聖堂に向かって歩き始めた。


「私達の大聖堂まで案内します。ちなみに精霊のクリムもそこにいますよ」

そう言ってメイルが、歩き出す。
って待て精霊? この街にもいるのか、それに解放済み、ちょっと会ってみたいな。
するとフリーゼが食いつくように質問した。

「待ってください。この街にも、精霊を解放できる人がいるんですか?」

「はい、──といっても私なんですけどね。私も精霊を解放する力を使えるんです。まあ、フライさんほどではないですが」

「へぇ、メイルさんも俺と同じ力を使えるんだ」

「はい、苦労はしました。クリムと初めて会ってから、打ち解けるまで。けれど、仲が良くなれて、本当に良かったです」

精霊の開放ができる人か。ノダルの時とは違い、今回はいい人そうだ。
その後も、メイルさんとたわいもない世間話をする。

街の文化や、食べ物のことなど。
ここは雪国だけあって、独特な文化を持っているのがわかる。

珍しくて、いろいろ興味がわいてきた。



そんなことを話しながら歩きながら街の景色を見ていると、俺の中に違和感が芽生えてくる。

「フライさん。あなたたちの住んでいる街と比べてどうですか? この聖都は」

「この街、これから何かあるんですか? なんていうか、街の人がそわそわしているなって思いまして──」

「それは私も思ったわ。何かあわただしい雰囲気だなって」

メイルの表情がどこかにやけた。そして、大荷物を抱えている市民の人とすれ違うと、彼らに視線を向けた。

「いい気付きですね、フライ、レディナ。今この街は巡礼祭の準備で大忙しなんですよ」

「巡礼祭、初めて聞いたよ──」

「俺は聞いた事があるよレシア」

俺はギルドにいるとき、周囲の冒険者と会話をして情報収集をしている。
そこで、Bランク相当の冒険者が以前この国で巡礼祭の警備をしていたということを聞いた。

なので、そこからある程度の情報を得ている。

巡礼祭とは。この教会が冬至の日に行う行事のことだ。




年に一度、教会全体でこの王国にある様々な聖地をめぐり、大天使の信仰を世界中に示す目的がある。

また、教会の権威を示す祭りでもあるため、周辺国の要人を豪華な待遇をもって招待したりしている。

国内外から、要人たちが一か所に集まるという特性。
それを利用し、要人たちに恨みを持つ勢力が、自分たちの存在を示したり、自らの恨みを晴らしたりする目的で襲撃事件やテロを行う行為が後を絶たない。

教会や、要人たちを呼んで王国の権威を高めようとする王族にとっても、それは自らの権威を失墜させる要因にもなるため、絶対に防がなくてはならないという意見で一致している。

なので、国中の兵士や冒険者たちをこの期間は雇い、神経質なくらいに警備を強化している。

「確かに、街を見ると警備役の兵士たちが多いですね」

「はい、怪しい動きがないか、国全体で神経を張り巡らして探っています」

「それで、今怪しい動きを掴んだりはしているのですか?」

レシアが発した質問。メイルは額に手を抑え、答えた。

「はい。スパルティクス団というこの地方に根を張る組織がありまして。物資の略奪行為や山賊行為を行っている集団なのですが、彼らのスパイが巡礼祭のことを
調べようとしていたことが発覚しました」

「なるほど。そいつらを警戒しないといけないってことだね?」

「はい。しかし冒険者も、兵士も限りがあります。要人たちを守りながら奴らを捕らえるには人手が足りません。もしよろしければ、フライさん達も協力してほしいのですがよろしいでしょうか。当然、お金は出します」

メイルの頼み。俺は考える間もなく答える。

「分かりました。私達でよければ、協力させていただきます」

「ありがとうございますフライさん。フライさん達がいるとあれば、私達、とても心強いです」

メイルははっと明るい表情になる。けれど、俺たちにとってもメリットだ。
俺たちにとっては渡りに船だ。エンレィの残された手紙を頼りにウェレンにやってきたが、他に手がかりがないので困っていたところだ。

こっちでの熾天使のことはよくわからないけれど、表立って活動していない以上、裏組織に潜んでいる可能性は高い。

そして大天使や精霊とかかわりのある巡礼祭とあれば、熾天使自身が動きを見せる可能性は十二分にある。

百パーセントではないけれど、他に手がかりや熾天使を見つける策がない以上、これが最善の方法だ。


「では皆さん。巡礼祭の方、無事に行うことができるように頑張りましょう」

「──そうだね」

全員が意気投合する。ぜひとも、役に立てるように頑張りたい。

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