精霊と共に

キリくん

セリアとの模擬戦

カーン、カーン
授業の始まりの鐘がなった。今俺たちのクラスは魔法訓練所に集まっていた


「今日は魔法の授業だ。と言っても最初だからな。今日はクラスメイトの魔法の実力を見る時間だと思えばいいぞ」


なるほど、確かに他の人の魔法は見たことがなかったな。どのくらいのレベルなのか気にはなっていたからいい機会かもしれない


「じゃあみんなあの的に向かって得意な魔法を打ってくれ。ただしあまり範囲の広い魔法は使うなよ。始め!」


合図とともに的に魔法が放たれていく。全員なかなかレベルが高い。それにしてもあれだけの魔法を受けているのに的にはほとんど傷がついていない。なにか特殊な素材なのだろうか?
的のことを考えていると歓声が上がっていた。


「すごい!流石はセリア様!」
「エルフの魔法は一味違いますね!」


見ると、セリアが風魔法で的を切り刻んでいた。セリアは風の適正か。かなりの威力のようだ。
だが、魔法を使った本人はあまり浮かない顔でこちらに歩いてきた


「はぁー・・・」
「どうしたんだよ。すごかったぞ?」
「いいえダメよ!あれじゃまだまだお父様には勝てない・・・」
「ノアさんに?」
「うん。私ね、昔からお父様に魔法を教えてもらってたんだけど、その時にお父様の魔法を見て思ったの。なんて美しいなんだろうって」
「美しい?」
「うん。とにかく綺麗だった。それから私もお父様みたいな魔法を使えるようになりたい・・・。いいえ、お父様より美しい魔法が使えるようになりたい!って思うようになったの。・・・変?」


「そんなことないよ。誰かを超えたいって思うのはいい事だと思うよ」
「そうかな・・・。ありがとうアーサー」


こちらを見るセリアの顔はとても嬉しそうに笑っていた


「はい、次の人ー」


あ、俺の番か。あんまり威力の高いやつを打っても疲れるし軽いやつでいいかな


『フレイムブラスト』


この魔法は火属性の中級魔法だ。狙った場所を中心に軽い爆発を起こして吹き飛ばす感じだ。爆発の煙が収まるとそこには少し黒くなった的が立っていた。
うーん?あれで壊れないのか。何でできているんだろう


「よし、全員終わったな?じゃあ時間も余ったし模擬戦をやってみるか」
「「「「模擬戦?」」」」
「そうだ。今の魔法の腕を見て判断したやつを呼ぶから出てきてくれ」


嫌な予感しかしない・・・


「アーサー!セリア!」
「うっ・・・はい」
「はい!」


セリアが満面の笑みを浮かべている。正直あんまりやりたくない


「ルールは武器なし魔法だけの勝負だ。自分の得意な魔法をバンバン使え。ただし上級魔法や複合魔法はダメだ。相手が降参するか戦闘不能になったら終了。危ないと判断したら俺が止めに入るぞ」
「「わかりました」」
「よし、向こうのリングの上だ。ほかは向こうの席だ流れ弾が飛んできたら危ないからな」


面倒なことになったなぁ。渋々リングに上がるとセリアはまだ笑っていた


「覚悟しなさいアーサー!絶対に降参させるんだから!」
「俺と戦うのは大会の時じゃなかったのか?」
「いいの!それに今回は魔法だけだからルールも違うでしょ」
「そういう問題か・・・?」
「二人とももういいか?始めるぞ」


やるしかないか・・・


「始め!」
「先手必勝!『ウインドショット!』」


始まりと同時にセリアからとてつもない速さの風の弾丸が打ち出された。俺はその魔法を・・・


「がはっ・・・」


避けられなかった


「っ・・・いきなりその速さは酷いんじゃないか?」
「勝負にそんな決まりはないでしょ!『ウインドショット!』」
「『アクアショット!』」


さすがに不意打ちじゃなければ打ち返すことも出来る。今度はこっちの番だ


「『ライトアロー・・・』」
「ライトアローぐらいじゃ私は・・・」
「『連続発射!」』」


ライトアローだけじゃセリアには通じない。だから数を増やしてみた。今俺は某王様みたいなことをしようとしている


「嘘でしょ!?」


予想外のことに戸惑ったのか撃ち落とすも何発かくらっていた


「痛たた・・・。やるわねアーサー」
「それはどうも『フレイムブラスト!』」
「『アクアシールド!』」


爆発を水の盾でしっかりと防がれる。そういえば・・・


「セリア、お前風と水の適正だったな?」
「ええそうよ。エルフは風と水が適正の人が多いの。私もその一人よ」


なるほど。確かにエルフはそういうイメージがあるけどまさか本当にそうだとは


「話は終わり?なら・・・『ウインドショット!』」
「くっ、『フレイムショット!』」


セリアは容赦なく風の弾丸を撃ち込んでくる
必死に避けているとサラが話しかけてきた


「苦戦してるねアーサー?手を貸す?」
「いや、ダメだろ。この辺りが吹っ飛んだらどうするんだ」
「ハイハイ、わかりました」


さて、どうしようか。正直こんなに強いとは思っていなかった。ここは・・・あれを使うか


「『ライトリフレクション』」


その瞬間、俺の姿は消えた。いや、俺からしたら何も変わっていないのだが、セリアから見れば・・・


「なっ、消えた!?」


このように他の人からは俺は見えない。正確に言うと少し違うけど
そのまま気づかれないように後ろに回り込んでから・・・


「『フレイムソード!』」
「え?きゃあ!?」


セリアの足をはらって体制を崩し、倒れたところに炎の剣を突きつけた


「降参。してくれるな?」
「・・・えぇ、参ったわ。降参」


「勝負あり!勝者、アーサー!」


「おお!」「すげー!」「ナイスファイト!」


客席からの歓声を聞きながらセリアに手を伸ばした


「立てるか?」
「あ、ありがとう」


少し恥ずかしそうな顔をしながら俺の手を取った


「ねぇ、最後のやつって魔法剣?」
「んー、まぁそうだな」
「・・・よく剣無しで発動したわね」


さっきの魔法は魔法剣。本来は剣などの武器を魔法で強化する魔法だが、俺はそれを剣無しで使った。何が違うかと言うと剣がないと魔力で形を保ちながら使うため魔力を結構持っていかれる。武器がない時は便利だが、俺からすればあまり使いたくない魔法だ


「あーあ、負けちゃったなぁ。でも大会では絶対負けないからね!」
「・・・俺だって負けないからな」
「あ!やっぱり出てくれるのね!」
「あぁ、せっかくの機会だ優勝してやる」
「言ったわね?なら私も頑張らないと!」


大会で優勝する目標を立てて張り切ろうと考えているけど、何か起こりそうな嫌な胸騒ぎが俺の中にあった

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