偽装結婚を偽装してみた
Chapter.23
トレイ上の食べ物がなくなりそうな頃、
「なにか、聞いてる?」
ひぃながぽつりと問う。ご飯を口に運びながら不思議そうな顔をする堀河に、
「その……今回の、こと」
もう少し具体的な内容を付け加えて再度聞いた。
「いや? 急すぎてビックリしたわよ。なにがどうしてそうなったの」
夕べ棚井から聞いたことは忘れたふりをして、堀河が問い返した。
幼馴染に何も言わないのは気が引けて
「…話すと若干長くなる」
親友として答える。
「いいわよ、聞くわよ。河岸変えてミーティングという名のティータイムしましょう」
さすが社長。超フリーダムだ。
定食屋を出て、国道沿いのオープンカフェへ移動する。テラスはさすがに寒いので室内の角席へ着席した。
オーダーした品が来たところで
「で? どういう経緯だったの?」
堀河が促した。
ひぃなが昨夜のことを思い出しながら、居酒屋での経緯をざっくりと説明する。契約上の都合による婚姻、という要点だけかいつまんだので、本当に簡潔なあらすじのようになってしまった。
「ひぃな、それ……」
「良くないのはわかってる。だから万が一のことがあったとき、棚井を巻き込みたくなくて……」
堀河が言いたかったのはそういうことじゃないが、
「万が一ってなによ」
ぐっと堪えて気になった点を聞き返す。
「なにって……なんだろ……」
「いいじゃない、普通に結婚生活すれば。ひぃなだって、棚井のこと悪からず思ってるから承諾したんでしょ?」
「それは…そうだけど……。私の気持ちだけじゃさ……」
(だからちゃんと気持ち伝えろって言ったのに!)
堀河が脳内で攷斗の胸ぐらを掴みつつ
「棚井だってそうだと思うわよー? ひぃなのこと、どうでも良かったら、その話の流れでプロポーズなんかしないでしょ」
怒りをひた隠し、笑顔で続ける。
「ぷろぽーず……」
「されたんでしょ?」
「…いや…?」
「え?」
堀河がさすがに眉根を寄せる。
「なにも言われなかったの?」
「いや…言われたけど、あれは…プロポーズ……?」
「なんて言われたの」
「えーと……」再び記憶を呼び起こす。「“しようよ、結婚…カッコカリ”だったかな」
「はぁ?!」
「ちょっと声でかい」
驚いてこちらを見る他の客に苦笑で会釈をしながら、今度はひぃなが眉根を寄せた。
「あいつマジッ」
堀河が吐き捨てるように棚井を小声でなじる。
「……まぁ、二人のことだからあんまり口出しはしないけど……」頭を抱えて「棚井もひぃなと一緒で、どーでもいい相手と結婚なんてしないと思うわよ?」堀河が攷斗の肩を持つ。
「そう…だよね……」
返事するものの、半信半疑だ。
自信なさげにティーカップに口を付けるひぃなを見ながら、いっそ帰りの車内での会話を言ってやろうかしらと堀河は思うが、ひぃなの性格上、他人から言われてもすんなり受け入れないだろう。
堀河は内心奥歯を噛みしめながら――実際無意識に噛みしめていたが――二人の行く末を見守ることにした。しかし内心は怒りに満ちていて。
(あいつマジシメる……!)
独り秘かに誓った。
* * *
「なにか、聞いてる?」
ひぃながぽつりと問う。ご飯を口に運びながら不思議そうな顔をする堀河に、
「その……今回の、こと」
もう少し具体的な内容を付け加えて再度聞いた。
「いや? 急すぎてビックリしたわよ。なにがどうしてそうなったの」
夕べ棚井から聞いたことは忘れたふりをして、堀河が問い返した。
幼馴染に何も言わないのは気が引けて
「…話すと若干長くなる」
親友として答える。
「いいわよ、聞くわよ。河岸変えてミーティングという名のティータイムしましょう」
さすが社長。超フリーダムだ。
定食屋を出て、国道沿いのオープンカフェへ移動する。テラスはさすがに寒いので室内の角席へ着席した。
オーダーした品が来たところで
「で? どういう経緯だったの?」
堀河が促した。
ひぃなが昨夜のことを思い出しながら、居酒屋での経緯をざっくりと説明する。契約上の都合による婚姻、という要点だけかいつまんだので、本当に簡潔なあらすじのようになってしまった。
「ひぃな、それ……」
「良くないのはわかってる。だから万が一のことがあったとき、棚井を巻き込みたくなくて……」
堀河が言いたかったのはそういうことじゃないが、
「万が一ってなによ」
ぐっと堪えて気になった点を聞き返す。
「なにって……なんだろ……」
「いいじゃない、普通に結婚生活すれば。ひぃなだって、棚井のこと悪からず思ってるから承諾したんでしょ?」
「それは…そうだけど……。私の気持ちだけじゃさ……」
(だからちゃんと気持ち伝えろって言ったのに!)
堀河が脳内で攷斗の胸ぐらを掴みつつ
「棚井だってそうだと思うわよー? ひぃなのこと、どうでも良かったら、その話の流れでプロポーズなんかしないでしょ」
怒りをひた隠し、笑顔で続ける。
「ぷろぽーず……」
「されたんでしょ?」
「…いや…?」
「え?」
堀河がさすがに眉根を寄せる。
「なにも言われなかったの?」
「いや…言われたけど、あれは…プロポーズ……?」
「なんて言われたの」
「えーと……」再び記憶を呼び起こす。「“しようよ、結婚…カッコカリ”だったかな」
「はぁ?!」
「ちょっと声でかい」
驚いてこちらを見る他の客に苦笑で会釈をしながら、今度はひぃなが眉根を寄せた。
「あいつマジッ」
堀河が吐き捨てるように棚井を小声でなじる。
「……まぁ、二人のことだからあんまり口出しはしないけど……」頭を抱えて「棚井もひぃなと一緒で、どーでもいい相手と結婚なんてしないと思うわよ?」堀河が攷斗の肩を持つ。
「そう…だよね……」
返事するものの、半信半疑だ。
自信なさげにティーカップに口を付けるひぃなを見ながら、いっそ帰りの車内での会話を言ってやろうかしらと堀河は思うが、ひぃなの性格上、他人から言われてもすんなり受け入れないだろう。
堀河は内心奥歯を噛みしめながら――実際無意識に噛みしめていたが――二人の行く末を見守ることにした。しかし内心は怒りに満ちていて。
(あいつマジシメる……!)
独り秘かに誓った。
* * *
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