精霊と共に

キリくん

アーサーVSセリア

その後、俺たちは順調に勝ち進んでいった。ロットに至っては片手を使わずに相手を倒していた。そして・・・


「セレナ選手!踊りのような美しい動きで見事準決勝進出です!」


セレナも準決勝に勝ち進んでいた。あれから特に何も無い。やはり俺の杞憂だったのだろうか?
・・・いや、今はやめておこう。向こうはサラに任せてこっちに集中だ。
軽く頬を叩き、気合いを入れる。


「よし!行くか」


準備を済ませて入場する。


「さあ皆さん!ついに始まります!シャングリラ大会準決勝!開幕です!!!」


━━うおおおおぉ!!!!!!!


今まで以上の盛り上がりで熱気が凄まじい。


「準決勝第1試合!アーサー選手とセリア様です!皆様この御二方の活躍は目に焼き付けられたことでしょう!!私も興奮が止まりません!!一体どちらが勝つのでしょうか!?私にはもう分かりません!!」


この司会さん、興奮しすぎて自分が戦いそうな勢いになっている。決勝になったら一体どうなるんだ・・・。


「とうとうこの時が来たわねアーサー!今まで模擬戦とかはしていたけど、こうして本気でやるのは初めてよ。覚悟はできてるかしら?」
「当たり前だ!俺だって楽しみにしてたんだ!俺は手を抜かないぞセリア!」
「当たり前よ!手を抜いたら承知しないからね!」


俺はもうわくわくが止まらない。本能が抑えきれないんだ!


「選手!観客!ともにヒートアップしております!!もはや解説は不要!それでは始めましょう!!3・・2・・1!試合開始!!」


試合開始とともに俺は地面を蹴った。懐に潜り込まれるより先に距離を詰めようとした。
だが、セリアも同じ考えだったのか、俺以上の速さで飛び込んできた。
とてつもない速さで細剣の突きを放とうとするセリアを見て咄嗟に剣で防御をする。


ガキンッ!!!!


剣と剣がぶつかる鈍い音が響き渡る。


「これを受け止めるんだ。驚いたわ」
「そっちこそ・・・。あんなに鋭い突きは初めて・・・だ!!」


力任せに剣を払うが、セリアは体制を崩さずに受け流し、再び突きを放つ。が、俺は後ろに飛んで間一髪で躱す。
すかさず俺は魔法を放つ。


「『フレイムショット!』」
「『ウインドショット!』」


炎と風の弾がぶつかり爆発し、煙で視界が悪くなる。


「くっ、何も見えない!どこにいるの!!」


セリアは煙で何も見えていない。だが俺ならセリアの足音が聞き取れる。今なら・・・


「・・・はっ!!」
「!!後ろに・・・キャッ!!」


腕を狙ったのだが、剣で流されてしまう。


「後ろから狙うなんてサイテー!」
「それは無いだろ!」
「そんな酷い人にはこれよ!『アクアウェーブ!』」
「え?どわぁぁ!??」


どこからともなく現れた水の波が横から流れてきて押し流され、壁に叩きつけられる。


「ゴホッゴホッ・・・。酷いことするなあ!耳と尻尾の手入れ大変なんだぞ」
「あはは、ごめんねー。でも勝負だからねー」


全身ずぶ濡れになってしまった。耳と尻尾の毛は繊細だから手入れが大変だったりする。


「と、とてつもない試合です!速すぎて目で追いきれません!この2人速すぎます!」


・・・語彙力低下しすぎだろ。どれだけ興奮してるんだよ。


「もう休憩はいいかしら?こっちから行かせてもらうわよ!『ウインドアロー連続発射!』」


セリアの後ろから無数の風の矢が打ち出される。


「これはあの時の!」
「ええ、あなたのを真似したのよ!風魔法の速さを避けきれるかしら?」


矢はどれも鋭く、精度が高い。このまま避け続けるたらジリ貧だ。それなら・・・


「この数はさすがのアーサーでも・・・なっ!?」
「はぁぁぁぁ!!!」


俺は矢を切り落としながら進んでいた。


「何と言うことでしょう!あの速くて細い矢をアーサー選手は切っています!!」
「ロットはともかくあなたも魔法を切るの!?しかもこの細い矢の形状の魔法を!」
「俺の動体視力ならギリギリ捉えられる速さだからな!このまま・・・」


だが、俺も全部を切れるわけじゃない。切り損ねた矢が俺の体を掠める度に血が滴る。正直かなり辛いが・・・


「届いた!」
「うそっ・・・!?」


セリアの懐にたどり着いた俺はセリアの腹部に向かって剣を振るう。


「はァァっ!!」
「間に合わない・・・!」


剣が肌に接触する瞬間に剣の刃がなくなる。
そのままセリアは後ろに飛ばされ、地面に叩きつけられたが、上手く受身を取ったようだ。


「ケホッケホッ・・・。イタタタ、私もまだまだ未熟ね」
「いや、そうでもないと思うぞ・・・」


俺の体は矢の雨で傷だらけになっている。さすがにあの数は無茶しすぎた。


「ふふっ、思った以上に効いてたみたいね」
「まぁな・・・。けど、そんなに魔法を使ったら魔力がもう少ないんじゃないか?」


いくらセリアでもあれだけ魔法を放てば魔力もそこを尽きるはずだ。


「ええ。悔しいけどその通りよ。もう魔力はほとんど残ってないわ。あなたは・・・まだ大丈夫だけど、そんなに余裕はないんじゃない?」


セリアの言う通り。サラがいないと俺の魔力はすぐに底を尽きる。恐らくあと少し使うだけで尽きてしまうだろう。


「図星みたいね。それなら接近戦を仕掛けるまでよ!」
「そう来ると思ったよ!」


牽制に『フレイム』を数発飛ばすが、全て避けられる。
あっという間に距離を詰められ、喉に剣を向けられる。


「はぁっ!!」


剣先が喉に迫るが俺は冷静に右へ避ける。だが、避けた先には拳が待ち構えていた。


「なっ!?ガハッ・・・!」


突然の腹への衝撃に対応しきれずに後ろに飛ばされる。


「いてて・・・・ってやば!」
「はあっ!」


地面に倒れているところに剣を突き立てようとしてくる。俺は横に転がって回避し、素早く起き上がる。


「次は俺の番だ!」
「望むところよ!」


距離を詰めて剣を右上に振り上げるが避けられ、剣は空を切る。


「もらったわ!」
「『インパクト!』」
「え?きゃあっ!!」


俺とセリアの間に『インパクト』を放って無理矢理距離をとる。


「ゲホッ・・・自分諸共吹き飛ばすなんてね・・・」
「・・・まぁな」


かなり危なかったが、何とか助かった。けど、もう魔法は使えない。それにもう体力が持たない。だがそれはセリアも同じのはず。


「どうやらあなたも限界みたいね」
「ははっ、悔しいがその通りだ。だから・・・」
「ええ。次が・・・」


━━次が最後の勝負!


互いに次が最後の勝負と理解し、剣を構える。




・・・無音。まるで時が止まったかのように闘技場は静まり返っている。観客も先程までの熱気が嘘のように静かになっている。




━━静寂を破ったのは一陣の風だった。どこからともなく吹いた風は二人の間を吹き抜ける。
その瞬間、二人は地を蹴った。セリアは俺の首を、俺は腹に一閃を放つ。
細剣は俺の喉元に迫るが、届くギリギリのところで止まった。


「がっ・・・」
「俺の・・・勝ちだ」


セリアより先に俺の剣が届いていた。その衝撃に耐えきれずセリアは気絶し、倒れるが・・・


「おっと、気絶したか」


倒れる前に支えてそっと横にする。


「・・・はっ!み、皆さん、大丈夫ですか!?恥ずかしながら私、黙り込んでしまいました!とにかく、決着が着きました!勝者!アーサー選手です!」


━━うおおおおぉ!!!!!


先程までの静寂を吹き飛ばすかのように観客は歓声をあげる。


「ははは・・・何とか・・・勝て・・・た・・な・・・」


何とか立っていたが限界だった。ロットが走ってくるのが見えた気がしたが、俺の意識はそこで途切れた。



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