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静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~

あきや

62.再会?

顔を撫でまわされる感触に目を覚ます。
いつの間にか僕は、エク様に触れられていた。

僕は確か【食べられ】て死んだはず。
どうなっている?

「怪我はしなかったの?」
エク様に問われる。

たしかに、大した怪我はない。
状況はわからないけど、とりあえずエク様に返事をしよう。

そう思い、口を動かそうとしたところで、気付く。
体が動かない。
いや、僕の意思では動かせない。

「目立つところには。
 ですが、服の下には様々な拷問の跡があります。
 奴らはこういうことに手慣れているようです。」
僕の口が勝手に動き、答える。
勝手に嘘をつく。
本当は跡が残ような拷問を受けるまでもなく、あっさり殺されたのに。

「私も同じ目に合うんだよね」
「そんなことがあってはいけません。
 奴らも拷問したいわけではなくて、エク様の協力が必要なだけです。
 聞かれることに対して素直に答えていれば、酷い目に合わなくてすみます。」
「そうかな……?
 もしかしたら散々利用された挙句に、殺されたり奴隷にされるかも。」
「そんなことはありません。
 私も拷問に耐えられずに、全て話してしまったのですが、
 そうしたら解放されました。
 だからこうしてエク様に会いに来れたのです。
 だからエク様も、酷い拷問に会う前に、素直に協力すれば、
 私のように解放されるはずです。」

嘘だ。
奴らは僕の態度を見て、あっさり殺した。
これは何だ?
まさか、奴らは僕の死体を操って、エク様を騙そうとしているのか?
これができるから『死んでる方がまだマシ』ということなのか?

僕ではない僕が、エク様を騙し、利用しようとしている。
僕という存在が、エク様を自分の都合で騙し使い捨てる、
身勝手で醜悪な獣になろうとしている。
僕はそれを、ただ眺めることしかできない。

でも、そういえば、これが本当の僕の姿だった。
僕だって最初は、エク様を利用するつもりだった。
エク様のことを、騙しやすそうな馬鹿な王女だと思った。
エク様に嘘をついたことなんて、数えきれないほどあった。
僕とエク様と出会う前までさかのぼれば、僕自身が人を脅し、利用し、
殺したこともある。
それが僕という、醜い獣の正体だ。
エク様に仕えている間に、すっかり忘れてしまったけど。

こういうことを、【因果応報】と呼ぶらしい。
この世の摂理が、僕という獣にふさわしい裁きを下しているのだ。
なんとも僕にふさわしいバッドエンドじゃないか。
それにしても、最期にもう一度自分の犯した罪を繰り返させて、
己の罪深さを思い知らせるとは。
神様も随分と皮肉の効いた罰を思い付くものだ。
趣味が悪い。

いや、悪趣味なんてものじゃない。
こんな裁きは、ただの理不尽だ。
これが僕の罪への裁きなら、罰を受けるべきは僕だけじゃないか?
どうしてエク様が、こんな苦しみに合わなければいけない?
僕という、罪深い人間に関わってしまったからか?
エク様は、僕という愚かで醜い人間を、ただ救おうとしただけじゃないか。
それが、こんな苦しみを受けるほどの罪だというのか?
罪深い僕に、静かにのうのうと生きていけるような居場所を与えることが、
そんなにも許されないことだったのか?
それだけは、どうしても納得できない。

エク様が、僕の体を撫でまわす。
困惑された表情で、信じがたいものを確認するように。

僕という、身勝手で醜悪な獣の本性に、気付いたように。

「あなた、誰……?」
エク様が、問いかける。

まるで、僕のふりをしている化け物の正体を暴くように。

「なんでバレた?
 ご名答です、お姫様。
 私はお前たちをさらったワルモノでございます。」
僕の口が、勝手に答える。
僕ではない、化け物によって。

エク様、僕は誰なのでしょうか?
僕は、獣ではない何かになれたのでしょうか?

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