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静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~

あきや

36.【超能力】

「でも人の歴史は、ここが恐ろしい世界だということを語っているよ。
 そういえば、貴女は記憶喪失なんだってね。
 なんでこの力を【奇跡】と呼んでいるか、覚えてる?」
「いえ、わかりません。」
「貴方達がそう呼んでいるからだよ。
 このイリンイでは【奇跡】と呼ばれているけど、他所では違う。
 ドワーフたちはこれを【滴】と呼んでいる。
 知っての通りね。
 エルフなんかは【混沌】と呼ぶし、あとは【異端】なんて呼ぶところもある。
 世界の多くは、この力に【奇跡】だなんて優しい響きは似合わないと見ている。
 この流れに逆らうことこそ、不自然なことなの。
 とても簡単には変わらない。
 実際、この辺にも【行軍】がいたでしょ?」
剣を嵐のように降り注がせるという、恐ろしい力を持った集団だ。
その力を使って悪事を働いているという。
そして最近、テアティスさんが壊滅させたという噂だ。
「その【行軍】ですけど、テアティスさんが壊滅させたと聞きました。
 どうやったんですか?」
「壊滅なんてさせてないよ。
 ただお願いしに寄っただけで。
 まぁ、色々いざこざはあったけど。」

きっと数百歳にもなる超越者的感覚では、軽いいざこざに含まれる程度の、激戦があったんだろう。

「言っておくけど、私の力に期待しないでよ?
 もしかしたら私こそ貴方達のことを利用するだけ利用して、
 用がなくなったら捨てるような人かもしれないんだから。」

たぶん、そういう人はそういうことを言わないんじゃないか。
この人は、人を散々利用した挙げ句に使い捨てるようなタイプというより、
どちらかというと、つい長々と説教をしてしまう心配性なお母さんに見える。
たぶん、そういう説教は話半分に聞くくらいが丁度いい。
真に受けすぎて恐くなって、何も行動しなくなってしまえば、何も変えられない。

「忠告ありがとうございます。
 とにかく、なんとかしてドワーフの町に入れてもらう方法ですね。
 何かあればいいんだけど、クリシは何か思いつく?」
「申し訳ありません。
 これに関してはイリンイ家の力でも難しいでしょう。」
「そっか。どうしよう。」

「まぁ、私ならドワーフの族長に口利きするくらいはできるけど。」
「本当ですか!」

やっぱり助けてくれるじゃん!

「彼らとは、それこそエフォリアさんの頃からの付き合いだし、色々貸しもあるからね。」
「助けてください!お願いします!」
「そう。
 人にお願いする意味、わかってるよね?」

あれ?
思ってたのと違う?

「私に口利きをお願いするなら、
 とりあえず貴女には一生私を養ってもらいましょうか。」

とりあえずの要求が高すぎる!
テアティスさんの感覚では、人の一生程度の時間なんて、
とりあえずまずはビール一杯飲んどくかくらいの感覚なのかな?

「それも庭付きの大きな家でね。
 先に言っておくけど、私は結構な大食いだから。
 味にもうるさいよ。
 あと、早い馬車も欲しいね。
 もちろん御者付きで。
 旅行なんかもしたいからね。
 そうするとボディーガードとかいる方が面倒もなくていいよね。
 イリンイには結構強い人がいるんでしょ?
 何人かちょうだい。」
「ちょっと私の一存ではなんとも言えないので、父さんに相談させてください……」
「そう。
 あと、口を利くだけだからね。
 入れてもらえるかは保証しないよ。」
「ですよね」

「割に合わないんじゃない?」
「困りましたね……」

「いやだな、冗談だよ。
 食事以降は。」
「その前も結構な要求でしたよ!?」
「貧困の救済ができるくらいだし、貴女の父さんならあっさりできるんじゃない?
 まぁ、私はイリンイのために働いたりしないけど。」

普通なら決して許されないニート宣言をされた。
こんなに堂々と。
やはり只者ではない……

「確かにコリー様なら簡単でしょう。
 相談してみてもいいかと思います。」
「そうしてみようか……」
「へぇ、本気なんだね。
 その気持ちを忘れないでよ。
 あ、それと。」

まだ足りないと!?

「貴女の力で私の前世を見てみてよ。
 せっかくなんだし。」

良かった。
最後は軽い要求だった。

「それなんですけど、実はずっとぼんやりとテアティスさんの前世を覗いているはずなんですが、
 何も見えないし聞こえないんですよね。」
「そう。
 まぁもう随分長いこと生きてるし、前世も何もないのかもね。」

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