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静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~

あきや

61.和解

[おはようございます。
 昨日はお休みになれましたか?]
[うん。
 クリシのおかげで悩みが解決したからか、ぐっすり眠れたよ。
 クリシは、その、眠れた?]
[お気遣いいただき、ありがとうございます。
 ですが、僕のことはあなたが心配することではありませんよ。]

クリシの態度が、どこか他人行儀に感じる。
ちなみに今日のクリシの指先には、メイド服的な手袋の感触がない。
捨てた?
まぁ、捨てていいと言ったのは私だもんね。
仕方ないよね。

クリシに助けられながら、いつも通りの朝食をとる。
手袋を除いて、クリシの様子に変わったところはない。
[いつもありがとね]
[いえ、感謝するべきは僕の方なのです。
 本当に。
 失礼ですが、いくつか質問をしてもよろしいでしょうか?]
[もちろん。
 何でも聞いて。]
[『怖い夢を見た』と仰ってましたが、どのような夢を見られたのでしょうか?]

私の一連の奇行の、発端となった出来事だ。
もしかするとクリシは、
何とかして私の奇行を理解しようとしてくれているのかもしれない。

[実は夢じゃないの。
 クリシの頭に触れた時に、ぼんやりと変な光景が浮かび上がってね。
 それが、その……]
クリシが私の首を絞め殺す光景だった。

今のクリシに、これをなんと伝えればいいんだろう?

[それがエク様の【奇跡】ということですね。
 内容は、僕には話せないことなのですか?]

すごい。
ここまで真剣に話を聞いて、しかも私への気遣いまで忘れないとは。
今まで疑っていたけど、実際のところ、クリシこそが最高の相談相手なのでは?

[いや、話すよ。
 クリシにとっては心外かもしれないけど、
 そのときはクリシが私の首を絞め殺す光景が見えたの。
 それで私はクリシが怖くなっちゃって、ああいうことがあって。
 でも、クリシの涙をぬぐった時、また別の光景が見えたの。
 私は覚えてないんだけど、たぶん私とクリシが出会った時の光景だと思う。
 私が『メイド服が似合いそう』とか言ったら、
 クリシが『ふざけるな、僕は男だ。』って。
 それできっと、クリシが言っていることは本当なんだなって、 安心してね。]
[そうでしたか。
 確かに、エクサティシー様が昏睡される前に、そのようなことがありました。
 それで、どうやらもう一つ、何かの光景を見られたようですが?]

私が弁解しなくてはいけないのは、その件だ。

[クリシが熱を測ってくれた時、
 今度は私とクリシが監禁されているような光景が見えた。
 しかも今度は今までよりもずっと鮮明に見えてね。
 それこそ、クリシの心の声まで聞こえるくらい、クリシになりきってた。
 それで、説明しづらいんだけど、キスされて、それがなんか、凄くて……]
[なるほどわかりました。
 詳しく説明しなくて結構です。]
[ほんと!?
 信じてくれる?]
[はい。ほぼほぼ99%、信じてます。]
[1%は?]
[やっぱり僕は変態貴族に捕まる運命なのかなって……
 時々見えるんですよ、エクサティシー様が僕の口を弄んで、
 申し上げにくいのですが、発情期の犬のように興奮している姿が。
 例の【デジャヴ】でしょうか?]
[すごい状況だね……
 さすがに気のせいでしょ。]
[はい。
 そもそもエクサティシー様ほどの権力者が、 僕とキスなりなんなりをするために、
 そこまで大がかりな嘘をつく理由がありません。
 それに仮に、エクサティシー様がそこまでされるお方だとして、
 そこまでされたらさすがの僕でも、
 『普通に言ってくれればいいのに』みたいな気持ちにならなくもない気がします。]
[一応言っておくけど、嘘じゃないからね?]
[はい、信じてますよ。
 そう自分に言い聞かせています。]

どうやらクリシ(理性)の好感度は回復したらしい。
めでたしめでたし。

[それで、また『おでこをくっつけるやつ』をすれば、
 エクサティシー様の【奇跡】がなんなのかわかりそうということですね?]
[そう、お願いしていい?]
[確認なのですが、そうするとまたこの前のように、
 エクサティシー様が変顔をされる可能性があるということですよね?]
[私そんなに変な顔してたの!?]
[失礼しました。
 エクサティシー様がその高貴なお顔を
 崩してしまわれる可能性があるということですよね?]

なんか、気を遣わせるほど凄い変顔をしていたみたいになってしまった。
まぁいいや。

[そういうことになるね。
 どうする?やめておく?]
[いえ、心の準備をしておきたかっただけですので。
 それでは、失礼します。]
クリシのおでこが、私のおでこに当たる。

イメージが流れ込んでくる。

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