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静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~

あきや

35.目指すところ

「エフォリアさんね。
 よく覚えてる。
 彼の住んでいた町と言ったら、今のドワーフがいるところだよ。
 というか、彼の子孫がドワーフだね。」

なんと、ナノスくんの前世はドワーフの始祖だった!
しかしドワーフと言えば、子供のように小さいのにひげがすごく長いような種族のはずだ。
いやドワーフと言っても、クリシから教わった亜人族の特徴に基づいて、
私が適当なファンタジー用語を当てはめただけだ。
なので、本当はそんなにドワーフっぽくないことは、全然あり得る。
ただ、普通の人だったエフォリアさんの子孫が、
チビでヒゲモジャな亜人族という扱いを受けていることは確かだ。

「そうなんですか!?
 記憶のエフォリアさんは普通の人に見えましたけど?」
「ドワーフだって普通の人だよ。
 閉鎖的な社会になってしまったから、少し独特な見た目なだけで。
 その戦争があってからだね。
 だから、今は余所者がドワーフの街に入ることは難しいよ。」
「そうなんですか」

困った。
しかし、それも仕方ない。
どんな事があったのかを、私は実際に見た。
余所者を受け入れなくなるのも当然だ。

「そんなにエフォリアさんの家に行きたいの?
 そこに何があるの?」
「彼はいつも身に付けていたバンダナに、自分の『雫』を込めていました。
 それを家の近くに隠したようです。」
「そんなものが見つかったなんて話は聞かないね。
 もしそれが本当なら、まだあるかもしれない。
 でも、そこまで見えたなら、彼がなんでそれを隠したのか、わかるでしょう?」

もちろん。
これはエフォリアさんを裏切る行為だと言われれば、その通りだ。
けど、これは何もできない私にできる、数少ない戦い方だ。

「私はただ守られているだけでは嫌なんです。
 私にできる戦い方があるなら、私はそれから逃げたくない。」
「貴女はもう十分戦っているよ。
 何も見えないのに、何も聞こえないのに、こうして会話をしている。
 こんなに積極的に、この世界と関わっている。
 十分だよ。
 殺し合いなんて、貴女には似合わない。」

なんだか心が軽くなった気がする。
この人は、そういうふうに私を見てくれるんだ。
私は無力であることに、負い目を感じなくてもいいのかもしれない。
だから、私の授かったこの【奇跡】を力とする必要はない。

いや、その通りなんだけど、それだけじゃない。
私には、あんな終わり方は納得できない。

「ありがとうございます。
 でも私はきっと、そんなに力を得ることにこだわっているわけではないんです。
 私はエフォリアさんの記憶を見てから、ずっとモヤモヤしているんです。
 エフォリアさんは自ら腹を切って死にました。
 最期は確かに笑っていました。
 でも、私の感覚では、それはすごく悲しいんです。
 なんだか自分の【奇跡】を忌むべき【呪い】と見なしているようで。
 自分の生き方を否定して終わった、バッドエンドに思えて。
 きっとエフォリアさんの【奇跡】は、ただ争いを引き起こすだけの恐ろしいものではないんです。
 使い方を間違えなければ、多くの人を救う祝福なんです。
 もし私にこの終わり方をやり直すチャンスが与えられているなら、
 私はハッピーエンドを目指したい。」

率直な言葉だ。
こんな事を言っても、何の意味も説得力もないかもしれない。
けれどなんとなく、この人には率直に話をしたいと思った。

テアティスさんの唇が震える。
何かを言いかけ、思い直すように。
何度も。

「子供みたいなことを言うのね。
 イリンイ家の人は、本当に面白い。」

やっぱり、子供じみた綺麗事と受け取られてしまったらしい。
きっと私は、理想を語るだけの無力な子供でしかないんだろう。

「でもね、実は私もずっと、そういうことを思っているの。
 私達、気が合うんだね。」

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