精霊と共に

キリくん

ロットの秘密

授業が終わり、今俺はセリアに城に通してもらっている。


「失礼します。お父様、アーサーを連れてきました」
「やぁアーサーくん。それにサラさんも久しぶりだね」
「お父様!少しは片付けてくださいよ!」
「あはは、ごめんごめん」


久しぶりにあったノアは変わらず元気そうだった。


「久しぶりね」
「お久しぶりですノアさん。それで早速なんですが・・・」


「うん、話は聞いてるよ。詳しく教えてくれるかい?」
「はい。ノアさん、『ウェイン』という名前を知ってますか?」
「・・・!」


その名前を聞いた瞬間ノアの顔は驚きに満ちていた。


「・・・知ってるよ。昔この城で魔法の研究をしていた人だ。結婚する前には冒険者をしていたそうだ。僕もとてもお世話になった。でもどうしてウェインさんの名前が?」
「彼の息子が今学院にいます」
「何!?それは本当か!」
「えぇ。俺のルームメイトです」
「そうか・・・生きていたのか・・・」


安心したのかノアは安堵の溜息を零した。


「ウェインさんは・・・数年前に亡くなられてね。国の外で夫婦の遺体が発見されたんだ。理由も不明で2人の息子も行方不明になってしまったんだ」
「お父様・・・」
「しかし・・・何故君はこのことを知っているんだ?」
「実は━━」




━━数日前━━━


「今日も疲れたなー。じゃ、おやすみロット」
「・・・・・・ああ」


明かりを消してベッドに入った。




「・・・・・・・・・・・・」


ガタッ、ガタッ




暗闇の中ロットが静かに窓から飛び降りていった。


「・・・サラ。頼む」
「わかった」
「光の精霊よ、我が目と彼の者の目を繋げ。『ユニオンアイ』」


視界を共有する魔法をサラと俺にかけてサラにロットの尾行を頼んだ。


ロットは人気のない裏路地を進んでいた。


(一体どこに・・・)


しばらく進み路地を抜けるとそこにはある貴族の邸があった。


(ここは・・・)
(アーサー、ここがどこかわかる?)
(ここは確かバーキンス家の邸だったはず)


バーキンス家はこの国でもトップレベルの権力がある貴族と聞いている。けど何故・・・


ロットは邸の周りをぐるぐる周り、しばらく邸を見つめてからまた走り去っていった。


(この方向は・・・寮に戻ってるね)
(そうみたいだな。サラ、邸に入れる?)
(え?なんで?)
(確かめたいことがあるんだ。執務室みたいなところを探してくれ)
(わかった)


つっ・・・・・・。魔力の消費が激しい。もうあまり持たないな。


(えーっと・・・ここかな?)
(そこだ。あそこの机の引き出しを漁ってくれ)


引き出しの中は大量の書類が入っていた。書類を漁っているとあるものが出てきた。


(何だこの大量の武器の発注書は!しかも国に申告してない)


さらに漁ると・・・


(ガラド・ウェイン?妻のアリナと息子のカルロット・・・。暗殺命令!?)


それはウェイン一家の暗殺命令とウェイン研究者の研究書類の強奪命令だった。


(そもそもなんでこんなものここに閉まってるんだよ・・・。こういうのは処分するものじゃないのかよ)


さらにウェイン家の似顔絵まででてきた。


(これは・・・そういう事か)


その絵に描かれていた息子のカルロットはロットとそっくりだった。恐らくロットはカルロットと同一人物だ。


(サラ、その書類持って帰ってきてくれ)
(わかった)


ズキッ・・・。頭が割れるように痛い。魔力が限界だ。


(くっ・・・魔法を解除する。あとは頼む)
(ゆっくり休んでて)




━━━━━━━━━━━━━━━


「・・・それでこれがその書類です」
「まさか・・・バーキンス家がそんなことをしていたとは。・・・なるほど。バーキンス家はアースとの和平を反対していた。一方でウェインさん和平派として活躍しつつ、魔法の研究をしていた。恐らく和平派を潰し、魔法の研究を盗むために狙われたのだろうね。違法な武器の発注も人間たちに対抗するためということか」


ノアは信じられないという顔をしている。


「多分ロットは明日にはバーキンス家を潰すと思います。それでお願いなんですが・・・」
「わかってる。それまでにバーキンス家を捕らえよう。それでロット君は・・・」
「俺に任せて貰えませんか?必ず止めます」
「・・・・・・・・・わかった。頼むよ」
「待ってアーサー!彼は竜人族なんでしょう?1人じゃ危ないわ!」


セリアが心配してくれる。


「ありがとうセリア。でも大丈夫だ。それに俺はひとりじゃないさ。な?サラ」
「もちろん!アーサーは私が守るよ!」
「アーサー・・・・・・わかった。気をつけてね」
「わかってる」


ロット。憎しみに身をゆだねるなよ。そうなった者がどうなるかは俺がよく知っているから・・・

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