精霊と共に

キリくん

魔法を覚えよう

俺が転生してから5年ぐらい経った。1人で歩くこともできるようになり、言葉も喋れるようになった。何気に言葉を覚えるのは大変だった。周りの人の言葉は普通に聞こえていたのだが、いざ発音しようとすると上手く話せなかったのだ。まぁ何とか教えてもらって話せるようになった。ついでに読み書きも。
 

「アーサー様?どうかされましたか?」


「あ、うぅん。続けていいよ」


で、今何してるかと言うと━━


「ではこの世界にある魔法とはどのようなものがあるでしょう?」


そう。魔法の勉強だ。


「魔法は精霊から力を借りて使用できる。基本的には火、水、風。稀に光や闇の属性を使える人もいる。応用すれば氷や爆発を起こすこともできる」


「はい。完璧です。流石アーサー様」


「そんなことないよ」


この世界アークには魔法が存在している。火を飛ばしたり水を生み出したりできるそうだ。ラノベが大好きな俺にとってはワクワクが止まらない。前に1度魔法を見せてもらったが、その時の興奮は今でも忘れられない。だから、魔法を覚えるために努力している。
元々この国では子供の頃から教えているらしい。


「ではアーサー様。実際に魔法を試してみましょう」


「ホントに?よっしゃー!!」


やっと練習ができる。心から喜んだ。


「それでは外に━━」


「それなら私に任せなさい!」


「へ?」


突然母さんが部屋に飛び込んできた。


「リース様?またお得意のサボりですか?」


「人聞きが悪いわよメルト。今回はしっかり終わらせてきたわ」


「あら珍しい。私にそこまで言うということは本当のようですね」


「もちろんよ!アーサーに魔法を教えるのは私だと決めてたのだからね!」


「え?母さんって魔法得意なの?」


「あらー?疑ってるわね?私こう見えても昔は王国魔法師団の団長だったのよ?」


・・・信じられない。今までの母さんの言動からは想像もつかない。


「あー!信じてないわね?ものは見ようよ。さ、行きましょ」


少し無理矢理感はあるが、素直に行くとしよう。






「さぁ、始めましょうか!」


ここは敷地の庭なのでかなり広い。練習には向いているだろう。


「まずは水魔法を使ってみましょうか。アーサー、まずは私が手本を見せるから見ててね」


「うん」


母さんは手を前に出して呼吸を整えた。


「水の精霊よ。我に水の力を与えよ。『アクア』!」


すると、前に出した掌から大きな水の塊が現れた。


「わぁ!!母さんすごい!」


「ふふん、そうでしょ?信じてもらえたかしら?」


「うんうん!」


どうやら本当にすごい人のようだ。貴族なのに普段は親バカだから正直信じられなかった。


「む?今なんか馬鹿にされた気がする」


「気のせいでしょう。さ、リース様。アーサー様に教えてあげましょう」


「そうね。アーサー。魔法は基本的に体の中にある魔力から生み出すの。そこに精霊から力を借りて魔法を生み出すの」


「体の中の魔力ってどんなの?」


「うーん、少し難しい質問ね。ちょっと大雑把おおざっぱな例えだけど、こう、体の中にある暖かい水みたいな感じ?」


・・・本当に大雑把おおざっぱだ。わかりにくいんだけど。


「うーん、わかんないよー」


「まぁ、なるようになるでしょ。さ、集中してみて」


「う、うん」


いい加減だなぁ。まぁやってみるけど。


・・・あー、これかな?なんか暖かいものを感じる。


「多分わかった」


「じゃあそれを手に集めてみて。水をくみ上げるみたいに」


「えーと、こうかな?」


魔力?を手に集める。


「で、さっきの母さんの詠唱えいしょうをしてみて。その時、精霊に語りかけるようにね」


「精霊に語りかける・・・」


難しいな・・・。


「水の精霊よ。我に水の力を与えよ。『アクア』!」


おお!できた!ちょっと小さいけど・・・


「あら!初めてにしては上出来じゃない!すごいわアーサー!」


「えへへ、そうかな?」


これが魔法。本当に使えるんだ!






━━サー。






うん?今なんか声が聞こえたような・・・気のせいか?


「にしても1回で成功するとはねー。才能あるかもしれないわ」


「お二人の子供なのですから当然ですよ。ラース様だってもうご立派じゃないですか」


「そうよね!そうよね!」


なんか盛り上がってる・・・


「ねぇ母さん。この水飲めるの?」


「うーん、飲めないことはないけど口には合わないと思うわ。魔法で出した水は魔素があるから」


「魔素?」


「魔力の素よ。魔素があると飲めたもんじゃないわ」


「ふーん」


でも飲めないわけじゃないなら試してみようかな。


ペロッ


・・・あれ?普通に美味しい。


「母さん。これ美味しいよ」


「え?そんなはずは・・・・・・美味しい」


「ね?」


「変ね。確かに魔素は感じるんだけど・・・」


どういうことだ?特に何かしたわけではないけど。


「・・・・・・」


「母さん?」


「あぁ、ごめんなさい。とりあえず気にしないでいいわ。他の属性も試してみましょう」


「うん、わかった」


今はわからないし気にしなくていいだろう。








━━その夜


「━━というわけなのよ」


「ふむ、なるほど・・・」


「まさか全ての属性を使えるとは思わなかったわ」


「それに、魔素がある水を飲めたのだろう?」


「えぇ、普通の水だったわ」


「これはあいつに相談する必要があるな」


「そうね、任せたわ」






━━アーサーは知らない。自分の運命、力がどれほどのものなのか。

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