偽装結婚を偽装してみた
Chapter.47
自室で目が覚める。アラームより先に起きたのなんていつ以来だろう。
楽しみなことがあるから早く起きれるなんて、我ながら少年のような心の持ち主だ。
ベッドから降りて、洗面所に行く。
自分のものとは別に置かれた、ひぃなの歯ブラシとメラミンのコップが目に留まる。
(一緒に住んでるんだなー)
嬉しさにニヤニヤしながら歯を磨いて顔を洗う。鏡を見て顔のコンディションなんかもチェックしてしまう。
少し早い鼓動を携えて、リビングへ続くドアを開けた。すぐ脇のキッチンから、人の動く音がする。
「おはよう」
リビングとキッチンの境目から声をかけてみる。
「あ、おはよう」
ひぃながエプロンをして、卵を溶いている。
「ごめんね、今作ってるから、ちょっと待ってて」
「急がなくていいよ、早く起きちゃっただけだから」
「うん。ありがとう」
(うわー!)
と、脳内に棲んでいる小さな攷斗が攷斗本体の脳内を走り回る。あの時思い切って言ってよかった! と両手を挙げて、歓喜の雄たけびをあげている。
何度となく妄想した姿のひぃなが、いま現実に、目の前にいる。
妄想の中ではこの段階で後ろから抱きついたりしてイチャイチャしていたが、さすがにそういうわけにもいかない。
平静を装い、リビングのソファに座る。
テーブルの上には二人分のカトラリーセットが置かれている。中央には攷斗が誕生日に渡した花が活けてある花瓶。ボリュームが少し減っているので、都度手入れしているようだ。
新聞はネットで契約していて、出社してからタブレットで読むのでテレビを点ける。
(これから毎日こんな状態とか、幸せすぎない?)
もっと早くからこうなりたかったが、きっとこのタイミングだから上手くいったのだ。
じゅわぁと熱い鉄板に液体が流し込まれた音が聞こえる。さっき溶いていた卵を焼いている映像が思い浮かぶ。
カウンターの向こう側で料理をするひぃなが見たくて、座る位置を変えてみる。サイドソファからだとテレビ画面は見えないが、別に問題ない。
テキパキと動くひぃなを、まなじりを下げた攷斗が見つめる。集中しているのか、攷斗の視線には気付いていないようだ。
トーストが焼けた音を合図に、あちち、と小さく言いながらトースターからパンを取り出し半分に切っている。うんと小さくうなずいて、リビングへ目線を移す。攷斗と目が合って、少し驚いた顔を見せたあと照れたように笑った。すぐにシンクへ向き直り、何かを持ち上げる動作をした。
「おまたせ」
大きな皿を両手に持って、ひぃながリビングへやってくる。
「おお、カフェ飯だ」
一枚を両手で受け取り、攷斗が嬉しそうに言った。
「ごめんね、簡単なのしかできなかった」
「いや、充分だよ。ありがとう」
スクランブルエッグと茹でたソーセージにコールスロー、半分に切ったトーストが食パン一枚分。
ひぃなは自分の分の皿を置くと、再度キッチンへ行ってトレイにコーンスープの入ったカップと調味料を持ってくる。
「味付けはご自由にどうぞ。お茶とか飲む?」
スープカップを置きながら問うひぃな。
「うん。あ、いいよ、俺やる」
言いながら立ち上がる攷斗に
「ありがとう」
ひぃなが礼を言う。
キッチンへ赴いた攷斗が片手に二つのグラスを持ち、冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出す。
「ひなもお茶でいい?」
「うん」
攷斗の右手からグラスを二つとも受け取る。空いた手でペットボトルのキャップを開けたので、そのまま注いでもらう。
コップをテーブルに置いて、「じゃあ」と、着席した攷斗を見やる。
二人が胸の前で手を合わせ「「いただきまーす」」と唱和した。
楽しみなことがあるから早く起きれるなんて、我ながら少年のような心の持ち主だ。
ベッドから降りて、洗面所に行く。
自分のものとは別に置かれた、ひぃなの歯ブラシとメラミンのコップが目に留まる。
(一緒に住んでるんだなー)
嬉しさにニヤニヤしながら歯を磨いて顔を洗う。鏡を見て顔のコンディションなんかもチェックしてしまう。
少し早い鼓動を携えて、リビングへ続くドアを開けた。すぐ脇のキッチンから、人の動く音がする。
「おはよう」
リビングとキッチンの境目から声をかけてみる。
「あ、おはよう」
ひぃながエプロンをして、卵を溶いている。
「ごめんね、今作ってるから、ちょっと待ってて」
「急がなくていいよ、早く起きちゃっただけだから」
「うん。ありがとう」
(うわー!)
と、脳内に棲んでいる小さな攷斗が攷斗本体の脳内を走り回る。あの時思い切って言ってよかった! と両手を挙げて、歓喜の雄たけびをあげている。
何度となく妄想した姿のひぃなが、いま現実に、目の前にいる。
妄想の中ではこの段階で後ろから抱きついたりしてイチャイチャしていたが、さすがにそういうわけにもいかない。
平静を装い、リビングのソファに座る。
テーブルの上には二人分のカトラリーセットが置かれている。中央には攷斗が誕生日に渡した花が活けてある花瓶。ボリュームが少し減っているので、都度手入れしているようだ。
新聞はネットで契約していて、出社してからタブレットで読むのでテレビを点ける。
(これから毎日こんな状態とか、幸せすぎない?)
もっと早くからこうなりたかったが、きっとこのタイミングだから上手くいったのだ。
じゅわぁと熱い鉄板に液体が流し込まれた音が聞こえる。さっき溶いていた卵を焼いている映像が思い浮かぶ。
カウンターの向こう側で料理をするひぃなが見たくて、座る位置を変えてみる。サイドソファからだとテレビ画面は見えないが、別に問題ない。
テキパキと動くひぃなを、まなじりを下げた攷斗が見つめる。集中しているのか、攷斗の視線には気付いていないようだ。
トーストが焼けた音を合図に、あちち、と小さく言いながらトースターからパンを取り出し半分に切っている。うんと小さくうなずいて、リビングへ目線を移す。攷斗と目が合って、少し驚いた顔を見せたあと照れたように笑った。すぐにシンクへ向き直り、何かを持ち上げる動作をした。
「おまたせ」
大きな皿を両手に持って、ひぃながリビングへやってくる。
「おお、カフェ飯だ」
一枚を両手で受け取り、攷斗が嬉しそうに言った。
「ごめんね、簡単なのしかできなかった」
「いや、充分だよ。ありがとう」
スクランブルエッグと茹でたソーセージにコールスロー、半分に切ったトーストが食パン一枚分。
ひぃなは自分の分の皿を置くと、再度キッチンへ行ってトレイにコーンスープの入ったカップと調味料を持ってくる。
「味付けはご自由にどうぞ。お茶とか飲む?」
スープカップを置きながら問うひぃな。
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