~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間そのスキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がる。なお俺を追放したパーティーは没落した模様
第3話 唯一王 ダンジョンの終点へ
ずっと敵がいないか、トラップがないか神経を集中していたせいで体力を消耗し、疲れた。
おまけに出て来た敵を何匹か退治するために戦った。仲間たちは早くしろと怒鳴っただけで何もしなかった。
そんな俺のことなどお構いなしにウェルキとアドナが先頭になって4人が扉の前へ。
息が上がっているというのに。
「待ってくれ、俺一人で魔物たちと戦ってきたんだ。息が落ち着くまで休ませてくれないか?」
さっきまで戦ってきた魔物は上級ゴブリンにフェンリルなど、本来ならばそれなりに強い。
パーティー全体で戦うべき相手を一人で相手にして来たのだから当然と言えば当然なのだが──。
ウェルキがゆっくりと歩いて俺に近づいてくる。
嫌な予感しかしない。
そして俺の胸ぐらをつかむ。
「お前さあ、ひょっとしてギャグで言ってるの? あえて言ってやるけどさ俺達さあ、弱くて遅いお前のためにずっとイライラしながら待ってやっているんだよ。それなのにこれ以上休ませろ。時間をくれと──? どれだけ俺たちの足を引っ張れば気が済むんだよ。俺たちをイライラさせることに楽しみでも覚えているのか? 本当にくそだなてめぇは!」
アドナとキルコも同調するように俺に追い打ちをかけてきた。
「あんたねぇ、どれだけ私たちの足を引っ張りたいのよ。あんたが魔物に時間を食っていたせいでどれだけロスしていると思っているの?」
「すまない。俺たちは貴様の遅さにイライラしながらここまで来ているんだ。だからこれ以上貴様のために時間を与える気などない」
誰一人として擁護する気はない。──予想はできていた。
ウェルキが軽蔑するような目つきで俺に言い放った。
「とりあえず行っておくが、唯一王。貴様、あまりに使えないからこのクエストが終わったらお前はこのパーティー首だ。他のパーティーにでも行ってくれ。お前には事情があったと言っておく。元S級パーティーってことで他のパーティーからもオファーは来るし、並のパーティーなら十分通用するはずだ」
「わかった」
「むしろここまでお前を首にしなかった方をほめてほしいぜ。大変だったんだぜ、遅くて使い物にならないお前の面倒を見るの。本当は土下座をして地面に頭がめり込むまで感謝してほしいくらいだぜ。俺たちに無駄飯を食わせていただいてありがとうございましたってな」
とうとう出たこの言葉。昨日、ドア越しに聞いていたからわかってはいたものの、やはり直接言われると精神的に来るものがある。とはいえ、こんな状態でパーティーにいても仕方がない。
答えなんて、一つしかなかった。
「──わかったよ。このクエストが終わったら俺はこのパーティーを抜ける。キルコも、ミュアも納得しているんだろ」
「当然よ、このお荷物。もう視界に入らないってだけで嬉しくてたまらないわ」
キルコは蔑んだ眼で、ミュアは申し訳なさそうな目で俺を見つめていた。
「──ということで、足かせの邪魔者とは今回でおさらばだ。そう思うと気分が清々してきた。じゃあ、入るぜ」
キィィィィィィィィ──。
ゆっくりと扉が開き始める。
扉の先にある光景。それは何もない部屋。
その中に、一人の人物。
その人物は、緑色のセミロング、ストレートの髪で肩がはだけたワンピースと、ひざ下まであるスカートをした女の人。
外見だけなら、俺たちと同い年くらいに見えた。
落ち着いた表情で、じっと俺たちを見つめている。
「ようこそ。ダンジョンの奥へ。まずはここまでたどり着いた事、お誉め致します。ここまでたどり着いたからには、さぞ実力のある冒険者たちであるとうかがえます」
放っている神々しいオーラが、彼女がこのダンジョンの主、「砂漠の精霊」であるということを表わしている。
するとウェルキがにやりと笑って一歩前に出る。
「ほほう、流石うわさに聞く『砂漠の精霊』ってとこか。まあ、どんな敵だろうと俺様の槍が貴様を貫いてやるぜ!」
その強さからくる圧倒的な自信。負けるという発想がみじんもないのがわかる。
アドナも、ゆっくりと彼女に向かって歩き出す。
「そうだ。貴様が強力な力を持つ精霊だということは聞いている。だが、俺たちもそれに負けない実力を持っている。おとなしく降伏して宝をよこせ」
すると精霊は、どこか軽蔑を含んだ表情になる。まるで俺たちを憐れむような目つき。
まあ、出会ってすぐに宝を寄越せだもんな。これじゃあ盗賊と変わらない。
「私の名はフリーゼ。さあ、私は逃げも隠れもしません。かかってきなさい」
「へへっ、ずいぶん余裕ぶった態度だな。あとで吠え面かくなよ」
アドナとウェルキの自信満々な態度。フリーゼは何も言わず、表情も変えずにただ俺たちを見ているだけ。
「吠え面をかくかどうかは、戦ってみてわかります」
その言葉を聞いたキルコとミュアも、戦いが始めるのだと察し、互いに武器を取る。俺も、勝てるかどうかわからないけれど、全力を出すしかない。
「おい唯一王。何ボケッとしているんだよこのバカ! さっさと術式を使え」
ウェルキの罵声、言われなくてもわかってる。
この術式は魔力消費が激しく精神統一に時間がかかる。そんなこともお構いなしに彼が突っ込んでいく中、俺は深呼吸して心を落ち着けさせる。
そして──。
マジカルガード!
すると、俺たち全員の体が真っ白い光に包まれ始める。
これが俺の発動した術式だ。
これで俺たちパーティーが受ける物理攻撃は半減。ウェルキとアドナは安心して接近戦を戦える。
それからもう一つ。
フレア・ストーム!
前線の二人は物理攻撃が中心だから、物理攻撃を、後方のキルコとミュアは魔法攻撃が中心なので魔法攻撃を2倍にはね上げる術式だ。
これは魔力消費が激しく、適性がある人がかなり限られる術式。 発動できる冒険者はかなり貴重な存在ではあるが、パーティーからは誰にでもできる雑用術式と言い放たれ、全く評価されたことはない。
何はともあれ、全員が攻撃、防御それぞれ上がった状態。これでみんなは有利に戦えるはずだ。
フリーゼは右手を天に向かって上げると、彼女の右手に剣が出現し始める
神々しい形状の剣、眩しいくらいの魔法のオーラが放たれている。
彼女はとくに詠唱をするわけでもなく、スッと、剣を彼に向けた。
いでよ、星脈聖剣<ステラブレード>!
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