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静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~

あきや

53.助かった??

何もない静かなところで、ただ心臓の鼓動を感じている。
感じているのは心臓の鼓動だけではない。
手足の感覚もある。
いよいよ実は、まだ私は生きているような気がしてきた。

けれど、手足を失った人は【幻肢痛】というものを感じると聞く。
すでに失われた手足が、まるで今もあるかのように感じ、痛むそうだ。
幸い私は手足があるようには感じても、痛みは無い。

むしろ心地良い。
まるで、ふわふわのベットで寝ているよう。

もしかして天国なのかな?
想像していたものと違うけれど、何もない空間でただ心地良さだけを感じればいいというのも、
神の祝福なのかもしれない。

!!
突然右手に人の手が触れる!
間違いなく空想や幻肢痛ではない。
あまりにリアルな感触。
その相手は左手で私の手を取り、右手で私の手の平をなぞる。
私は慌てて手を動かそうとするが、動かない。
私は何もできず、ただ手の平をなぞられる。

もしかすると私は植物人間の状態で病院にいるのかもしれない。
いや、もしかすると目と耳をつぶされて、何かの実験や儀式に使われているのかもしれない…
全く状況がわからない!
恐い!!



その相手は、延々と私の手の平をなぞり続けている。
いくら何でも長過ぎる。
まるで、呪詛でも刻まれているようだ。

なんとか一命をとりとめた植物人間の手を、延々となぞり続ける人なんているだろうか?
いや、物凄く仲の良かった家族が、突然植物人間になってしまったら、
喪失感からそうする人もいるかもしれない。
けど、私にはそこまでの関係だった相手はいない、と思う。
そうすると、私は死にかけていたところを、何か特殊な人に見付かり、
ギリギリ植物人間として助かる程度の医学的な措置を受けた上で、
何かの生贄とかにされているんだろうか?

いやー、ないない(*´∀`)ノ 
それならまだ【私は異世界転生して植物状態の人物になり、今は回復呪文をかけられ続けている】
とかの方が信憑性あるよ。

手の平をなぞられ始めてから、もう十分くらい経っていると思う。
ホントに、いつまでなぞり続けるのこの人?
これでもしこの行為が回復呪文でないなら、もはや病的な執着と言っていいレベルなのでは?
噂に聞く【ヤンデレ】というものかもしれない。
まぁでも、人生で一回くらいは病的なほどに誰かに愛されてみたい気もする。

……いや、まだ続くの?
そういえばヤンデレとは、相手がもうやめて欲しいと思っているのに、
まるでサイコパスのように相手の感情を無視して愛し続けるからヤンデレなのだった。
確かに怖いね、ヤンデレ。

いやいや、怖がる必要なんてないよ。
だってまだ、この人がヤンデレという可能性も、ほんのちょっとくらいはあるかもというだけだ。
というか、転生したら視覚と聴覚を失って身動きの取れない状態になってて、
しかも見知らぬヤンデレズ少女(指先の感触的におそらく)に死ぬほど愛されているなんて状況は、
さすがの転生ものでも非常識でしょ。
だから常識的に考えて、
これはただ【私は異世界転生して植物状態の人物になり、今は回復呪文をかけられ続けている】
というだけ。
最近よくあるらしいよね、そういうこと。
初めての異世界転生で戸惑っちゃったけど、
そういうカルチャーショックを楽しめるくらいじゃないと、これから始まる異世界生活は大変だよ!

よし、大丈夫。

ようやく私に謎の文字を刻み続けていた手が止まり、布団の中に戻される。

今日の回復呪文はこれで終わりなのかな?
ありがとう、また明日もよろしくね。

しばらくして、今度は布団の感触が無くなる。
そして服を脱がされる。

これは、どういうこと……?

いやもしかすると、この世界の回復呪文の中には、
手の平だけじゃなく体全体に文字を刻み付けるタイプの呪文もあるのかも。
なんだ、そういうことか。
まさか私への重すぎる愛から、意味もなく私の手の平に数十分間も文字を書き続け、
しかも意識があるのかないのかもわからない私の裸に興奮するような、
クレイジーサイコヤンデレズ昏睡レイパーがいたのかと思った。
いくら何でも属性盛り過ぎでしょ!
早口言葉か!

その回復術師は、私の体を優しい手つきで拭いていく。
まるで病院の看護師さんのように。
なんだかとても大切にされているような気分になる。
一通り体を拭かれた後、また服を着せてもらう。

どうも異世界の回復術師にしては、おかしい。
私の体に何かよくわからない紋様とか刻み付けるんじゃないの?
いやまぁ、最近の異世界ファンタジーは衛生観念が進んでいて、
患者の体を清潔に保つのも、回復術師の仕事なのかもしれない。
それに、私の体をいたわるその手つきは、
クレイジーサイコヤンデレズ昏睡レイパーの獣欲を満たすためだけの行為
とは思えなかった。
結局この人が何者なのかはわからないけど、まぁ怖がらなくていい気がする。

そして今度は口を開かれ、生暖かいものが流し込まれる。

これは、何だろう?
もしこの少女が昏睡レイパーだとしたら、これはきっとヤバい薬だ。
けど、そうではない気がする。
どちらかというと、
【始めて担当することになった植物状態の患者に対して、
 つい病的なほど深く感情移入してしまっている初々しい看護師】
みたいな印象だ。
どうせヤバい人によってヤバい薬を飲まされようとしているなら、
抵抗したところで状況は改善しない。
それならいっその事、あえてこの液体を飲んではっきりさせよう。

生暖かい液体が口から入って、そのままお腹のほうに流れ込んでいく。

ゴホッゴホッ

むせてしまった。

そのクレなんとかではない少女は、すぐさま私の口を拭いてくれる。
まるでそうなることがわかっていたかのような、驚くべき反応速度だ。

ここが異世界ファンタジーなのだとしたら、
この少女は【予知能力】か何かを持っているのかもしれない。
そしてその回復呪文等のファンタジー能力を、私のために使ってくれている。
そうするとこの少女は、私に仕える完全で超能力者な従者ってところかな。

しかし、何だか急激に眠くなってしまった。

やっぱり、さっきの液体は睡眠薬だった?
そうするとこの少女は、私に執着する完全で超能力者なクレイジーサイコヤンデレ……
ああ、もうだめ。
眠すぎて頭が回らない。
少し、寝よう……

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