静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~
60.誤解
クリシのおでこが私から離れる。
それと同時に、イメージが途切れる。
[どうやら熱があるようですね。
 ……?]
私に触れていたクリシの手が、離れる。
珍しい反応だ。
いつもなら、私に触れたまま返事を待ってくれるのに。
私は手探りでクリシの手を掴み、なぞる。
[待って。
 今のやつ、もうちょっと続けて。]
謎の沈黙。
[「今のやつ」とは、何でしょうか……?]
[顔をくっつける感じのやつ。
 もうちょっと続けてくれたら、何かわかりそうだったんだけど。]
沈黙。
[それは、エクサティシー様の性的指向がでしょうか?]
え?
何の話?
[確かに僕はエクサティシー様のことをお慕いしておりますし、
 エクサティシー様が僕のことを好ましく思ってくださるのだとしたら、
 光栄なことです。
 ですが、僕がエクサティシー様に向ける思いは、
 恩人として感謝しているということでして、
 【恋愛対象として好き】という意味ではなくてですね……]
[うん、わかってるけど。
 急にどうしたの?]
[それでは、なぜそのようなお顔をされているのでしょうか……?]
[え?
 別に変な顔をしてるつもりはないんだけど。
 私は今どんな顔をしてるの?]
クリシが答えない。
なんだろう。
かなり時間をかけて、言葉を選んでる?
[キスされるのを期待しているようなお顔をされています。]
なるほど。
[それには深い理由があってね]
[もちろん、エクサティシー様の性癖がどれだけ深く倒錯していようと、
 僕がエクサティシー様の傍で仕えることに変わりはありません。
 僕がエクサティシー様に救われたことは確かですし、
 つい先ほどそう誓ったばかりですので。
 ただ、この【かわいい】メイド服は、僕には似合わないので捨てさせてください。
 ご存知ないでしょうが、 僕は過去のトラウマから、
 他人からそういう目で見られてると思うと吐き気がする体質なのです。]
まずい。
他人と言われてしまった。
しかもどうやら、私が記憶喪失になる前の、
ピュアな少女だった頃のエクサティシー様にまで被害が広がっている。
[聞いて!
 さっきクリシと顔をくっつけた時に、不思議な光景が見えたの。
 もしかすると【奇跡】ってやつかも。
 クリシにもそういうのが見えるんでしょ?]
[そういうことを言う人はたくさんいます。
 本当は何も見えてないのに、テキトーにそれっぽいことを言って、
 人を騙して都合良く利用するのです。
 人間なんて所詮は皆、醜悪で身勝手な欲望の塊ですから。
 実は僕もそうかもしれませんよ?
 さっきの話は全部テキトーな作り話で、
 本当は金のためにエクサティシー様の命を狙う暗殺者かもしれません。
 この世界に信じられる存在なんて、どこにも居ませんので。
 信じる者は騙されるのが、この世の、真理……
 うぅ……]
淡々と文字をなぞっていたクリシの手が止まり、文字にならない震えになる。
どうやらクリシは想像以上のショックを受け、
ダークサイドに落ちかけているらしい。
何とかしないと!
[ごめん。
 わかった。
 一回距離を置こう。
 もうクリシが嫌なことは、何もしないでいいから。
 私はもう大丈夫だから。
 クリシも一回休んで落ち着いて、もしまた私と話をする気になったら、
 その時に来てくてくれたらいいよ。]
[すみません。
 そうさせていただきます。
 それで、メイド服は……?]
[捨てていいよ!]
[はい。
 ありがとうございます。
 失礼します……]
クリシの指が私から離れる。
さて、これで最近の私を悩ませていた問題は、とりあえず落ち着いた。
クリシは信用して良さそう。
まだそれ以外のところに色々な謎はあるんだけど、
とりあえず今すぐクリシに殺されることはなさそうだ。
代わりにクリシの精神状態という問題が増えてしまったんだけど。
今度こそ、本当に逃げ出したりしないよね?
しかし、私の方は安心したせいか、どっと疲れが出てきた。
クリシには申し訳ないけど、ゆっくり寝ることにしよう。
それと同時に、イメージが途切れる。
[どうやら熱があるようですね。
 ……?]
私に触れていたクリシの手が、離れる。
珍しい反応だ。
いつもなら、私に触れたまま返事を待ってくれるのに。
私は手探りでクリシの手を掴み、なぞる。
[待って。
 今のやつ、もうちょっと続けて。]
謎の沈黙。
[「今のやつ」とは、何でしょうか……?]
[顔をくっつける感じのやつ。
 もうちょっと続けてくれたら、何かわかりそうだったんだけど。]
沈黙。
[それは、エクサティシー様の性的指向がでしょうか?]
え?
何の話?
[確かに僕はエクサティシー様のことをお慕いしておりますし、
 エクサティシー様が僕のことを好ましく思ってくださるのだとしたら、
 光栄なことです。
 ですが、僕がエクサティシー様に向ける思いは、
 恩人として感謝しているということでして、
 【恋愛対象として好き】という意味ではなくてですね……]
[うん、わかってるけど。
 急にどうしたの?]
[それでは、なぜそのようなお顔をされているのでしょうか……?]
[え?
 別に変な顔をしてるつもりはないんだけど。
 私は今どんな顔をしてるの?]
クリシが答えない。
なんだろう。
かなり時間をかけて、言葉を選んでる?
[キスされるのを期待しているようなお顔をされています。]
なるほど。
[それには深い理由があってね]
[もちろん、エクサティシー様の性癖がどれだけ深く倒錯していようと、
 僕がエクサティシー様の傍で仕えることに変わりはありません。
 僕がエクサティシー様に救われたことは確かですし、
 つい先ほどそう誓ったばかりですので。
 ただ、この【かわいい】メイド服は、僕には似合わないので捨てさせてください。
 ご存知ないでしょうが、 僕は過去のトラウマから、
 他人からそういう目で見られてると思うと吐き気がする体質なのです。]
まずい。
他人と言われてしまった。
しかもどうやら、私が記憶喪失になる前の、
ピュアな少女だった頃のエクサティシー様にまで被害が広がっている。
[聞いて!
 さっきクリシと顔をくっつけた時に、不思議な光景が見えたの。
 もしかすると【奇跡】ってやつかも。
 クリシにもそういうのが見えるんでしょ?]
[そういうことを言う人はたくさんいます。
 本当は何も見えてないのに、テキトーにそれっぽいことを言って、
 人を騙して都合良く利用するのです。
 人間なんて所詮は皆、醜悪で身勝手な欲望の塊ですから。
 実は僕もそうかもしれませんよ?
 さっきの話は全部テキトーな作り話で、
 本当は金のためにエクサティシー様の命を狙う暗殺者かもしれません。
 この世界に信じられる存在なんて、どこにも居ませんので。
 信じる者は騙されるのが、この世の、真理……
 うぅ……]
淡々と文字をなぞっていたクリシの手が止まり、文字にならない震えになる。
どうやらクリシは想像以上のショックを受け、
ダークサイドに落ちかけているらしい。
何とかしないと!
[ごめん。
 わかった。
 一回距離を置こう。
 もうクリシが嫌なことは、何もしないでいいから。
 私はもう大丈夫だから。
 クリシも一回休んで落ち着いて、もしまた私と話をする気になったら、
 その時に来てくてくれたらいいよ。]
[すみません。
 そうさせていただきます。
 それで、メイド服は……?]
[捨てていいよ!]
[はい。
 ありがとうございます。
 失礼します……]
クリシの指が私から離れる。
さて、これで最近の私を悩ませていた問題は、とりあえず落ち着いた。
クリシは信用して良さそう。
まだそれ以外のところに色々な謎はあるんだけど、
とりあえず今すぐクリシに殺されることはなさそうだ。
代わりにクリシの精神状態という問題が増えてしまったんだけど。
今度こそ、本当に逃げ出したりしないよね?
しかし、私の方は安心したせいか、どっと疲れが出てきた。
クリシには申し訳ないけど、ゆっくり寝ることにしよう。
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