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偽装結婚を偽装してみた

小海音かなた

Chapter.41

「食べたいものありすぎて困る」
「難しいのはできないかもよ?」
「ぜーんぜん。ひなの手料理ってだけで嬉しい」
 そう言いつつ、思い浮かんだ料理名を攷斗が羅列する。
 ハンバーグ、エビフライ、餃子、カレー……
「子供なの?」
「ちがうよ。外ではあんまり食べないけど、自分で一人分作るにはちょっと面倒な料理だよ」
「確かに」
「肉じゃがとか生姜焼きとかの定番だって食べたいし」
 作れなくはないラインラップにひぃなが少しほっとする。
「まぁ、無理しない範囲でね。俺が帰れないときとか、その逆もあるでしょ」
「私がすごい残業になるのなんて、年に何回かしかないけどね」
「疲れてるときも無理しないでいいし」
「うん。ありがとう。なるべく食べてもらえるように頑張るね」
「マジで嬉しいわー。あ、見えてきた」
 目的の建物を見つけて、攷斗がウインカーを出す。店に併設された駐車場に入って、シートベルトを外した。
「ここがうちから一番近いスーパーなんだけど」
 さすが都心。いままで使っていたスーパーより高級な品ぞろえのチェーン店だ。駐車場の反対側には大手カフェもあって、なかなか便利そう。
 スーパーの自動ドアから店内に入る。
「けっこう買う?」
「うーん…そこそこ」
「じゃあ一応、これ使うか」
 と、かごを乗せてカートを使う。
「うちいま多分、飲み物と缶詰くらいしかないから、フルで買っていいよ。冷蔵庫ほぼカラだわ。あ、おでこに貼る冷却シートは山ほど入ってるけど」
「そうなんだ」ひぃなが小さく笑う。「調味料とか見てくれば良かったな」
「お中元だかお歳暮だかにもらったおしゃれなやつはどっかにあったはずだけど」
「なるほど……」
 オシャレな調味料は常用には向いていなさそうなイメージがある。独り暮らしのときに使っていた調味料類は、冷蔵庫と一緒に母親の住む祖父母宅に送ってしまった。
 塩コショウや砂糖などはストックがあってもそこまで困らないだろうが、味噌や醤油は使い切る前に古くしそうで、在庫の有無がわからない現状では購入がためらわれる。
「足りなかったら追加で買うのに車出すよ。この店歩くとちょっと距離あるから、重いものは買い出し大変だし」
 それはそれで申し訳ない。
「自転車買おうかな」
「それでもいいけど、近くにコンビニあるし、食材の宅配使ってもいいよ」
 そうか、その手があった、と思う。
 そこまで食料品を消費しない一人暮らしではなかなか手が出ない手法だ。
「いままではどうしてたの?」
「インスタントかコンビニか、仕事関係で外食。たまに宅配メシ」
 男性の一人暮らしっぽいなぁと思うが、手を抜きたいときはひぃなも同じような食卓だった。料理を作るのは嫌いではないので、自炊を選択していただけだ。

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