静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~
42.緊張の交渉
「『嬢ちゃん達、さっきは凄んですまなかった。
とりあえず、酒を交わそうか。』
どうします?」
さっきまでとは変わって、和やかな雰囲気になったようだ。
私にはわからないのだけど、さっきは私の一言で周りのドワーフたちが凍り付いたのかもしれない。
それで大声で話せるような内容ではないことを察して、場所を変えてくれたということか。
そうするとこの若頭さんは、荒っぽそうな印象だったけど、
本当は気さくで細かな配慮をしてくれる性格なのかもしれない。
最初に話を聞いてくれる相手が、そういう人で助かった。
「私はお酒は遠慮させていただきますね」
「『は?儂の酒が飲めないだと!?
でかいからって調子に乗るなよ!!
あんまりふざけていると……!』
エク様すみません!
何を言われているのかわかりませんが、物凄い勢いで脅されているようです!
本当に怖いです!
たぶん殺されます!」
やっぱり、本当の本当は恐い人だ!
「間違えました!一杯ごちそうになります!」
「『いやいい、そういえばお前達はよそ者だったな。
酒がダメなら、腹を割って話すとお前達の神に誓え。
その上で、その盃に口を付けてくれれば、中身は飲まなくてもいい。
儂らとしては、それで十分だ。』
エク様、助かりました。
殺されずにすむようです。」
私が「酒を飲まない」と言ったことで、何か致命的な誤解を与えてしまったらしい。
きっとドワーフとしては譲れない、儀式的な何かなんだろう。
譲歩してくれたし、口付けで納得してくれるなら断る理由はない。
「クリシ、盃を取って。」
「はい。どうぞ。」
私は渡された盃を取り、口を付ける。
「『十分だ。
それで、親父達と『滴』について話したいと言っていたが、その意味は分かっているのか?』」
私の方から補足させていただきます。
若頭は今は冷静な口調で語っていますが、まだ厳しい目で僕たちのことを睨んでいます。
まるで、僕たちのことを見定めているようです。」
油断はできない。
タブーとなる単語を口にしただけで殺される、という状況ではないようだけど、
話の流れよっては、ここを放り出されてニート王女として帰ることになるかもしれない。
いやたぶん、クリシを通して伝わってくるこの雰囲気によると、それならまだいい方なんだろう。
「ある程度はわかっているつもりです。
エフォリアさんの時代に、よそ者がその力を悪用して、この町で戦争を起こしました。
それ以来、ドワーフはよそ者を受け入れなくなったんですよね。
よそ者が【滴】の込められた道具を悪用しないように。」
「『ずいぶん詳しいじゃないか。
儂らの中でも、もうそこまでちゃんと理解している連中は少ないのに。
それに『エフォリアさん』って、まるで会って来たみたいに……
そうか、癒し主に聞いたんだな?』」
「いえ、実は私には【相手の前世が見える】という【滴】があるみたいでして、
それでエフォリア……様と呼ぶべきでしょうか?
とにかく、その方の記憶を見たんです。」
「『前世が見える?
またテキトーなことを言うな。
それじゃあ、そこの嬢ちゃん、お前は何だったんだ?
ここまで付いて来るくらいだ、お前ならその前世とやらくらい、もう見てもらっただろ?
姫さんは黙っとけよ。』
お答えします。僕の前世は犬でした。」
クリシは一切の躊躇なく言い切った。
あれだけ秘密にしようとしていたのに。
「『自分の前世は、いっ犬畜生、だと?
ずいぶん気合の入った……忠犬を飼っているじゃないか!
よそ者にしては面白いな。
しかし、それだけでは嬢ちゃん達の……姉妹愛?は証明できても、
前世が見えるって証明にはならないな。
他に証明できるものはあるのか?』」
「異世界の技術を見て『銃』という武器を作りました。
怪しい物は持ち込むなということでしたので、今は従者に預けています。」
「『それなら見せてもらおうか。今すぐにな。
儂も付いて行くぞ。』
エク様、一度戻りましょう。」
クリシが立ち上がり、私の手を引く。
私はクリシの誘導に従い、歩く。
しばらく歩き、立ち止まる。
クリシが私の手を取り、唇に触れるように誘導する。
「こちらが銃です。
引き金を引くと、筒の先から玉が出ます。
大した威力ではありませんが、それでも武器ですので、ご注意ください。」
クリシが若頭さんに銃を渡したらしい。
いきなり銃で撃たれたりしないよね。
こういうときに何も見えないと、とっさに逃げられないから恐い。
まぁ、その辺の注意をクリシや周りの従者がしていないはずはないし、
仮に撃たれても致命傷にはならないんだけど。
「『これは驚いた!
なんだか腹が立つくらい素人臭い造りなのに、なんでこんなに威力が出るんだ?
儂らが作り直したら、とんでもない武器になるぞ。
とりあえずこれは預かっておこう。
確かに、嘘にしては練られ過ぎだな。
儂は嬢ちゃんを信じよう。
それで、御爺さんの記憶を見たとして、何をしに来た?
うちは観光業なんてやっていないぞ?』」
「その御爺様が、自分の【滴】を込めたバンダナを隠したのが見えたんです。
もしかするとまだ残っているかもしれません。」
「『へえ!
そいつを使えば、儂達も新しく【秘宝】を作れるわけか。
とても面白い話じゃないか。
しかし親父達は激怒するだろうな。
そんなこと、聞いた瞬間に勢いあまって殺そうとするかもな。
親父は儂みたいに甘くはないぞ。
もちろんその時には、周りは儂みたいなドワーフに囲まれてて、
嬢ちゃんたちは丸腰で二人きりだ。
大人しく殺されるしかないな。
その上で聞くのだけれど、姫さんに……】
失礼します、ic9ewとは?
なるほど。
『命を懸ける覚悟はできているのか?』」
やっぱり、そういう話になるのか。
「できてなければ、ここまで来ませんよ。」
本当にできたのは、ここに到着してからだけど。
「『いい根性しているじゃないか。
気に入った。
親父達に会わせてやる。
脅かしてしまったが、安心しろ。
いざとなったら儂が助けてやるよ。』」
とりあえず、酒を交わそうか。』
どうします?」
さっきまでとは変わって、和やかな雰囲気になったようだ。
私にはわからないのだけど、さっきは私の一言で周りのドワーフたちが凍り付いたのかもしれない。
それで大声で話せるような内容ではないことを察して、場所を変えてくれたということか。
そうするとこの若頭さんは、荒っぽそうな印象だったけど、
本当は気さくで細かな配慮をしてくれる性格なのかもしれない。
最初に話を聞いてくれる相手が、そういう人で助かった。
「私はお酒は遠慮させていただきますね」
「『は?儂の酒が飲めないだと!?
でかいからって調子に乗るなよ!!
あんまりふざけていると……!』
エク様すみません!
何を言われているのかわかりませんが、物凄い勢いで脅されているようです!
本当に怖いです!
たぶん殺されます!」
やっぱり、本当の本当は恐い人だ!
「間違えました!一杯ごちそうになります!」
「『いやいい、そういえばお前達はよそ者だったな。
酒がダメなら、腹を割って話すとお前達の神に誓え。
その上で、その盃に口を付けてくれれば、中身は飲まなくてもいい。
儂らとしては、それで十分だ。』
エク様、助かりました。
殺されずにすむようです。」
私が「酒を飲まない」と言ったことで、何か致命的な誤解を与えてしまったらしい。
きっとドワーフとしては譲れない、儀式的な何かなんだろう。
譲歩してくれたし、口付けで納得してくれるなら断る理由はない。
「クリシ、盃を取って。」
「はい。どうぞ。」
私は渡された盃を取り、口を付ける。
「『十分だ。
それで、親父達と『滴』について話したいと言っていたが、その意味は分かっているのか?』」
私の方から補足させていただきます。
若頭は今は冷静な口調で語っていますが、まだ厳しい目で僕たちのことを睨んでいます。
まるで、僕たちのことを見定めているようです。」
油断はできない。
タブーとなる単語を口にしただけで殺される、という状況ではないようだけど、
話の流れよっては、ここを放り出されてニート王女として帰ることになるかもしれない。
いやたぶん、クリシを通して伝わってくるこの雰囲気によると、それならまだいい方なんだろう。
「ある程度はわかっているつもりです。
エフォリアさんの時代に、よそ者がその力を悪用して、この町で戦争を起こしました。
それ以来、ドワーフはよそ者を受け入れなくなったんですよね。
よそ者が【滴】の込められた道具を悪用しないように。」
「『ずいぶん詳しいじゃないか。
儂らの中でも、もうそこまでちゃんと理解している連中は少ないのに。
それに『エフォリアさん』って、まるで会って来たみたいに……
そうか、癒し主に聞いたんだな?』」
「いえ、実は私には【相手の前世が見える】という【滴】があるみたいでして、
それでエフォリア……様と呼ぶべきでしょうか?
とにかく、その方の記憶を見たんです。」
「『前世が見える?
またテキトーなことを言うな。
それじゃあ、そこの嬢ちゃん、お前は何だったんだ?
ここまで付いて来るくらいだ、お前ならその前世とやらくらい、もう見てもらっただろ?
姫さんは黙っとけよ。』
お答えします。僕の前世は犬でした。」
クリシは一切の躊躇なく言い切った。
あれだけ秘密にしようとしていたのに。
「『自分の前世は、いっ犬畜生、だと?
ずいぶん気合の入った……忠犬を飼っているじゃないか!
よそ者にしては面白いな。
しかし、それだけでは嬢ちゃん達の……姉妹愛?は証明できても、
前世が見えるって証明にはならないな。
他に証明できるものはあるのか?』」
「異世界の技術を見て『銃』という武器を作りました。
怪しい物は持ち込むなということでしたので、今は従者に預けています。」
「『それなら見せてもらおうか。今すぐにな。
儂も付いて行くぞ。』
エク様、一度戻りましょう。」
クリシが立ち上がり、私の手を引く。
私はクリシの誘導に従い、歩く。
しばらく歩き、立ち止まる。
クリシが私の手を取り、唇に触れるように誘導する。
「こちらが銃です。
引き金を引くと、筒の先から玉が出ます。
大した威力ではありませんが、それでも武器ですので、ご注意ください。」
クリシが若頭さんに銃を渡したらしい。
いきなり銃で撃たれたりしないよね。
こういうときに何も見えないと、とっさに逃げられないから恐い。
まぁ、その辺の注意をクリシや周りの従者がしていないはずはないし、
仮に撃たれても致命傷にはならないんだけど。
「『これは驚いた!
なんだか腹が立つくらい素人臭い造りなのに、なんでこんなに威力が出るんだ?
儂らが作り直したら、とんでもない武器になるぞ。
とりあえずこれは預かっておこう。
確かに、嘘にしては練られ過ぎだな。
儂は嬢ちゃんを信じよう。
それで、御爺さんの記憶を見たとして、何をしに来た?
うちは観光業なんてやっていないぞ?』」
「その御爺様が、自分の【滴】を込めたバンダナを隠したのが見えたんです。
もしかするとまだ残っているかもしれません。」
「『へえ!
そいつを使えば、儂達も新しく【秘宝】を作れるわけか。
とても面白い話じゃないか。
しかし親父達は激怒するだろうな。
そんなこと、聞いた瞬間に勢いあまって殺そうとするかもな。
親父は儂みたいに甘くはないぞ。
もちろんその時には、周りは儂みたいなドワーフに囲まれてて、
嬢ちゃんたちは丸腰で二人きりだ。
大人しく殺されるしかないな。
その上で聞くのだけれど、姫さんに……】
失礼します、ic9ewとは?
なるほど。
『命を懸ける覚悟はできているのか?』」
やっぱり、そういう話になるのか。
「できてなければ、ここまで来ませんよ。」
本当にできたのは、ここに到着してからだけど。
「『いい根性しているじゃないか。
気に入った。
親父達に会わせてやる。
脅かしてしまったが、安心しろ。
いざとなったら儂が助けてやるよ。』」
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