悪い勇者召喚に巻き込まれて殺されかけましたが、女将軍と属国王女に助けられたので、復讐がてら手助けする事にしました

克全

第76話:快復と支配

 俺の頭では敵の考えを見抜くことなどできなかった。
 だからそれを見極めるまではうかつに最前線にでることはためらわれた。
 しかたなくエリザベス王女とソファーに並んで戦況を見つめることにした。
 全軍で乗り込んできた敵だが、砂漠に入って来たのは不良勇者だけだった。
 今回現れた不良勇者は3人だけだった。
 
 だがその事は鳥たちの報告で事前に分かっていた。
 剣の勇者はこの戦いに意味はないと思っているようだ。
 敵が何を考えているのか全く分からなかったが、迎撃しない訳にはいかない。
 鳥たちには可哀想だが、死ぬことを前提に迎撃してもらった。

 今回の戦いも、敵は前回とは違う戦法を使ってきた。
 勇者が砂漠に入るのは同じだが、王都方面に攻め込もうとはしない。
 砂漠の端に留まって、迎撃してくる鳥たちを殺すだけだ。
 勇者が殺した鳥が砂漠を上に積み重なっていく。
 根本的に今までとは違う戦法をしかけてきたのかもしれない。

「モンドラゴン国王陛下、敵の攻撃が異様に感じられます」

 エリザベス王女が俺の不安を言い当てるような事を言ってきた。
 
「そうですね、何かとんでもない策を考えているのかもしれません。
 鳥たちに迎撃させるのを中止します」

 そうエリザベス王女に言った時には、もう鳥たちに攻撃しないように伝えていた。
 鳥たちの攻撃が止まったのに、勇者たちは王都方面に来ようとしない。
 どう考えても砂漠の端で何かやるつもりだ。
 それも鳥の攻撃を前提にした策なのだろう。
 これ以上の攻撃は敵に利するだけだ。

「魔術士部隊詠唱準備。
 輸送部隊、侵攻。
 大きな振動を起こすように鳥の山まで行進しろ」

 索敵用の鳥たちがジョージ王太孫の命令を聞き伝えてくれる。
 その場の光景も眼でとらえて伝えてくれる。
 心の中に嫌な予感がムクムクと湧き上がってきた。
 敵は明らかにデザートワームを誘き寄せようとしている。
 その敵は禁忌とされた召喚魔術を復活実用化させている。

「俺は現場に行ってくる。
 後の事は頼んだぞ、エリザベス王女」

 もう俺には言葉を飾る余裕などなかった。
 敵はデザートワームを支配下に置くつもりだ。
 俺ならば、デザートワームであろうとそのまま戦えば勝てると思う。
 だが、敵がデザートワームに掛けられた呪いを解呪して、元の力を取り戻してしまったら、勝てるかどうかわからない。
 デザートワームの正体はそれくらい強大な存在なのだ。

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