~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間そのスキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がる。なお俺を追放したパーティーは没落した模様

静内 燕

第15話 唯一王 強力な冒険者と出会う

「はいはい。一人じゃ怖いからみんなで行こうってことか。雑魚で唯一王の貴様が考えそうな策だな」

言い訳にしか聞こえてないってことか。勝手にそう思ってろ。


「フライ。お前は一人で行くのが怖いからこうやってみんなで行こうとしているみたいだが、こっちとしては大きなお世話なんだよ」

「別に、フライさんは一人で行くのが怖いから仲間を募っていたわけじゃ……」

「いいよフリーゼ。言った所で無駄だから」

どんな弁解をしたところで、聞き入れたりはしない。今までこいつとパーティーを組んでいたわけだからわかる。


「まあ、結果は火を見るように明らかだ。先にお宝を手に入れるだろうけど。お前なんかに分けてやらないからな。全部俺たちが独占してやるからな。残念だったなフライ」

「ああ、別パーティーだからな。死なないようには祈ってやろう」

「そうよ、次からはあんたがピンチになっても、助けてあげられる保証なんてないから、注意しなさいよ」

ウェルキの自信満々な言葉を皮切りに、アドナとキルコも自慢げに言ってくる。
わかってる。こいつらに借りなんて、絶対作りたくない。

「すいません。海底遺跡への冒険に来たんですけど……」

「わ、私達もです。ここでよろしいんでしょうか?」

そんな会話をしていると、他のパーティーたちもやってきた。三パーティーほどで、どれもCランク、Dランク。平均的な強さといった感じだ。

それから次に現れたのは──。

「おい、海底遺跡への散策のために集まったんだが、場所はここで合っているのか?」

さっきより大きめの態度で話しかけているパーティーがいた。
あれ、Aランクパーティー「ジャランガ」じゃないか。

そして話しかけてきたのは、赤髪でツンツン頭の青年。「トラン」だ。その槍から放たれる攻撃はとても強力で、今まで何百もの強力な魔物たちをほぼ一人で打ち破ってきたと評判になっている。

SランクではなくAランクなのも彼以外のパーティー仲間がDランク程度の実力しかないからで、彼単体では間違いなくSランク相当の実力がある。

「はい、ここで合ってます。ギルドからは五つのパーティーが参加すると聞いていました。これですべてのパーティーがそろったようですね。了解しました。準備は大丈夫ですか? 休息などをとった方がよろしいかと」

「ああん? いらねえよ。俺たちはSランクパーティーなんだぜ。お前たちみたいな雑魚パーティーとは格が違うんだ。早く宝が欲しいんだよ。わかったら早く俺達を連れていかせろ」

「俺達は大丈夫だ。ウェルキの言う通り問題ない」

「わかったアドナ。お前たちはそれでいいんだな? 他のパーティーはどうだ。準備とか必要だろ」

アドナたちを半ば無視して他のパーティーにも意見を聞く。まず答えたのはトランだ。

「一時間ほど準備の時間が欲しい。そしたら大丈夫だ」

やはりまともにパーティーをているならそんな回答になるはず。しかし一時間で大丈夫か? 他の仲間たちは少し疲れているように見えるが。

他のパーティーにも聞いてみる。

「す、すいません。仲間が魔物にやられて怪我をしてしまって、治療をお願いできますか?」

「ごめん、休憩させてくれないか?」

「了解しました。しばし休憩してから出発とします。それでよろしいでしょうか」

フリーゼの言葉にウェルキが舌打ちをして反発をする。

「チッ、何だよ。なんで俺達Sランクパーティーがこんなザコどもに足並みをそろえなけりゃいけないんだよ。だったら先に行かせろよ」

「それはできません。遺跡に行くまでは私の特殊な加護がなければいけません。申し訳ありません。しばしお待ちください。あなた達も、これから魔物と戦うのですから準備をしたり、体力を回復なさったりしてはどうですか?」

フリーゼの言葉に不満げなウェルキ。すると、彼の肩に手をポンとアドナが置いて、俺たちに話しかけてきた。

「──仕方ない。わかった。俺たちは俺たちで準備や休息などを行う。だから時間になったら呼んでくれ」

ふう。ようやく話がまとまった。とりあえずこの場は収まった。


そして各自、この場を離れ、休憩をとったり、物資の確認などを行うため、パーティーごとに離れ離れになる。

俺とフリーゼは浜辺にいた。穏やかにざぶんざぶんと音がする波打ち際を眺めながら、これからについて話す。

「ごめんね。なんか騒がせちゃって。アドナたち、参加させないほうが良かったかな?」

「大丈夫です。ああいった感情的、攻撃的人物とはよく対面しています。それに一度お手合わせたことがありますが、冒険者の中ではなかなかの実力を持っています。不仲なようですが、手放すには惜しいかと」

「そうか、わかった」

確かに、彼女の言う通りだ。今は好き嫌いを言っている場合ではない。これは、フリーゼの目的にも必要なことなんだ。
だから我慢して一緒に行こう。

「じゃあ、犠牲者を出さないよう頑張っていこう」

「はい」

必ず、全員で帰ってこよう。そう誓う俺とフリーゼだった。

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