気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!
218 カップルはどこでもイチャつきやがる
重量オーバーなこともあり、電車はノロノロ運転で博多へと進んだ。
いつもの倍の時間を要する。
1時間ぐらいかかった。
博多駅に着くと、そこから地下へと降りて、福岡市が運営する地下鉄に乗り込む。
大濠公園駅で降りれば、あとは花火大会の会場まですぐだ。
と、言いたいところだが、そうはいかない。
俺とアンナが大濠公園駅で降りたが、一向に脚を進めることはない。
いや、身動きが取れないのだ。
列車から降りると、大勢の人々で駅から大行列。
地下から出ることができない。
それは他の人間も同様だ。
一歩進んだと思ったら、また立ち止まる。それが延々繰り返される。
地下から地上に出るまで、なんと45分もかかった。
「なんなんだ? 高々、花火ごときでこんなお祭り騒ぎなのか? バカじゃないのか、こいつら……」
あまりにも時間がかかるので、俺はイライラしていた。
それを見たアンナが、俺の肩に優しく触れる。
「タッくん。そんな怖い顔しちゃダメだよ☆ こういうのは、雰囲気を楽しまないと☆」
「楽しむ? これ苦行じゃないのか?」
俺はこういうこと、未経験だから彼女の言う、楽しみ方とやらが理解できない。
行列と言えば、コミケぐらいしか経験ないし。
「じゃあさ、こういうのはどう? 彼氏と彼女は仲良くしていると、どんな所でも二人の世界に入れるっていうの☆」
「は? つまり、どういうことだ?」
「こう、するの☆」
何を思ったのか、アンナは俺の左手を握る。
ただ手を繋ぐわけではない。
互いの指と指を絡み合う手つなぎ。
なっ!? こ、これは俗に言う恋人繋ぎというやつでは!?
思わず頬が熱くなる。
「あ、アンナ!? いいのか、こんなことして?」
「だって、タッくんってさ。ドキドキする体験をしたら小説に使えるかなって☆ これも取材だよ☆」
緑の瞳がキラリと輝く。
繋いだ手をちょっと宙に上げて見せ、「ねっ?」と微笑む。
「ああ……確かに。待ち時間も二人なら楽しめてしまうのか、カップルてやつは」
「ふふ☆ あ、そろそろ公園が見えてきたよ」
※
結局、博多駅を出てから会場に着くまで一時間半もかかった。
で、肝心の会場である大濠公園なのだが。
元々は福岡城の外堀であって、その城跡を再利用し、舞鶴公園と大濠公園として市民に長年愛されている。
巨大な湖を中心にして、周辺に様々な施設が設置されている。
ちょうど公園を一周すると二キロぐらいあるので、サイクリングやジョキングとしても利用されるし。
春には桜並木が立派に咲き誇る。
他にも池にボート。
また、かの有名なマリリン・モンローが新婚旅行で立ち寄った老舗の高級レストランもあるらしい。
と、ここまでは、歴史ある都市公園なのだが……。
いつもなら、スタスタと中に入って、湖を泳ぐ留鳥や渡り鳥を目にするはずなのに。
「なにも見えん!」
お祭りの醍醐味とも言える屋台ですら、近づけないほど、人混みでなにも見えない。
背伸びしても、公園の内部が確認できない。
「はぁ……これじゃ、花火大会の取材にならんぞ」
俺が愚痴を吐いていると、アンナが苦笑する。
「はは。仕方ないよ。それだけ、みんなこの花火大会が大好きなんだよ……」
「しかし、これじゃ花火を近場で見れんぞ?」
「う~ん……あ、あそこなら見れそうじゃない!」
そう言ってアンナが指差したところは、湖からだいぶ離れた茂み。
正直、暗いし蚊も飛んでいるし、ゴミも地面に転がっているし……。
ムードなんて皆無だ。
しかも、数日前に雨が降ったこともあって、芝生がちょっと濡れている。
「あそこから花火を見るのか?」
「うん☆ ほら、さっきも言ったけど、カップルはどこでも楽しめるでしょ☆」
そう言ってウインクしてみせる。
「まあ、アンナがそう言うなら……」
※
ドーン! と大きな音と共に、夜の空に煌びやかピンクの花が描かれる。
「たまや~ かぎや~」
なんて叫べれるか!
花火が遠すぎる。
これなら、どっか近くの高層レストランで晩飯食ったほうが、キレイに見えるだろ。
「アンナ。なんかショボくないか?」
「ううん☆ そんなことない。大事なのは、タッくんと初めてきたこと。初めて見れたことなんだから」
そう言って、瞼を閉じ、胸の前で手を組んで見せる。
この空間を彼女なりに楽しんでいるようだ。
しかし、かれこれ一時間ぐらい立って、花火を観ている。
ちょっと疲れてきた。
座りたいところだが、地面が汚い。
「お、そうだ」
俺はジーパンの後ろポケットから、タケノブルーのハンカチを取り出し、芝生の上に置いてみる。
そして、アンナに声をかける。
「なあ。疲れたろ? これに座ってくれ」
「え?」
「せっかくの浴衣が汚れちゃ、後味悪いだろ? 俺のハンカチは洗えばいいんだから」
俺がそう言うと、アンナは遠慮がちに腰を下ろす。
だが、その顔はどこか、嬉しそうだ。
「ありがと、タッくんって優しい☆」
「男として当然のことをしたまでだ。アンナは女の子だからな」
しれっと紳士アピールしておく。
って……あれ?
隣りにいる浴衣美少女は、少年だったぁ!
俺ってば、洗脳されてるぅ!
いつもの倍の時間を要する。
1時間ぐらいかかった。
博多駅に着くと、そこから地下へと降りて、福岡市が運営する地下鉄に乗り込む。
大濠公園駅で降りれば、あとは花火大会の会場まですぐだ。
と、言いたいところだが、そうはいかない。
俺とアンナが大濠公園駅で降りたが、一向に脚を進めることはない。
いや、身動きが取れないのだ。
列車から降りると、大勢の人々で駅から大行列。
地下から出ることができない。
それは他の人間も同様だ。
一歩進んだと思ったら、また立ち止まる。それが延々繰り返される。
地下から地上に出るまで、なんと45分もかかった。
「なんなんだ? 高々、花火ごときでこんなお祭り騒ぎなのか? バカじゃないのか、こいつら……」
あまりにも時間がかかるので、俺はイライラしていた。
それを見たアンナが、俺の肩に優しく触れる。
「タッくん。そんな怖い顔しちゃダメだよ☆ こういうのは、雰囲気を楽しまないと☆」
「楽しむ? これ苦行じゃないのか?」
俺はこういうこと、未経験だから彼女の言う、楽しみ方とやらが理解できない。
行列と言えば、コミケぐらいしか経験ないし。
「じゃあさ、こういうのはどう? 彼氏と彼女は仲良くしていると、どんな所でも二人の世界に入れるっていうの☆」
「は? つまり、どういうことだ?」
「こう、するの☆」
何を思ったのか、アンナは俺の左手を握る。
ただ手を繋ぐわけではない。
互いの指と指を絡み合う手つなぎ。
なっ!? こ、これは俗に言う恋人繋ぎというやつでは!?
思わず頬が熱くなる。
「あ、アンナ!? いいのか、こんなことして?」
「だって、タッくんってさ。ドキドキする体験をしたら小説に使えるかなって☆ これも取材だよ☆」
緑の瞳がキラリと輝く。
繋いだ手をちょっと宙に上げて見せ、「ねっ?」と微笑む。
「ああ……確かに。待ち時間も二人なら楽しめてしまうのか、カップルてやつは」
「ふふ☆ あ、そろそろ公園が見えてきたよ」
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結局、博多駅を出てから会場に着くまで一時間半もかかった。
で、肝心の会場である大濠公園なのだが。
元々は福岡城の外堀であって、その城跡を再利用し、舞鶴公園と大濠公園として市民に長年愛されている。
巨大な湖を中心にして、周辺に様々な施設が設置されている。
ちょうど公園を一周すると二キロぐらいあるので、サイクリングやジョキングとしても利用されるし。
春には桜並木が立派に咲き誇る。
他にも池にボート。
また、かの有名なマリリン・モンローが新婚旅行で立ち寄った老舗の高級レストランもあるらしい。
と、ここまでは、歴史ある都市公園なのだが……。
いつもなら、スタスタと中に入って、湖を泳ぐ留鳥や渡り鳥を目にするはずなのに。
「なにも見えん!」
お祭りの醍醐味とも言える屋台ですら、近づけないほど、人混みでなにも見えない。
背伸びしても、公園の内部が確認できない。
「はぁ……これじゃ、花火大会の取材にならんぞ」
俺が愚痴を吐いていると、アンナが苦笑する。
「はは。仕方ないよ。それだけ、みんなこの花火大会が大好きなんだよ……」
「しかし、これじゃ花火を近場で見れんぞ?」
「う~ん……あ、あそこなら見れそうじゃない!」
そう言ってアンナが指差したところは、湖からだいぶ離れた茂み。
正直、暗いし蚊も飛んでいるし、ゴミも地面に転がっているし……。
ムードなんて皆無だ。
しかも、数日前に雨が降ったこともあって、芝生がちょっと濡れている。
「あそこから花火を見るのか?」
「うん☆ ほら、さっきも言ったけど、カップルはどこでも楽しめるでしょ☆」
そう言ってウインクしてみせる。
「まあ、アンナがそう言うなら……」
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ドーン! と大きな音と共に、夜の空に煌びやかピンクの花が描かれる。
「たまや~ かぎや~」
なんて叫べれるか!
花火が遠すぎる。
これなら、どっか近くの高層レストランで晩飯食ったほうが、キレイに見えるだろ。
「アンナ。なんかショボくないか?」
「ううん☆ そんなことない。大事なのは、タッくんと初めてきたこと。初めて見れたことなんだから」
そう言って、瞼を閉じ、胸の前で手を組んで見せる。
この空間を彼女なりに楽しんでいるようだ。
しかし、かれこれ一時間ぐらい立って、花火を観ている。
ちょっと疲れてきた。
座りたいところだが、地面が汚い。
「お、そうだ」
俺はジーパンの後ろポケットから、タケノブルーのハンカチを取り出し、芝生の上に置いてみる。
そして、アンナに声をかける。
「なあ。疲れたろ? これに座ってくれ」
「え?」
「せっかくの浴衣が汚れちゃ、後味悪いだろ? 俺のハンカチは洗えばいいんだから」
俺がそう言うと、アンナは遠慮がちに腰を下ろす。
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