~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間そのスキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がる。なお俺を追放したパーティーは没落した模様

静内 燕

第65話 新たな精霊、レシア

それならば、特にかける言葉はない。

「じゃあ、頑張ってくれよ。遠目にだけど応援しているから」

「そう、ありがとうね」

キルコは気さくに言葉を返す。ミュアは、顔を赤くしてどこか恥ずかしそうに一言。

「フライ、そっちも活躍できるといいね。応援してるよ」

「俺たちも、ミュアたちを応援してるよ」

「ありがとう」

俺達はいい雰囲気になり、互いの健闘を称えあう。

見た感じ彼ら、以前の俺たちの様にギスギスしている空気は全くない。
大変な事もあるけれど、今度こそ頑張ってほしい。

「フライ。私達も頑張るから、あなた達も頑張って」

二人とも、元気でいてくれよ。
そんなやり取りをした後に、冒険者たちにレシアのことを聞いてみる。


「レシアか、新しい精霊のことだろ、確か聞いた事があるぜ」

「彼について、何か知っているのですか?」

「おお嬢ちゃん。確か新しい精霊が病院で入院してるって聞いたぜ。弟が医者がそんなことを言っていたな」

その言葉に俺とレディナが驚く。

「病院、何かあったの?」

「さあ、その時は特別興味があるわけじゃなかったし、患者には秘密義務があるらしくて、それ以外は知らないな」

それなら仕方ない。レシアのいるところがわかっただけでも運がいい。

「分かりました、ありがとうございます」

俺はその冒険者にお礼を言ってから外へ出る。


「じゃあ、病院に行こう」

「しかし、大丈夫でしょうか。どこか身体が悪いのでしょうか」

フリーゼが心配そうに声を漏らす。

「まあ、行ってみればわかるだろう」

そして俺たちはギルドから繁華街を抜け、落ち着いた雰囲気のある官庁街へ。
そこに病院はあった。

中に入る。受付の女の人に話しかける。

「すいません、レシアという人物に合わせてほしいんですけれど──」

「了解しました。身分を証明するものは用意できますでしょうか」

俺達はポケットからギルドの冒険者証明書を取り出し、受付の人に見せる。

「了解しました。レシアさんは三階の一番奥にいます」

「ありがとうございます」


そして俺たちは看護師の案内通り、階段を登り部屋の奥へ。
目的の部屋のドアが視界に入るとレディナが話しかけてくる。

「なんか、他の部屋より厳重そうよね」

その通りだ。レシアがいると案内された部屋は、他の部屋のドアと違って厳重そうな雰囲気を醸し出している。

まさか人体実験のようなものでも行っているのだろうか。

考えていても始まらない。

「じゃあみんな、あの部屋に入るよ」

「わかったわ」

「はい。私は大丈夫です」

「行くフィッシュ。新しい仲間かもしれないフィッシュ」

みんな準備はばっちりみたいだ。そして俺は部屋のドアに近づき、ノックする。



あの部屋に新しい精霊がいるのか。どんな精霊なのかとてもドキドキする。
フリーゼたちみたいな、良心のある精霊であることを祈るばかりだ。

キィィィィィィィィ──。

ドアを開けると、目の前には大きなベッド。その前には数人の大人がいた。

恐らくベッドにいるのがレシアという女の子だろう。

灰色の短い髪の、ボーイッシュな女の子。背丈はハリーセルと同じくらいの小柄な体系。

とりあえず彼らの会話を聞こう。



「待って、僕を見捨てないでよ」

レシアは涙で目をウルウルさせながら、目の前にいる人物に懸命に話している。黒髪で長髪の女の人だ。

「けれど、僕──こんなに頑張ったのに……」

「うん、頑張ったね。でも、それがどうかしたのかい? この世界では結果がすべて、能力が全くの欠陥品であるあなたでは、俺たちのパーティーの居場所なんてないの」

冷静だが、全く感情がない、声色で誰かが話している。

それを見たレシアは、そのわきに立っている一人の冒険者の腕にすがる。

「その……、ごめんなさい、ごめんなさい。けど、絶対に次からはできるようにするから──」

「ごめんね、悪いけれど、あなたに次なんてもうないの」

「え──、ウソだよね……」

不穏ながらも、穏やかな笑みを浮かべた女性の言葉に、レシアは表情を凍り付かせる。
すると、隣にいた長身でツンツン頭。挑発的な目つきをした男が口を開く。

「わざわざ俺たちがお前みたいな役立たずのクズに出向いてやったのもそのためだ。精霊だってことで、無駄飯ぐらいの雑魚のお前でも、少しは強くなると思って我慢して起用してきたが、もう我慢ならん。これ以上足かせのお前といるとストレスで血管が部ちぎれそうになる」

「冗談だ、冗談だよね。嘘だって言ってよ──」

明らかに動揺している少女。しかし話している二人は表情を全く変えない。

「悪いけど本当よ。あなたとはこれで最後よ。元気でね」

「本当であれば今までお前に投資してきた無駄金を全部請求してやりたい気分なんだ。それをしないだけありがたいと思ってくれ」



「本当に言ってるの、ノダルさん、ヴィヴィアンさん。嘘だよね」

少女は体を震えさせながらも、その言葉を受け入れまいと涙を必死にこらえているのがわかる。
だが、二人はそんな少女を見下したまま微動だにしない。

「みんな、あの男がノダルよ」

「──あれがか、レディナ」

レディナが指をさしたのは長身でツンツン頭。挑発的な目つきをした男。なるほどね、何か嫌そうなヤツだ。

「待ってよ。私達仲間でしょ。あの遺跡で出会った時、あなたを救ってあげるって言ったよね。約束したよね!」

「だな、あの時はお前がそれを望んでいたから」

「だ、だったら──」


「あの時は、お前に俺たちが労力をかけるだけの価値があると思っていたからな。実際お前からあふれ出る魔力にはそれだけの可能性を感じた。しかしふたを開けてみればそれを帳消しにするようなへぼっぷり。自分の魔力もろくに制御できないようなクソザコだとは予想もしなかったぜ──」

「ひ、ひどい──」

少女の目が大きく見開く。その言葉に心の底から絶望しているのがよくわかる。

「そういうことだ、じゃお前と俺たちの関係もこれまでた。じゃあな。達者で暮らせよ」

ノダルはそう告げて少女に背を向ける。それから軽く手を振って女性と一緒にドア──、つまり俺たちがいる方へと歩いて来た。

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