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静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~

あきや

33.プレイボーイ

ナノス君から離れる。
【奇跡】の力を道具に込める鍛冶屋の記憶だ。
おそらく、この世界で起こった出来事ではないか。
それに【癒やしの奇跡を担う者】という女性がいた。
クリシの話で、そういう人が最近盗賊団を壊滅させたとか、そんな話があった。
かなり最近の出来事かもしれない。

少年の手が私の指先を掴み、唇に押し当てる。
「本当にこれで終わるつもりか?
 もっと続きがあるだろ?」
「ないよ」
「攻めるのは男の役目ってか?
 仕方ねえな……」
ナノス君の手が私の両肩を強引に掴む!

なんと!
年下と思って甘く見ていた!

しかしそのまま、私の両肩を掴んでいた手が、静かに離れる。

え、何?
逆にドキドキしてくる。
焦らされている?
なんて高度な……
こういう技術、どこで覚えたの?

長い沈黙。
焦らすにしては、長すぎる気がする。
いや、私には焦らしの相場というものがわからないけど。
というか、何で私はおとなしく焦らされているのか。
このままではもしかすると、私はこの少年の姿をしたケダモノにセクハラされた上、
逆に私の方がセクシャルもパワーもハラスメントした悪役令嬢にされてしまうかもしれない。
反撃しなくては!

そんなことを考えていると、ナノス君の手が私の指先を取り、唇に触れさせた。
なんだか震えている。
「すまなかった。
 全て俺の勘違いだ。
 許してくれとは言わない。
 けど、母さんには手を出さないでくれ!」

放置されている間に、色々と話が変わっていたようだ。
そういえばここにはクリシがいた。
きっと脅迫に近い何かがあったんだろう。

それにしても、自己犠牲とは随分と嗜虐心しぎゃくしんを煽ってくれる。
望み通り、母さんの代わりに、『しつけ』てあげましょう……

みたいなことを言い出すと思われているかもしれないが、違うんだ少年よ!

「そんな大げさな。
 誰だって間違う時もあるよ。」

普通に許した。
実際何もされてないし。

クリシが私の手を取る。
「勝手ながら、悪い子がいたので少し教育を施しました。
 どうぞ、真面目な話をお願いします。」

なんか恐い。
早く話題を変えよう。

「ナノス君の前世だけど、【癒やしの奇跡を担う者】って女性が出てきた。
 もしかすると、これはつい最近の出来事なんじゃないかな?」
「たしかに、まだ僕の方からはエク様に話していませんでしたが、その方は女性です。
 それはこの世界の出来事かもしれませんね。
 ただ、最近の出来事とは限りません。
 彼女は数百年前から生きているという噂です。」

数百年!

「そんな人が剣の雨を降らせるとかって盗賊団を壊滅させたの!?
 とんでもないおばあちゃんだね!
 そうすると記憶の女性は全然若かったし、遥か昔の出来事かな。」
「見た目では判断できません。
 今の彼女の見た目は、僕たちより少し下くらいです。
 【癒やし】を使って、何かしているんでしょう。
 若作りですね。」

私達より下と言うと、10代前半くらい?
いわゆるエルフみたいのものだろうか。
エルフの里にいる子供が、実は何百歳みたいな。

「そうすると記憶の彼女のほうが歳上かな。
 実はナノス君の前世は未来の出来事だったり?」
「いや、本当に見た目は当てにならないんです。
 数十年前まで彼女は20代くらいの外見だったという噂もあります。」

混乱してきた。
とりあえず、見た目のことは忘れることにしよう。
ナノス君の前世は、この世界で数百年前に起こった出来事かもしれないし、
未来の出来事かもしれない。
そして噂によると【癒やし】の担い手は、とてもすごい人だということだ。

「それで、彼の前世は何か役に立ちそうでしたか?」
「ナノス君は前世で【奇跡】の力を道具に込める鍛冶屋だったよ。
 この世界の出来事だとしたら、きっと何かの役に立つと思う。」

そして、悲しい最期だった。
ナノス君も聞いている。
今はこれ以上詳しく話すべきではないだろう。

「【奇跡】が宿った道具ですか。
 たしかに稀にそういうった物が発掘されることがあるそうです。
 出自はよくわからないのですが、関係がありそうですね。」
「どうにかして確認できないかな?」
「【癒やし】に会ってみましょうか」
「そんな簡単に会えるの?」
「いえ、基本的にはどこにいるかわからない気まぐれな人です。
 しかし最近は近くの村にいるそうです。」

なんて都合がいい。
善は急げ。

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