精霊と共に

キリくん

アークライトの神話

目を覚ますとベッドの上だった。どうやら病院のようだ。


「・・・俺はよく寝かされてるな」


何かある度にベッドに寝かされてるような気がする。


「デジャブってやつなのかな・・・ってあれ?」


ふと横を見るとセリアが椅子に座りながら寝ていた。


もしかしてずっと看病してくれていたのか?


「スー・・・スー・・・」
「ありがとうセリア」


その時誰かが病室に入ってきた。


「アーサー君!よかった、目を覚ましたんだね」
「セレナ!」


入ってきたのはセレナだった。見た感じは元気そうだ。


「大丈夫なのかセレナ!おかしな所とかはないか?」
「うん。大丈夫だよ。・・・ありがとうねアーサー君。私・・・何も覚えてないけどアーサー君が助けようとしてくれたのは何となく覚えてるんだ。本当にありがとう」
「そんな、あいつから助けたのは学院長先生だよ。俺は大して・・・」
「ううん。そんなことないよ。私がおかしかったことに気がついたのもアーサー君なんだよね?アーサー君がいなかったらどうなってたかわからないよ・・・。だから大したことしてないなんて言わないで」
「・・・ありがとうセレナ。本当に良かった」


友達を助けられた。本当に・・・本当に良かった。俺はもう誰も失わせはしない。絶対にだ。


「ん・・・・・・はっ!アーサー!!」
「おはようセリア。心配かけたな」
「━━ーー!おはようじゃないわよ!!いっつも心配かけさせて!!!」
「ご、ごめん」
「心配・・・させないでよ・・・」
「セリア・・・」


本当に心配させてたんだな。


「ありがとうな。心配してくれて」
「もう、こんなことしないで・・・」
「それは保証できないな。あはは・・・」
「もう!バカ!!」
「イテッ!何すんだよ!」


保証はできない。セリアは俺の大切な親友だ。俺が守ってみせる。ロットも、父さんも、母さんも・・・みんな、みんな守ってみせる。


「えーっと・・・セリア?もういいかな・・・?」
「せ、セレナ!?い、いつからそこに?」
「えっと・・・さっきから居たんだけど・・・」
「え、あ、えっ・・・えっと・・・その、これは・・・見なかったことにしてー!!!!」


顔を真っ赤にして走って逃げてしまった。


「せ、セリアー!?アーサー君!私セリア追いかけるからまた後でね!」
「ちょっ、セレナ!」


セレナまで行ってしまった。任せても大丈夫かな?


「あ、アーサー!良かった目を覚ましたんだね!」
「たく、心配させやがって」
「サラ!ロット!」


入れ違いで入ってきたのはサラとロットだった。


「ところで今セリアとセレナがすごい速さで出てきたけど何かあったの?」
「そんな大したことじゃないよ」
「そうなの?あ、そうだ。もうすぐアストさん達が来ると思うよ」
「父さん達が?」
「アーサー!!!」
「ごはぁっ!!!」


その瞬間母さんが飛び込んできた。


「ごめんね!私達に任せてって言ったのに。大丈夫?痛いところはない?」
「強いて言うなら今この状況が痛いです・・・」
「リースそろそろ離れてやれ。アーサーが苦しそうだ」


入ってきたのは父さんだった。


「はっ!ご、ごめんね」
「だ、大丈夫。それより母さん達は大丈夫?」
「ええ、あなたのおかげでね。子供に助けられるなんて親失格ね・・・」
「母さん・・・」
「まったくもって情けなかったね僕たち。守るべき子供に助けられるなんて」
「私達もまだまだ未熟ですね」


次に入ってきたのは学院長と真っ白な服に帽子を深くかぶった男だった。


「学院長先生!・・・と、そちらの方は?」
「フフフ、僕だよアーサー君」


帽子を取るとそこには見慣れた顔の王様がいた。


「ノアさん!?どうしてここに?」
「どうしてってお礼をしに来たんだよ。君のおかげで悪魔を倒すことが出来たからね」
「いえ、そんな・・・。ロットがいてくれたからですし。ところでその格好は?」
「ああ、変装だよ。国王がその辺を歩いていたらみんな驚くだろう?」


確かに。すれ違った人が王様とか2度見どころか3度見してしまう。


「けどそこまで白いと逆に目立ちませんか?」
「そうかな?結構いい感じだと思ったんだけど」


そんなに全身真っ白だと目立つと思うけどなぁ・・・。


「そういえばセリアはいないのかい?君を看病するって聞かなかったんだよ」
「セリアなら━━━━」
「すみません!遅れました!」


扉を壊しそうな勢いでセリアが戻ってきた。


「セリア、セレナはどうしたんだ?」
「せ、セレナなら帰ったわ。アーサーによろしくって」
「そうなのか?」


もう帰ったのか。もう少し話したかったんだけどな。


「さて、全員揃ったな。それじゃあ始めよう」
「始めるって何を?」
「私の出番だね」


サラがスっと前に出る。みんながサラのいるところを見ている。


「サラ、お前もしかして姿を・・・」
「うん。ここにいるみんなにだけね。姿を見せたのはお話をするため。周りに人はいないよね?」
「ええ、僕達以外は誰もいませんよ」
「ありがとう」
「サラ、お話って?」
「うん。私たち精霊と悪魔に関わる神話の話」


精霊と悪魔の!?そういえば前にサラは悪魔のことを知ってそうな話をしてたな。それのことか。
母さんがその事について説明してくれる。


「あなたが気絶した後にサラさんが現れてね。あなたが目を覚ましたら話をするって」
「悪魔が復活した以上、ここにいる人達には知る権利がある。よく聞いてね。神話の戦いを・・・」




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はるか昔、世界は何も無い無の世界だった。生き物も、緑も、光も、闇も、死も。
ある時その世界に一人の神が降り立った。
その方こそが私たち始祖の精霊の生みの親であり、アークライトの創造神として語られる方
名前は『創造神シア』
シア様は無の世界に全てを創り出した。
大地、海、空、山、緑、命、死。そして世界のバランスを保つ5つの力である火・水・風・光・闇。それぞれを司る精霊を生み出した。それが私たち始祖の精霊。
シア様は誕生したこの世界を『アークライト』と名付け、生まれた命たちに伝えた。
それから数百年。世界は平和だった。
しかし、その平和を脅かす存在が現れた。
その者の名は『邪神セルケトス』
邪神はどこからともなく現れ、シア様にアークライトを奪い取ると宣戦布告した。
シア様はアークライトと人々を守るために戦った。私たちもこの世界を守るためにシア様と戦った。対する邪神は12の悪魔と大量の魔物を引き連れてアークライトに攻めてきた。戦いは激しさを増していった。人々が魔物と戦い、精霊と悪魔が戦い、シア様と邪神が戦った。しかし、圧倒的な敵の数に私たちは劣勢になっていった。事態を重く見たシア様はある決断をした。自らの力を全て使い、邪神を封じると。当然私たちは反対した。だが、シア様の世界を守りたい気持ちは誰にも止められなかった。そしてシア様は全ての力を解き放ち、邪神と悪魔を次元の彼方へ封印した。
けど、邪神は封印される前に世界に呪いをかけた。魔物が自然に生み出され続ける呪いを。その呪いが今もこの世界に魔物を生み出し続けている。そして力を使い果たしたシア様は眠りにつき、私たちはシア様の代わりにこの世界を見守ることを命じられた。
そう。シア様が戻ってくるまで。


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「ふう、私が話せるのはこんなところかな」
「・・・・・・」


この場の全員が一言も喋らなかった。この沈黙を破るのが少し怖かった。
しばらくして沈黙を破ったのは学院長先生だった。


「・・・大体はわかりました。この国に伝わっている神話では邪神の存在はありませんでした。まさかそんな存在がいたとは思いませんでしたよ。しかし、なぜ今悪魔が復活したのですか?」
「ごめんなさい。なぜ復活したのかは分からないの。けどこれだけは言える。悪魔たちは邪神を復活させようと目論んでいるはず。それは止めないといけない」
「しかし、その邪神の封印ってどうしたら解けるのでしょうか?悪魔が復活したなら何か対処しないとすぐに復活してしまうんじゃないでは?」


次に口を開いたのはノアさんだった。


「それは大丈夫。邪神の封印は万が一封印が解かれないように私たち始祖の精霊が鍵を持っているの。私たちが捕まらない限り、復活することは無いよ。悪魔たちがその事に気がつくのにも時間がかかるしね」
「では、世界を見守る精霊のあなたがアーサー君と一緒にいるのは何故でしょう?」


それは俺も気になっている事だった。なぜサラが俺に力を貸してくれるのか。


「・・・・・・ごめんなさい。今は言えないの」


やっぱり言ってくれないか・・・。


「なるほど、わかりました。・・・・・・これは対策を考えないといけないね」
「お父様・・・!」
「みんな聞いてくれ。悪魔が復活した今こちらも対抗策を練らなければならない。他国との会議が必要だろう。だが、すぐにこの情報を公開するわけにもいかないだろう。信じて貰えないかもしれないしね。だから君たちの助けが必要だ。協力してくれるかい?」


少しの沈黙の後、父さんが答えた。


「もちろん協力させてもらうぞ。何せ世界の危機だ。ほっとくわけにはいかないしな。みんなもそうだろ?」


全員が頷く。


「ありがとうみんな。とは言っても準備が必要だからね。しばらくは任せてもらうよ。それにセリア達は学院生活がまだまだ残ってるからね。しばらくはこのことを考えずに学院生活を過ごしなさい。君たちは非日常を体験しすぎだよ」
「あはは・・・。そうさせてもらいます」


少し心配だが、ノアさんは頼れる王様だ。任せても問題ないだろう。


「とりあえず今日は解散しようか。アーサー君は体をしっかり休めるんだよ?」
「はい、ありがとうございます」
「絶対安静にね!」
「わかってるよセリア」


休むように忠告してノアさんとセリアは帰って行った。


「じゃあ父さん達も帰るぞ。また明日見に来るからな」
「大人しくねアーサー」
「早く休んで学院に来てくださいね」
「うん。ありがとう」


続いて父さん達も帰っていく。残ったのはロットだった。


「ロットは帰らないのか?」
「・・・なあアーサー。俺たちすげぇ事に巻き込まれてたんだな」
「ああ、そうだな」
「・・・これからどうなるかはわかんねーけどさ。俺、ずっとお前について行く」
「ロット・・・」
「助けてくれた恩返しってほどじゃねーけどさ。お前と一緒に戦って思ったんだよ。助けになりたいって。だからお前について行く。・・・・・・・こんな事自分で言ってなんだが、恥ずいな」
「・・・・・・ありがとうロット」
「!!・・・・・・・・・・・・別に」


顔が真っ赤だ。本当に恥ずかしかったみたいだ。


「ロット、俺たちは親友・・・いや、相棒だ!これからもよろしくな!」


手を差し出すと


「・・・・・・ああ!もちろんだ!」


と言って手を掴んでくれた。俺もちょっと恥ずかしい。


俺は本当にいい相棒に出会った。みんなを守るためにもこれからも頑張っていこう。決意を胸に俺はそう誓った。

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